著者
保崎 泰弘 芦田 耕三 濱田 全紀 藤井 誠 岩垣 尚史 高田 真吾 田吹 梢 光延 文裕
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.269-273, 2006 (Released:2010-04-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1

閉塞性動脈硬化症 (ASO)、糖尿病性末梢循環障害に合併する難治性下肢潰瘍、壊疽の治療、予防として人工炭酸泉浴は有用であると考えられている。今回、人工炭酸泉浴による足浴の末梢循環改善作用を定量的に明らかにする目的で健常成人6例 (年齢27~52歳、男性5例、女性1例) について検討した。右下肢腓骨外果より頭側10cmの背側にレーザードップラー血流計を固定し、さらに防水用のテープで覆った。42度の温水10lをバケツに入れ、バブ錠1個を投入し、対象患者の両足を膝下まで10分間浸水した。観察は、浴前、浴中、浴後5分、15分、25分、35分に行なった。次に、足浴の全身の末梢循環血流量に及ぼす影響を検討する目的で、右上肢手関節より頭側10cmにレーザードプラー血流計を固定し、足浴時と同時に上肢の末梢血流量を測定した。足浴前の血流量を100%とした時、足浴中10分では264±135 (%) (p<0.05)、足浴後5分では256±174、浴後15分では146±60、浴後25分では112±23、浴後35分では107±24と漸減し、足浴前値に低下した。上肢の血流量は、浴前の血流量を100%とした時に、浴中10分では119±49、浴後5分では120±66、浴後15分では113±28、浴後25分では109±16、浴後35分では95±14と漸減し、浴前値に低下した。人工炭酸泉浴を用いた足浴の末梢循環に及ぼす血流増加効果が数量的 (2.6倍) に認められた。しかし、その効果は浴後5分間は持続するものの15分後より低下する事が示された。簡易で効果的な人工炭酸泉浴を用いた足浴は、下肢の難治性潰瘍や壊疽の治療・予防に有効であることが示唆された。