著者
田宮 寛之
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2018-04-25

本年度は昨年度Six3-mVenusノックインES細胞を用いて開発したSCNオルガノイド分化誘導系を Per2::LuciferaseノックインES細胞 (Tamiya, Sci Rep 2016) へ応用した. Six3-mVenusとは大幅に分化誘導条件を変える必要があったが, 最終的に免疫染色でのSCN終分化マーカーなどの密集発現が観察されるSCNオルガノイドを誘導することができた. また, 発光イメージングで, 時計遺伝子の10周期分以上の減衰しない同期振動が観察できたため, 機能的SCNが誘導できたと考えられる (Tamiya et al., in preparation). また, 共同研究で広視野発光イメージングをおこなった結果, 免疫染色と発光測定のSCNらしい部位は一致していた. また, RNA Seqも行い,半数程度の細胞塊は, トランスクリプトームの観点からもSCNを含んでいることが明らかになった. 総じて, マウスES細胞から三次元SCN組織 (SCNオルガノイド) の試験管内誘導法の開発に成功した. 現在京都府立医科大学との共同研究で, SCN破壊マウスへの移植実験を施行している. 予備実験では第三脳室内に, 成熟SCN組織が生着していた. 現在行動リズムが徐々に観察されつつある. 自然回復の可能性や測定条件の問題があり, 成否の判断はもう少し慎重になる必要があるが, 行動回復が少しずつみえてきている可能性がある.