著者
久保田 好美 田尻 理恵
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1-2, pp.211-224, 2019-03-29 (Released:2019-04-12)
参考文献数
13

近年,研究のためのアーカイブ,あるいは教育・普及用の展示物としての保存を目的とし,長尺のサンプリングツール(アルミ型枠)を用いて柱状堆積物試料を板状に長く採取する試みがなされている.一方,海底堆積物や湖底堆積物の柱状試料(コア試料)を半永久的に保存する方法として樹脂包埋法がある.本論は,半割されたコア試料からアルミ型枠を用いて採取した長尺試料(ロングスラブ)の樹脂包埋法について報告する.統合深海掘削計画で採取された日本海の堆積物試料を用い,アセトンでの試料の脱水,さらにエポキシ樹脂の置換を行い,熱重合させ試料を硬化させた.今回用いた堆積物試料は,1 mm厚のアルミ型枠で容易に採取できるほどの柔らかさであったが,堆積物を構成する粒子が小さくよく締まっていた.その結果,樹脂は完全には浸透せず,内部は未固結のままであった.内部の不均一性が影響を与えうるような研究に活用するためにはさらなる手法の改善が必要であるが,展示用としては十分な品質であった.