著者
田尾 啓一 松村 勝弘
出版者
日本財務管理学会
雑誌
年報財務管理研究 (ISSN:09171738)
巻号頁・発行日
no.23, pp.1-18, 2012-03-31

多くの大手金融機関は,従来からBIS規制対応をベースとしたリスク・マネジメントを整備していたにもかかわらず,サブプライムローン問題からリーマン・ショックの過程で,経営危機を経験することとなった。こうした中で,タレブの『ブラック・スワン』をはじめとする一連の著書,論文は,従来のリスク認識に大きな変革をもたらすものとして注目されている。本稿はこうした考え方の背景にある従来の金融工学/経済理論の問題を整理し,その上に立脚する企業価値経営のフレームワークを考察したうえで,経済危機をもたらす周辺分布に対するリスク・マネジメントの視点から従来の企業価値経営とは一線を画すリスク・バッファーの重要性を述べる。