著者
田島 幸一郎
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.63, 2004 (Released:2004-07-29)

1.はじめに わが国では、1960年代以降、自動車が普及したことによりライフスタイルが大きく変化した。こうした状況の中で、急速な勢いで台頭してきたのが幹線道路沿いに見られる「ロードサイド型店舗」と呼ばれる店舗である。こうした現象は全国的レベルで進展しており、ロードサイド型店舗が集中している地区では新しい商業地を形成するまでに至っている。このような傾向は住民の重要な商業拠点としての役割を果たしてきた中心商店街の衰退をもたらした原因の一つとして考えられている。2.研究対象地域と目的本研究では対象地域として神奈川県厚木市を取り上げた。厚木市内では国道246号線沿線と、国道412号バイパス沿線の2か所でロードサイド型商業地の形成が著しい。国道246号線は1964年8月に開通し、東京都渋谷区と静岡県沼津市を結んでいる。また、東名高速道路と並走しており、厚木I.C.は東京大都市圏の外縁道路と結ばれていることから自動車通行量が多く、ロードサイド型店舗も早い時期から立地が確認されている。それに対し、国道412号バイパスは1992年3月に開通した新しい幹線道路でありながら、すでに沿道には集中的に店舗が立地している。そこで、本研究では2ヶ所のロードサイド型商業地を業種構成や利用客の実態から比較し、双方の特徴を明らかにすることを目的とする。3.結果 国道246号線沿線地域においては、店舗の立地が始まった1960年代後半では自動車販売業や自動車整備業、ガソリンスタンドなどの自動車関連業の割合が高かった。しかし、1970年代に入ると、飲食業が急激に増加しチェーン展開している店舗が立地した。以後、国道246号線沿線では飲食業の割合が常に1位となっている。また、道路の持つ性格上、利用客は広範囲に渡っていることも明らかになった。このことから、国道246号線沿線の商業地を「通過型」に分類した。 国道412号バイパスは、厚木市の郊外地区を縦貫し、津久井郡へ抜ける生活幹線道路であり、特に厚木市内には吾妻団地をはじめとした住宅地が広がっている。これらの要因から、ロードサイド型店舗の主な対象客は地域住民であることが明らかになった。この通りでは、飲食店よりも衣料品店や家電販売店、自動車関連店などの物販店の割合が高いことから、国道412号バイパス沿線のロードサイド型商業地はその性格を「居住地型」に分類することができる。 このように、厚木市の事例では、通過型と居住地型の2つのロードサイド型商業地が存在し、その業種構成や、成立過程にも違いがあることがわかった。 表1 ロードサイド型商業地のパターン 通過型 居住地型立地 都市と都市を結ぶ 市街地と郊外住宅地を結ぶ 主要幹線道路沿線 生活幹線道路沿線顧客・商圏 広範囲 地域住民主体業種構成 飲食店>物販店 物販店>飲食店厚木市の場合 国道246号線 国道412号線バイパス