著者
吉田 英生 幸地 克憲 田川 雅敏 松永 正訓
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

小児悪性腫瘍に対しても極めて積極的な治療が行なわれるようになり、その治療成績は向上してきている。しかし、進行神経芽腫に代表される予後不良癌の治癒率はいまだ低く、新たな治療法の導入が不可欠である。今回、われわれは遺伝子治療の有効性につき基礎的検討を行なった。1)免疫遺伝子治療の検討:レトロウイルスベクターLXSNにサイトカイン遺伝子を組み込み、マウス神経芽腫細胞C1300に感染させ遺伝子導入を行いサイトカイン産生C1300細胞を得た。IL-2,GM-CSF産生C1300腫瘍細胞の接種は腫瘍の生着・増殖を認めなかった。腫瘍の生着を拒絶したマウスに親株を接種しても増殖を認めなかった。肝転移モデルにおいてもIL-2,GM-CSF産生腫瘍細胞は転移を抑制した。さらにIL-2,GM-CSF産生腫瘍細胞は先行接種増殖した親株細胞の増殖を抑制した。以上、腫瘍原性の抑制、腫瘍免疫の誘導、癌治療効果を確認した。2)自殺遺伝子治療の検討:進行神経芽腫に高発現するMidkine遺伝子をプロモーターとし、HSV-TK(ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)とGCV(ガンシクロビール)の組み合わせによる自殺遺伝子治療の検討を行った。MidkineをプロモーターとすることによりMidkineを高発現しているヒト神経芽腫細胞に特異的にHSV-TKを発現させGCVに対する感受性を高めることが確認された。以上、神経芽腫に対する免疫遺伝子治療、ならびに自殺遺伝子治療の抗腫瘍効果が明らかとなり臨床応用へ向け有用な基礎的結果が得られた。