著者
矢部 清晃 松岡 亜記 武之内 史子 幸地 克憲
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.286-290, 2016-04-20 (Released:2016-04-20)
参考文献数
9

Prepubertal unilateral fibrous hyperplasia of the labium majus(以下PUFH)は思春期前の女児に生じる片側性の大陰唇の腫大を特徴とする.症例は8 歳女児.初診1 年前より自覚症状のない左大陰唇の腫大を認めた.左大陰唇の腫大は軟らかく,境界は不明瞭であった.MRI では左大陰唇の皮下にT1 強調・T2 強調で低信号の境界不明瞭な領域を認めた.造影CT では造影効果に乏しかった.間葉系腫瘍の増生を疑い切除術を施行した.切除標本の病理組織学所見でPUFH と判明した.術後2 年が経過するが再発はない.PUFH は新しい疾患概念であり国内外での報告数が少ない稀な疾患であるが,思春期前の女児の外陰部の腫大では鑑別を考慮する必要がある.
著者
吉田 英生 幸地 克憲 田川 雅敏 松永 正訓
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

小児悪性腫瘍に対しても極めて積極的な治療が行なわれるようになり、その治療成績は向上してきている。しかし、進行神経芽腫に代表される予後不良癌の治癒率はいまだ低く、新たな治療法の導入が不可欠である。今回、われわれは遺伝子治療の有効性につき基礎的検討を行なった。1)免疫遺伝子治療の検討:レトロウイルスベクターLXSNにサイトカイン遺伝子を組み込み、マウス神経芽腫細胞C1300に感染させ遺伝子導入を行いサイトカイン産生C1300細胞を得た。IL-2,GM-CSF産生C1300腫瘍細胞の接種は腫瘍の生着・増殖を認めなかった。腫瘍の生着を拒絶したマウスに親株を接種しても増殖を認めなかった。肝転移モデルにおいてもIL-2,GM-CSF産生腫瘍細胞は転移を抑制した。さらにIL-2,GM-CSF産生腫瘍細胞は先行接種増殖した親株細胞の増殖を抑制した。以上、腫瘍原性の抑制、腫瘍免疫の誘導、癌治療効果を確認した。2)自殺遺伝子治療の検討:進行神経芽腫に高発現するMidkine遺伝子をプロモーターとし、HSV-TK(ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)とGCV(ガンシクロビール)の組み合わせによる自殺遺伝子治療の検討を行った。MidkineをプロモーターとすることによりMidkineを高発現しているヒト神経芽腫細胞に特異的にHSV-TKを発現させGCVに対する感受性を高めることが確認された。以上、神経芽腫に対する免疫遺伝子治療、ならびに自殺遺伝子治療の抗腫瘍効果が明らかとなり臨床応用へ向け有用な基礎的結果が得られた。