著者
熊澤 大輔 田村 元樹 井手 一茂 中込 敦士 近藤 克則
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.22-128, (Released:2023-06-28)
参考文献数
33

目的 千葉県睦沢町では,2019年に「健康支援型」道の駅を拡張移転した。仮説として,道の駅を利用した高齢者では,利用しなかった高齢者に比べ,主観的健康感不良者が減少したと考えられる。そこで,道の駅利用が主観的健康感不良の減少と関連するのか検証することを目的とした。方法 2019年9月の道の駅拡張移転前後の3時点パネルデータを用いて道の駅開設後の利用群と非利用群を比較評価した縦断研究である。道の駅拡張移転前の2018年7月(2018年度調査)と2019年の拡張移転後の2020年11月(2020年度調査)と2022年1月(2021年度調査)の3回,自記式調査票の郵送調査を行い,個票レベルで結合した3時点パネルデータを作成した。目的変数は2021年度調査の主観的健康感不良,説明変数は2020年度調査時点の道の駅利用とした。調整変数は2018年度調査の基本属性と2018,2020年度の外出,社会参加,社会的ネットワークとした。多変量解析は多重代入法で欠損値を補完し,道の駅利用のみを投入したCrudeモデルと,2018年度調査の基本属性(モデル1),2018年度調査の外出,社会参加,社会的ネットワーク(モデル2),2020年度調査の外出,社会参加,社会的ネットワーク(モデル3)を投入した各モデルについて分析を行い,修正ポアソン回帰分析を用い,累積発生率比(Cumulative Incidence Rate Ratio, CIRR),95%信頼区間,P値を算出した。結果 対象者576人のうち,道の駅利用者は344人(59.8%)であった。基本属性を調整した多変量解析の結果,道の駅非利用群に対して利用群では,主観的健康感不良者のCIRR : 0.67(95%信頼区間 : 0.45-0.99,P=0.043)であり,有意に少なかったが,道の駅開設後の2020年度調査の外出,社会参加,社会的ネットワークを調整したモデルではCIRR : 0.71(95%信頼区間 : 0.48-1.06,P=0.096)と点推定値が1に近づいた。結論 本研究では,3時点パネルデータにより,道の駅拡張移転前の交絡因子を調整した上で,利用群で主観的健康感不良者が減少,つまり不良から改善していた。外出のきっかけとなり,人と出会う機会となる道の駅などの商業施設が「自然に健康になれる環境」になりうることが明らかとなった。
著者
田村 元樹 服部 真治 辻 大士 近藤 克則 花里 真道 坂巻 弘之
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.21-014, (Released:2021-10-22)
参考文献数
38

目的 本研究は,うつ発症リスク予防に効果が期待される65歳以上の高齢者のボランティアグループ参加頻度の最適な閾値を傾向スコアマッチング法を用いて明らかにすることを目的とした。方法 日本老年学的評価研究(JAGES)が24市町村に在住する要介護認定を受けていない65歳以上を対象に実施した,2013年と2016年の2時点の縦断データを用いた。また,2013年にうつ(Geriatric Depression Scale(GDS-15)で5点以上)でない人を3年間追跡し2013年のボランティアグループに年1回以上,月1回以上もしくは週1回以上の参加頻度別に,2016年に新たなうつ発症のオッズ比(OR)を,傾向スコアマッチング法とt検定などを用いて求めた。結果 参加群は,年1回以上で9,722人(25.0%),月1回以上で6,026人(15.5%),週1回以上で2,735人(7.0%)であった。3年間のうつの新規発症は4,043人(10.5%)であった。傾向スコアを用いたマッチングでボランティアグループ参加群と非参加群の属性のバランスを取って比較した結果,月1回以上の頻度では参加群は非参加群に比べて,Odds比[OR]0.82(95%信頼区間:0.72, 0.93)と,うつ発症リスクは有意に低かった。年1回以上の参加群ではORが0.92(0.83, 1.02),および週1回以上では0.82(0.68, 1.00)であった。結論 高齢者のボランティアグループ参加は,月1回以上の頻度で3年後のうつ発症リスクを抑制する効果があることが示唆された。高齢者が月1回でもボランティアとして関わることができる機会や場所を地域に増やすことが,うつ発症予防対策となる可能性が示唆された。
著者
田村 元樹 服部 真治 辻 大士 近藤 克則 花里 真道 坂巻 弘之
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.899-913, 2021-12-15 (Released:2021-12-24)
参考文献数
38

目的 本研究は,うつ発症リスク予防に効果が期待される65歳以上の高齢者のボランティアグループ参加頻度の最適な閾値を傾向スコアマッチング法を用いて明らかにすることを目的とした。方法 日本老年学的評価研究(JAGES)が24市町村に在住する要介護認定を受けていない65歳以上を対象に実施した,2013年と2016年の2時点の縦断データを用いた。また,2013年にうつ(Geriatric Depression Scale(GDS-15)で5点以上)でない人を3年間追跡し2013年のボランティアグループに年1回以上,月1回以上もしくは週1回以上の参加頻度別に,2016年に新たなうつ発症のオッズ比(OR)を,傾向スコアマッチング法とt検定などを用いて求めた。結果 参加群は,年1回以上で9,722人(25.0%),月1回以上で6,026人(15.5%),週1回以上で2,735人(7.0%)であった。3年間のうつの新規発症は4,043人(10.5%)であった。傾向スコアを用いたマッチングでボランティアグループ参加群と非参加群の属性のバランスを取って比較した結果,月1回以上の頻度では参加群は非参加群に比べて,Odds比[OR]0.82(95%信頼区間:0.72, 0.93)と,うつ発症リスクは有意に低かった。年1回以上の参加群ではORが0.92(0.83, 1.02),および週1回以上では0.82(0.68, 1.00)であった。結論 高齢者のボランティアグループ参加は,月1回以上の頻度で3年後のうつ発症リスクを抑制する効果があることが示唆された。高齢者が月1回でもボランティアとして関わることができる機会や場所を地域に増やすことが,うつ発症予防対策となる可能性が示唆された。