著者
倉田 毅 田村 慎一 小島 朝人 岩崎 琢也 佐多 徹太郎 山西 弘一
出版者
国立予防衛生研究所
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1989

HIV感染後、エイズ発症に至るまでの体内での動態についてはよくわかってはいない。in vitroでみると、HIVと突発性発疹の病原体であるヒトヘルペスウイルス6(HHV6)は、CD4陽性Tリンパ球を標的とする。エイズ発症初期の全身リンパ節の系統的腫脹(PGL)の特徴は異常なリンパ濾胞の過形成と樹状突起細胞の腫大であり、B細胞の増生である。悪性リンパ腫として疑われて生検されたPGL初期のリンパ節で抗原の分布を免疫蛍光法、ABC法でみると、HIVは主として胚中心を中心として濾胞内に大量に存在するのに対し、HHV6は濾胞周辺領域に大量に検出された。両ウイルスは、23例でみるとエイズの症状の進行と共に、萎縮期の全身リンパ節における検出率が減少した。HIV抗原は樹状突起細胞を中心にその周辺に網状に、HHV6抗原はマクロファ-ジおよびリンパ球にみられ、両者の分布域と細胞は明らかに異なっている。今回の事実から、HHV6は、HIVがリンパ節内において活性化されると共に、異なった領域で活性化され相互に作用しながらCD4陽性細胞を破壊するものと推定される。他のウイルスが日和見感染としてエイズの後期において活性化されるのに対し、この2つのウイルスはPGL期において重要な役割を担っていることが明らかになった。AC患者の末血20名をみると、両抗原が検出されることはないが4ー7日の培養で、6名でHIV、7名でHHV6が検出されてきた。この時期においては両ウイルスは活性化されているとはいえず、ACからPGLへの進展の要因が何であり、それがどのようにHIVとHHV6動かすかについての検討が次の課題である。