著者
倉田 毅 高阪 精夫 小島 朝人 佐多 徹太郎 山西 弘一 岩崎 琢也
出版者
国立予防衛生研究所
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

1989年にフィリピンから米国へ輸入された非人類霊長類(NHP-Non Human Primates)(カニクイザル)が、検疫中に大量に死亡した。解剖材料よりエボラウイルスに電顕上形態的に酷似し、抗原性が高度に交差するフィロウイルスが分離された。このウイルスは、ヒトに感染性はあるが、現在まで、ヒトに疾患を起こしてはいない。またNHPに全く触れたことのないヒトでも、約2.4%に交差反応があることがわかっている。次の結果を得た。【.encircled1.】1992年9月ザイールにゴリラ見物に出掛け、サル(種不明)と接触し、帰国した45歳の男性が高熱を発し、頭痛、下痢、脱水症状で死亡した。血清抗体検査でエボラウイルス(ザイール株)抗原に対し、IFで1:10の弱い価がみられた。因みに同行者、他の正常人3名では全く上昇はなかった。エボラウイルス感染の疑で、米国防疫センターへ血清等を送付したが、最終的にエボラウイルス感染性と結論された。この例は明らかに交差反応によるものと考えられた。解剖材料からウイルス抗原、ウイルス粒子は検出されなかった。【.encircled2.】インドネシア産の抗体強陽性で長年経過したカニクイザルの各種臓器で、エボラウイルス関連抗原の検出を試み、潜伏持続感染の可能性を検討中である。【.encircled3.】輸入カニクイザルを取扱っているヒトの11名中に1名、抗体陽性がみられてはいるが、病気は起こしてはいない。
著者
宮村 達男 宮村 逹男 (1990) 原田 志津子 竹内 健司 田中 幸江 湯浅 田鶴子 斎藤 泉 KUO George HOUGHTON Mike RUTTER William J.
出版者
国立予防衛生研究所
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1988

非A非B型肝炎の起因因子はそれまでの種々の状況証拠からウイルスであることが想定されていたが、通常のウイルス分離方法や、抗原抗体検出系に基づく方法でその因子を同定することができなかった。共同研究が開始された1982年から、感染したチンパンジ-の肝組織または、血漿からRNAを抽出し、そのcDNAをライブラリ-化して、非A非B型肝炎ウイルス遺伝子の断片を得ることを試みた。1988年に、カイロンのグル-プが、λ gtllを用いたイムノスクリ-ニングによりその発現産物が非A非B型肝炎患者の血清と特異的に反応するcDNA断片を得ることに成功した(Choo et al.Science 244,359ー362;文献1)。日本で全く独立にそれまでに収集、解析されていた輸血後非A非B肝炎の患者の血清中に病型に対応してこの抗体の産生が認められた。更にこの患者に実際に輸血された血液の供血者にもこの抗体が検出された(文献2及び4)。この抗体は日本の非B型の肝がん患者の実に60〜70%にも検出される(文献3)。カイロングル-プはgene walkingによりこのcDNAが長さ約9.5キロベ-スの一本鎖RNAをそのゲノムとしてもつ全く新しいRNAウイルスであることをつきとめ、これをC型肝炎ウイルス(HCV)と名付けた(Choo et al.1989,Science 244,359ー362;Choo et al.1991,Proc.Natl.Acad.Sci.in press)。一方予研側は、このカイロンとの共同研究から塩基配列の情報を得て、日本人の供血者からHCVのcDNA断片を直接PCR法によって増幅、クロ-ン化した(文献6、7、9、12)。つまり日本とアメリカとで、各々ヒトと実験的に感染させたチンパンジ-の血液からHCVcDNAを得ることができた。この2つのHCVのcDNAの塩基配列とアミノ酸の配列を比較、更に類似していることが以前から提唱されているフラビウイルスのそれと比較した。フラビウイルスとの類似性もさることながら、ウシ下痢症ウイルスなどペスティウイルスとの一部の相同性もみつかり、これら3種のウイルスが互いに類似しながら全く別のウイルスであることが明らかとなった。この間、カイロングル-プは、HCVの非構造遺伝子NS4の領域を酵母で発現させ、その発現産物を利用した特異抗体検出ELISAを作出した。この検査法の有用性を世界で最初に示したのがこの協同研究による日本での患者及び、供血者での血液検査であった。その結果1989年の11月、日本が世界に先駆けて、このHCV抗体アッセイを輸血のスクリ-ニングに用いることとなった。このHCV抗体アッセイ系はその後世界中で輸血用血液のスクリ-ニングに用いられるようになっているが、C型肝炎の診断には必ずしも適さない点があった。我々の初期の検討により抗体が陽転するまでに数カ月を要することが示されていたからである。日本でのクロ-ン化されたHCVの遺伝子構造を詳細に調べた。まず、ウイルスの構造蛋白をコ-ドする構造遺伝子をサルCOS細胞でSRαプロモ-タ-の統御下で組換え、更にバキュロウイルスを用いて昆虫細胞でヌクレオキャプシド(コア)蛋白を発現させることに成功した(文献14、15、16)。これらの蛋白に対する抗体が患者血清中に特異的に検出されることにより同定することができた。これにより遺伝子の機能を同定されたのみならず、この蛋白を用いたELISAが、C型肝炎の早期診断やより感度の高い輸血血液のスクリ-ニングにも応用可能であることが示された。現在世界各国の協同研究者とその有用性を検討している。このコア蛋白にひきつづきエンベロ-プ蛋白の発現実験にも成功した(論文準備中、Matsuura et al)。分子量約35キロダルトンの糖蛋白である。この蛋白及びその下流にあるNS1の領域の発現産物を用いて今後、ワクチンやγーグロブリン製剤の実用化を検討してゆきたい。
著者
斎藤 泉 千葉 丈 松浦 善治 宮村 達男
出版者
国立予防衛生研究所
雑誌
がん特別研究
巻号頁・発行日
1990

日本の慢性肝炎(120万人)の半数以上、最近の肝細胞癌全体(1万8千人/年)の半数近くがC型肝炎ウイルス(HCV)によるものと考えられている。クロ-ン化したウイルスcDNAを用いてHCV遺伝子産物の発現系・検出系を開発し、肝炎・肝癌組織中で発現するHCV遺伝子産物を検討することにより、このウイルスによる肝炎・肝癌発症機構解明の基礎を確立するのが本研究の目的である。1.HCVの構造領域cDNAを組み込んだバキュロウイルス発現ベクタ-やプラズミドベクタ-をサル由来細胞株に導入することによりHCVの構造蛋白を発現させた結果、HCVのコア蛋白とエンベロ-プ蛋白の発現と同定に成功した。コア蛋白は糖鎖のつかない22kdの蛋白で、p22と命名し、エンベロ-プ蛋白は糖鎖を持つ35kdの蛋白でgp35と命名した。また粗精製したp22蛋白を用いてHCVのコア蛋白に対する抗体(コア抗体)を検出する実用的なELISAを作製した。2.組換えバキュロウイルスにより産生されたコア蛋白などを抗原として、構造蛋白の検出に用いられるモノクロ-ン抗体を作製した。3.非B型肝癌の8例において、癌部と非癌部からRNAを抽出し、PCR法によりHCVRNAを検出した結果、少なくとも一部の非B型肝癌組織からHCVRNAが検出されることが分かった。本研究によりHCV構造蛋白の特異抗体作製への道が開かれ、患者組織におけるウイルス抗原の検出への基礎が開けたといえよう。一部の肝癌組織からHCVRNAが検出されることは、持続感染状態にあるHCVが細胞の癌化に何等かの役割を果たしている可能性を示唆するが、その証明には今後の定量的検討が必要であろう。
著者
鈴木 和男 大川原 明子 佐々木 次雄 山河 芳夫
出版者
国立予防衛生研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、半月体形成腎炎(CRGN)などの自己免疫疾患において、最近、正常時はほとんど血中に認められない好中球の顆粒酵素のMPOが自己抗原となり抗MPO自己抗体(ANCA)が血中に増加することが問題となっている。これらの疾患において、血中MPO活性と抗MPO抗体との相関関係についてわれわれはすでに報告してしてきている。特に、病初期の血中MPO活性は高値を示し、急性炎症像に類似している。自己免疫疾患の発症機序を明らかにするために、自己抗原となるMPOの蛋白質、活性とその抗MPO自己抗体の3者の測定系を確率する必要があった。昨年度までに、ウエスタンブロットにより半月体形成腎炎の患者血清は、MPOの59 kDaの長鎖と反応し、Endoglycosidase-Hで糖を切断したところ抗MPO血清は強く反応したことから、抗MPO血清はMPOの59 kDaの長鎖の糖結合箇所付近が反応部位と推定した。そこで、本年度は、59kDaの長鎖をいくつかの部分のフラグメントに対応するリコンビナントMPOフラグメントを作成した。当初は、GSTとの融合蛋白質として作成したが、目的のサイズより小さく切断されたフラグメントのみが出来たので、Hisx6と結合したフラグメントとして作成することを試み、目的とするすサイズのリコンビナントMPOフラグメントを検出する。キレートカラムによりリコンビナントMPOフラグメントを精製し、抗ヒトMPO抗体および患者血清を用いウエスタンブロットにより反応することを確認した。
著者
加藤 茂孝 吉川 泰弘 海野 幸子
出版者
国立予防衛生研究所
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

風疹ウイルスは先天性風疹症候群(CRS)を引き起こす原因ウイルスであるが、この風疹ウイルスの病原性と流行様式との解析を目的として、我が国を含むアジア地域における分離ウイルス株の遺伝子RNAの塩基配列を比較し、分子疫学的研究を行った。RNAの中のE1翻訳領域1443塩基を含む1484塩基を主な対象として、塩基配列を決定した。使用したウイルス株は15株あり、日本12株(1960年代5株、1990年前後7株)、香港2株(1980年代)、中国1株(1980年)である。分析の結果(1)1960年代の日本においては、少なくとも3グループのウイルス株が同時に平行して流行していたと思われた。3グループは、それぞれ西日本、中日本、東日本の3地域に対応していた。(2)1990年頃の日本においては、1960年代とは異なったグループの株が全国的に1グループで流行していた。(3)中国大陸の株は、日本の株とは別のグループに属すると思われる。その中では、中国株と香港の1株との間に強い近縁関係が見られた。(4)弱毒化した日本のワクチン3株においてその原株との比較ができたが、弱毒化に共通した変異は、見られなかった。弱毒化に関与する部位が株毎に異なるのか、または、E1以外の他の領域が関与しているのか、の何れかであると思われた。(5)CRS患者からの分離株においては、同じグループに属していても変異数が多いという傾向があり、持続感染による影響があった可能性が考えられた。
著者
加藤 茂孝 棚林 清 鈴森 薫 川名 尚 竹内 薫
出版者
国立予防衛生研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

1.風疹ウイルスゲノムの増幅検出風疹ウイルスゲノムの増幅検出については、最終的に、(1)ウイルスRNAをグアニジン・フェノ-ル・クロロフォルムで抽出する。(2)RNAの逆転写後の相補的DNAのPCRによる増幅は2段階で行う(mested PCR)、(3)増幅DNAの検出は、アガロ-スゲル電気泳動後のDNA断片のエチジウムブロマイド染色による、事とした。2.妊娠中の風疹遺伝子診断妊娠中に発疹が出現し、風疹IgM抗体が検出された10症例について、抗体上昇以前の母血清6例、胎盤絨毛10例、治療中絶された胎児の組織5例について、ウイルス遺伝子の検出を試みた。陽性例は、血清2例、絨毛9例、胎児5例であった。胎児陽性例は全て絨毛陽性であったので、絨毛での陽性結果は、即、胎児陽性と診断して差しつかえないものと考えられた。3.風疹感染胎児におけるウイルス増殖部位臓器別に遺伝子検出を行なった胎児の症例について、ウイルス遺伝子陽性は、胎盤、腎、肝、脳、〓帯の各臓器であり、胎児感染は全身感染であると思われた。陰性の臓器は、脾、心、肺、眼、胸腺であった。この時、胎児血の風疹IgM抗体は陽性であったので、〓帯血IgM抗体陽性とウイルス遺伝子陽性、即ち、胎児でのウイルス増殖とが相関していることが確認された。4.先天性風疹症候群患児からのウイルス遺伝子の検出出生した患児の髄液、リンパ球、血清、咽頭ぬぐい液、尿、白内障手術の為摘出したレンズからも遺伝子が検出され、胎内持続感染であると思われた。