著者
田村 智英子
出版者
一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
家族性腫瘍 (ISSN:13461052)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.7-12, 2008 (Released:2018-12-05)
参考文献数
5

日本家族性腫瘍学会において,学会誌でのケース報告の取扱いルール作り検討の際の参考情報とするため,海外学術誌における症例報告のルールの状況について調査した.欧米の学術誌の多くは,症例報告その他の論文を発表する際に,個人を識別できる可能性のある情報を不必要に記載しないことを謳いつつ,完全な匿名性の担保が難しい状況に鑑み,個人を識別できる可能性のある情報を論文内に記載する場合には,当事者からの文書同意を求めており,一部の学術誌では編集部への同意書提出も義務付けていた.さらに,論文発表に関して当事者から同意を取得する際には,情報を発表することに関する同意のみならず,学術誌の発行部数やインターネット上からの閲覧にも言及して説明し,そうした状況への理解を得た上で同意を得るべきとしていた.一方,個人識別情報の範囲や,家系員のうち同意を取得すべき人は誰か,匿名化のために情報を改変したり一部隠したりすることの是非については,統一見解は得られていない状況も判明した.判断が難しい場合の相談窓口や判断の手続きや基準の整備も課題である.