著者
田浦 康二朗
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

近年抗酸化活性剤として知られる水素水の肝線維化抑制効果を調べるために、C57BL/6マウスに水素水を飲用させながら、四塩化炭素、チオアセトアミド、胆管結紮により肝臓の線維化を誘導し、コントロール飲水群との比較を行った。その結果、四塩化炭素モデルとチオアセトアミドモデルでは水素水の飲用により肝線維化抑制効果が示されたが、胆管結紮モデルにおいてはその効果は見られなかった。次にそのメカニズムを調べるために、肝細胞および星細胞をマウスから分離し水素含有培地で培養することにより、活性酸素による肝細胞傷害、星細胞の活性化への影響について検討を行った。1μg/mLのアンチマイシンAを分離した肝細胞に投与することにより、肝細胞にヒドロキシルラジカルの発生を確認した。それらのヒドロキシルラジカルは水素含有培地において有意に発生が抑制され、肝細胞死の軽減も観察された。星細胞については水素含有培地においても明らかな活性抑制効果は観察されなかった。水素水は肝細胞でのヒドロキシルラジカルを抑制することで肝細胞死を軽減し、肝線維化抑制効果を呈することが示された。