著者
Esben Petersen 田渕 宗孝 長谷川 紀子
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.81-90, 2020 (Released:2021-07-01)

欧州福祉国家研究の近年の文献では、教会とプロテスタンティズムは、近代的福祉国家の歴史的発展における二つの中心的変数とされている。つまり、近代的福祉国家の思想とキリスト教徒の間には関連性がある、とされるのである。本稿では、福祉国家モデルの発展における教会の重要性を議論の対象とし、そうした主張のアプローチをより詳細に考察する。本稿では、先行研究のアプローチを概観し、福祉国家の起源と発展、およびそれらが説明変数として宗教をいかに利用してきたかを分析する。これにより、多様な福祉国家レジームの発展を理解するうえで宗教に大きな役割を認めようとする近年の試みにつき、対象化の道を開く。また本稿は、諸アプローチに対する批判的議論に焦点を絞る。つまり、福祉国家、教会、宗教の間に関連があるとする主張に対し、それを支持する実証的な根拠はあるのだろうか、という議論である。
著者
田渕 宗孝
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.37-45, 2018

N.F.S. グロントヴィを「政治」から捉えなおす研究が近年増加している。しかしその検討にあって、グロントヴィのフォルクおよびナショナリズムはどのように捉えられているのだろうか。フランス革命を批判するグロントヴィは、「学問性」を取り戻すことを主張し、そのためにも宗教の「直観」や「感情」「声」に依拠した啓蒙を薦めようとした。そしてそれは母語や神話等に依拠するナショナリズムによって裏打ちされるものである。「人々の声」や「自由」というグロントヴィの基本概念が、政治という観点からの考察で言及される場合、それは安易にも彼を民族主義から「サルベージ」してしまうことにはならないのだろうか。グロントヴィの「直感」や「声」からfolkelighed という彼のキーワードへの流れにみられるのは、宗教と民族主義の融合したものでもある。
著者
田渕 宗孝
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.37-45, 2018 (Released:2019-07-01)

N.F.S. グロントヴィを「政治」から捉えなおす研究が近年増加している。しかしその検討にあって、グロントヴィのフォルクおよびナショナリズムはどのように捉えられているのだろうか。フランス革命を批判するグロントヴィは、「学問性」を取り戻すことを主張し、そのためにも宗教の「直観」や「感情」「声」に依拠した啓蒙を薦めようとした。そしてそれは母語や神話等に依拠するナショナリズムによって裏打ちされるものである。「人々の声」や「自由」というグロントヴィの基本概念が、政治という観点からの考察で言及される場合、それは安易にも彼を民族主義から「サルベージ」してしまうことにはならないのだろうか。グロントヴィの「直感」や「声」からfolkelighed という彼のキーワードへの流れにみられるのは、宗教と民族主義の融合したものでもある。
著者
田渕 宗孝
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-11, 2011 (Released:2018-10-01)

グロントヴィ主義は北欧諸国に19世紀に広がり、各国は各自の社会背景の中からグロントヴィ主義およびフォルケホイスコーレを展開していった。 本論ではノルウェーを対象とし、教会とグロントヴィ主義の関係に焦点を当て、デンマー クの事例との差異を示す。その手掛かりに、教会形態とナショナリズムの関係に注目したトルキルセンの理論に言及する。トルキルセンの手法は、グロントヴィ主義を単なる特殊事例ではなく、北欧での近代化の多様性を浮き彫りにする一要因として位置付けることを可能にする。ノルウェーでグロントヴィ主義が受容され始めたのは1840年代中ごろ以降であるが、国家教会からの圧力でグロントヴィ主義者は教会に居所を見つけられず、フォルケホイスコーレも地元の信仰心の強い住民たちとの衝突を経ねばならなかった。だがそこで政治は対立に対処するための重要な手法となった。それはデンマークではあまり見られない特徴である。