著者
田渕 有美
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2021-08-30

本研究は、米国ケネディ政権における「平和のための宇宙(Space for Peace)」政策の展開を、従来看過されてきた科学者の役割に着目して解明するものである。先行研究では、冷戦期米国の平和目的の宇宙政策は米ソの戦略的考慮を覆い隠すレトリックや東西プロパガンダの副産物と見なされてきた。これに対して本研究は、1960年台前半のケネディ政権における宇宙政策決定過程を詳細に辿り、大統領科学諮問委員会(PSAC)が「兵器の存在しない、全人類にとって開かれた」宇宙を維持するという、今日に至る米国の「平和のための宇宙」政策の既定路線化を決定づけるうえで重要な役割を果たしたことを示す。