著者
松代 平治 田知本 正夫 福富 雅夫
出版者
石川県公立大学法人 石川県立大学
雑誌
石川県農業短期大学農業資源研究所報告 (ISSN:09153268)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.22-31, 1989 (Released:2018-04-02)

石川県の水田転換畑の主要作物であるダイズの共生窒素固定活性を,加賀地方の主要な三つの土壌型について比較した.窒素固定量の評価には二組の根粒着生,非着生の等質遺伝系統(A62-1,A62-2;T201,T202)を用い,根粒着生系統との比較に奨励品種"エンレイ"も供試した.またその活性に影響する要因を明らかにするために,各土壌のダイズ根粒菌群の共生窒素固定活性を,土壌の理化学性の影響を除いた条件で調べた.更に各土壌から分離した純粋培養のダイズ根粒菌の窒素固定力も測定した.その結果,ダイズの共生窒素固定活性の土壌間の順位は,等質遺伝系統と"エンレイ"とでは異なった.なお"エンレイ"の場合,その順位は灰色低地土>黒ボク±≧黄色土となり,しかも窒素固定量は等質遺伝系統よりもかなり多かった.これらの結果から,等質遺伝系統の選定には"エンレイ"と生育期間,草型の同じ系統を選ぶ必要があることがわかった.次に土壌のダイズ根粒菌群の共生窒素固定活性は,灰色低地土と黒ボク土の間ではほとんど差がなく,黄色土の活性だけが劣った.しかしこれら三つの土壌から分離した大部分のダイズ根粒菌の窒素固定力には差がなく,黄色土から分離された1菌株だけが特異的に窒素固定力が高かった.以上の結果から,供試土壌でのダイズの共生窒素固定活性に対しては,土壌条件の影響のほうが根粒菌本来の窒素固定活性の影響よりも強く,その土壌条件の中で生物的要因についても調べる必要のあることが明らかになった.