著者
高橋 佳史 大森 浩志 小池 誠 佐藤 仁俊 北角 泰人 田窪 健二
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.72, no.12, pp.3089-3093, 2011 (Released:2012-07-24)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

症例は68歳,女性.8年前に悪性リンパ腫と診断され,化学療法と末梢血幹細胞移植施行後に再発したが,長期間のプレドニゾロン内服による治療で寛解状態にあった.2週間前からの食欲不振を主訴に当院を受診.腹部CTで小骨盤内の直腸周囲に腸管外ガスを認め,直腸穿孔の診断で緊急手術施行した.穿孔の原因は病理検査によってサイトメガロウイルス(CMV)腸炎と確定診断した.すでにガンシクロビル内服中であったため,同薬を増量したが,CMVアンチゲネミアの陰性化は得られなかった.2カ月後に症状が再燃したが,全身状態が不良であったため保存的治療を行い,手術加療は回避できた.以後の治療は再燃を防止するため,ガンシクロビル内服維持療法とし,在宅療養へ移行した.免疫抑制患者の消化管穿孔では同疾患を積極的に疑い,早期の抗ウイルス剤投与が望まれる.