- 著者
-
田辺 大
- 出版者
- 日本NPO学会
- 雑誌
- ノンプロフィット・レビュー (ISSN:13464116)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, no.1+2, pp.71-80, 2022 (Released:2022-04-01)
- 参考文献数
- 35
本論文は,entrepreneurshipの日本語訳,さらにはsocial entrepreneurshipの日本語訳が日本では長年未整理のまま推移し,伴って,日本の起業文化にも影響が及んでいる課題を紹介している.本研究はsocial entrepreneurshipや関連する概念の日本語訳の検討を通じて整理を行い,ひいては日本の起業文化の進化への貢献を目的とする.研究方法の妥当性では,日本語訳の検証の確度を高めるため,対照言語学の視点を用いる.対照言語学は逆翻訳という手法を提供しており,日本語訳が正しかったのかを英語等に訳し直すことで,いわば翻訳の検算が可能になる.entrepreneurshipが「起業家精神」と日本語訳された課題として,起業は一連の過程(process)や仕組みでなく,「起業家は自己責任で孤独にがんばれ」と一個人の精神論に,つい誤解される向きが昭和以来の日本社会では支配的になってしまった.entrepreneurshipを「起業家性」,social entrepreneurshipを「社会起業家性」という日本語訳にする事を,その手法とともに本論文は提案し,日本の起業文化が精神論から脱却する貢献を目指している.