著者
野村 安治 田辺 邦美
出版者
九州大学
雑誌
九州大學農學部學藝雜誌 (ISSN:03686264)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-30, 1973

Many studies on precipitation have been hitherto made in order to contribute the rationalization of irrigation planning. However, the data, such as the return period of drought days, are necessary one of the basic information for such planning. From this point of view, this paper deals with regional characteristics of drought days, maximum drought days and monthly precipitation during summer season (June to Aug.) in Kyushu in order to obtain useful information for irrigation planning. The outlines of the results obtained are as follows: (1) By analyzing the frequency distribution of drought days during summer season at fifty-six places in Kyushu, it was found that the distribution curve is normalized if the variable transformed into square or cubic root. (2) The coefficient of probable drought days curve (Table 3) and the return period (1/10-100 year) of drought days (Table 4) are obtained. (3) For practical use, geographical distribution maps are drawn for thirteen kinds of return period (Fig. 8-1~13). (4) The return period of maximum drought days and monthly precipitation, at eight places, are shown in (Table 8) and (Table 10). (5) It was suggested from the above results that it keeps on drying for a long term in the northern part of Kyushu to be subjected to the damage from a disastrous drought. Therefore, much care should be taken on determination of the irrigation water supply.本編では,用水量の確保という意味において水田の用水消費に関連して連続干天日数につき検討を行なつた.九州地方は,台風,梅雨などによる豪雨とともに,夏期の干ばつの危険度もかなり高い.利水計画のように低水流量に関係する計画,かんがいの必要度判定などには,降水量とともに問題としている地域にどれ位の期間引続いて雨が降らないことがあるかというような確率連続干天日数とか,そのreturn periodが必要となる.このような観点より連続干天日数,最大連続干天日数,降水量について解析を試みた.その結果の概要を示すと, /I.連続干天日数/ (1) まず日本における干ばつ概要ならびに九州地方の干ばつの時期について述べた.季節風の強い冬期は表日本と裏日本の地域差が明らかであるが,夏期には地域差はあまり顕著でない.連続干天日数の最も長い地域は,瀬戸内海沿岸を中心とした中国,四国および九州の瀬戸内海沿岸でこれに次いで関東沿岸部から東海地方へのびる地域である.九州地方の干ばつの時期は,過去の干ばつ記録よりすると主として6月から8月である. (2) 九州地方の56地点について1936年~1960年の25年間の夏期6月~8月の連続干天日数の度数分布を調べ,逆J字型に近い著しい非対称分布をすることがわかつた.これらの非対称性を除く方法として確率紙法により,正規,対数,平方根,立方根,4乗根,5乗根の変数変換を行ない,大多数の地点は平方根,立方根変換により正規化されることがわかつた. (3) 一方,連続干天日数(D)と累積度数(n)との関係をD=an^-bの双曲線の結合と仮定し,各地の連続干天日数を同一方法にて解析を行ない,その係数a,bを算出して夏期連続干天日数の曲線式を求め,その曲線の係数表およびreturn period表を作成した.また実用に便利なように13種の確率連続干天日数分布図を作成し,利水計画に利用できるようにした.これらによれば,一般に九州北部では連続干天日数が長く,南九州では少なく,また沿岸地方では日数が長く,山間部で少なくなつている.瀬戸内海沿岸および九州北西部で長期の連続干天日数が続いている. /II.最大連続干天日数/ 下関,福岡,佐賀,長崎,熊本,大分,宮崎,鹿児島の8地点について1891年~1957年の69年間の夏期6月~8月の最大連続干天日数について検討を行なつた. (1) 度数分布は,連続干天日数と同じく逆J字型に近い非対称分布をなす.確率紙法による変数変換の結果から,8地点とも対数変換により正規化されることがわかつた.また,Jenkinson法によりreturn periodを算出した.これらの結果,下関,大分,福岡では連続干天日数が長く,平均値も大きい.一方,南九州は短かい.また長崎,鹿児島,佐賀は上限のあるIII型曲線を示すことがわかつた. (2) 最大連続干天日数の周期解析の結果によれば,特に19年周期が卓越しており,地域性は見られなかつた. /III.降水量/ 最大連続干天日数と同じく8地点について検討を行ない,6月,7月,8月および6~8月降水量を対象とした. (1) 上記降水量についてJenkinson法によりreturn periodを算出し,月別,地域別変化を調べた.確率降水量は,連続干天日数とは逆に南九州が大きく,ついで中部九州,福岡,下関,大分の順となつている.平均値,標準偏差についても同様のことがいえる.これらの結果より北部九州は,干ばつにかかる危険度が大きいことがわかる. (2) 曲線型については,6月は宮崎,鹿児島を除けば下限をもつI型曲線を示し,6~8月では8地点ともIII型曲線である.