著者
住吉 智子 佐野 富子 田邊 義浩 野田 忠
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.680-688, 2004-12-25
被引用文献数
4

本研究の目的は,歯科治療の音である切削音と小児の歯科恐怖の関係を明らかにすることである。方法は,新潟大学医歯学総合病院小児歯科診療室に定期診査のために受診した4-15歳の男児52名,女児52名,計104名(平均年齢8歳5か月)の小児患者に対し,切削音の印象をFaces Pain Rating Scaleを用いて評価し,その後CFSS-DSの質問紙に回答した。結果をもとに検討し,以下の結論を得た。<BR>1.低年齢群,高年齢群の平均値を比較するとコントロール音は2群ともほぼ同様の値であったことに対し,雷雨の音,切削音は2群ともに高い値であり,切削音は小児にとって不快な音であることが示唆された。<BR>2.因子分析の結果,低年齢群では切削音は雷雨の音と関連を認めた。一方高年齢群では,切削音はCFSSDSの歯科受診に関する恐怖と関連を認めた。<BR>3.低年齢群では切削音を自然界の不快な音と同様に「音」の恐怖と捉えており,歯科経験を重ね高年齢となると,切削音を歯科に関係する恐怖として認識するようになると推察された。<BR>4.従来の報告と同様,女児は男児よりも音刺激により概念的歯科恐怖を持つ傾向が示唆された。