著者
住吉 智子 佐野 富子 田邊 義浩 野田 忠
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.680-688, 2004-12-25
被引用文献数
4

本研究の目的は,歯科治療の音である切削音と小児の歯科恐怖の関係を明らかにすることである。方法は,新潟大学医歯学総合病院小児歯科診療室に定期診査のために受診した4-15歳の男児52名,女児52名,計104名(平均年齢8歳5か月)の小児患者に対し,切削音の印象をFaces Pain Rating Scaleを用いて評価し,その後CFSS-DSの質問紙に回答した。結果をもとに検討し,以下の結論を得た。<BR>1.低年齢群,高年齢群の平均値を比較するとコントロール音は2群ともほぼ同様の値であったことに対し,雷雨の音,切削音は2群ともに高い値であり,切削音は小児にとって不快な音であることが示唆された。<BR>2.因子分析の結果,低年齢群では切削音は雷雨の音と関連を認めた。一方高年齢群では,切削音はCFSSDSの歯科受診に関する恐怖と関連を認めた。<BR>3.低年齢群では切削音を自然界の不快な音と同様に「音」の恐怖と捉えており,歯科経験を重ね高年齢となると,切削音を歯科に関係する恐怖として認識するようになると推察された。<BR>4.従来の報告と同様,女児は男児よりも音刺激により概念的歯科恐怖を持つ傾向が示唆された。
著者
山内 理恵 有田 憲司 阿部 洋子 森川 富昭 木村 奈津子 山口 公子 津田 雅子 福留 麗実 西野 瑞穂
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.506-513, 2003-06-25
被引用文献数
6

母親の年齢と乳歯の齲蝕発生との関連を検討する目的で,徳島県名西郡石井町の地域歯科保健管理データベースを利用して,1991年~2001年の間に生まれた第一子の小児を母親の初産年齢をもとにG1群(初産年齢22歳以下),G2群(初産年齢23~28歳),G3群(初産年齢29~34歳)およびG4群(初産年齢35歳以上)に分類し,齲蝕罹患状況を分析し,以下の結果を得た.<BR>1. 1歳6か月ではG4群で齲蝕有病者率および一人平均齲歯数が最も高かった.<BR>2. 2歳6か月ではG1群で齲蝕有病者率および一人平均齲歯数が最も高かった.<BR>3. 3歳6か月ではG1群で齲蝕有病者率および一人平均齲歯数が最も高かった.<BR>4. 5歳ではG3群で齲蝕有病者率および一人平均齲歯数が他の群に比べて著しく低かった.<BR>5. 1歳6か月で離乳の完了していない小児の割合は,G1群およびG4群で高く,G3群で低かった.<BR>6. 1歳6か月で哺乳瓶をくわえて寝る癖のある小児の割合は,G2群およびG4群で高く,G3群で低かった.<BR>7. 親による仕上げ磨きは,GI群ではどの年齢においても毎日する割合が低かった.G4群は2歳6か月では毎日する割合が最も高かったが,5歳では最も低かった.<BR>以上より,G1群およびG4群は齲蝕ハイリスク群で,G3群は齲蝕ローリスク群であり,母親の年齢が乳幼児期の齲蝕発生要因となることが示唆された.
著者
森田 渉 清水 武彦 前田 隆秀
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.511-516, 2008-12-25
参考文献数
18

EL/Seaマウスは100%の頻度で第三臼歯を欠如しており,ヒトにおける先天性欠如歯の原因解明に有用なモデルマウスである.EL/Seaマウスにおける歯の欠如は常染色体劣性遺伝性であると報告されているが,歯の欠如の原因遺伝子は未だ明らかにされていない.著者らは過去にEL/Seaマウスの第三臼歯先天性欠如の原因遺伝子を探求し,EL/Seaマウス第3番染色体の123.1から136.9メガベースペア(Mbp)間に野生型MSM/Msマウスの染色体を導入したコンジェニックマウスを作製し,当該領域に欠如歯の原因遺伝子が存在することをin vivoにて証明し,この遺伝子をabsence of the third molars(am3)としたことを報告している.今回,この第9世代のコンジェニックマウス(N9マウス)を用いて交配実験を行い,MSM由来の染色体の導入領域をさらに限局したマウスを作製し,第三臼歯の欠如率を評価することで,am3の存在領域をさらに狭い範囲まで限定し,候補遺伝子を選定することを目的とした.コンジェニックマウスの第三臼歯欠如の頻度と遺伝子型の結果から,マウス第3番染色体の130.7から131.7メガベースペア(Mbp)間の領域に第三臼歯欠如の遺伝要因が存在することが明らかとなった.この領域内に存在するLef1,Hadh,Cyp2u1,Sgms2,Papss1の5遺伝子が候補であることが示唆された.
著者
假谷 直之 松村 誠士 RODIS Omar M M 紀 瑩 杜 小沛 志野 綾子 下野 勉
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.379-384, 2006-06-25

今回,我々は新しく発売されたミュータンス菌測定キット,オーラルテスターミュータンスの<I>S. mutans</I>検出能力を臨床評価する目的で研究を行った。被検児は岡山県内にあるN保育園児(4,5歳児)52名。オーラルテスターミュータンスとカリオスタットはマニュアルに従い処理,判定した。PCR法は,QIAGENのマニュアルに従いDNAを調製してPCR後,電気泳動にてバンドを確認した。対象を<I>S. mutans</I>とした場合,オーラルテスターミュータンスの値をHigh,Low二群に分けた分析で,High-Low間ではP<0.001,カリオスタット値の同様な分析では,High-Low間においてP<0,01でBand検出の有無との問に関連性を認めた。対象を<I>S. sobrinus</I>とした場合,オーラルテスターミュータンスの値をHigh,Low二群に分けた分析で,High-Low間においてはBand検出の有無との間に関連性を認めなかった。カリオスタット値の同様な分析においても,High-Low間でBand検出の有無との問に関連性を認めなかった。今回の研究で,<I>S. mutans</I>に特異的といわれている領域を増幅したPCR法によるバンド検出率と関連することが確認された。オーラルテスターミュータンスは,齲蝕原因菌のうち特に<I>S. mutans</I>の検査として有用と考えられる。
著者
伊藤 雅子 野坂 久美子 守口 修 山田 聖弥 印南 洋伸 山崎 勝之 小野 玲子 甘利 英一
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.643-652, 1986
被引用文献数
11

岩手医科大学歯学部附屈病院小児歯科で行った開窓牽引症例56例,67歯について,処置の難易度を左右する因子を解明する目的で,臨床的に種々の点から再検討を行った。<BR>埋伏の原因では,位置異常が最も多かった。性別の出現頻度では,女子は男子の約2倍であった。歯種別の出現頻度では,上顎中切歯が最も多くを占めていた。上顎中切歯の彎曲歯では,その歯冠軸傾斜角度が100°前後,歯根彎曲度が60°以上でも90°以内であれば,根尖部が骨質から露出しない程度まで誘導し,その後補綴的処置をする事で誘導可能であった。<BR>処置開始年齢は,どの歯種も正常な萌出時期より約2年過ぎていたが,歯根未完成歯が85%を占めていた。処置法は,大臼歯部では全て開窓のみであり,上顎中切歯・犬歯は全て開窓後,牽引を行った。誘導期間は,平均約1年であったが,同じような条件の埋伏歯の場合,歯根未完成歯の力が誘導期間が短かったことから,正常な萌出時期と上ヒベ遅延傾向を認めたら,幽根完成前に処置を開始した方が得策と思われた。処置後の状態は,歯髄死,歯根の吸収,歯槽骨の吸収を認めた症例はなかった。歯肉部膨隆は,上顎中切歯4歯の根尖部に認めたが,根尖が歯槽粘膜上に露出するものはなかった。歯頸部歯肉の退縮は約20%に認められたが,ほとんどが0.5mmから1.0mm以内であった。なお,これらの退縮に手術法による差異はみられなかった。
著者
芳野 素子 荻原 勝 遠藤 敏哉 小林 義樹 下岡 正八
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.417-424, 2005-06-25
被引用文献数
2

日本歯科大学新潟歯学部では,平成15年4月の大学機構改革により,講座と診療科別専任の二元化を導入した.これに伴い従来の小児歯科学と歯科矯正学を一つにまとめ,顎顔面口腔形態機能育成学として新しい歯科医学教育改革に対応している.さらに,小児歯科と矯正歯科は統合され,一診療科として知識,技能および態度の共有を図っている.歯科大学・歯学部附属病院は,歯科医療の変化に対応した診療体制を構築する必要がある.<BR>そこで,小児・矯正歯科に来院した矯正患者を対象として,診療日時に関するアンケートを実施し,以下の結論を得た.<BR>1.来院動機は,平日,土曜日とも患者の休みが大きく関与していた.<BR>2.平日来院患者の来院曜日,予約曜日はそれぞれ火曜日,水曜日が最も多かった.土曜日来院患者は,土曜日以外に日曜日を希望した.<BR>3.患者が最も多い来院時間と予約時間は,平日が16時から16時59分まで,土曜日が14時から14時59分までであった.患者が最も多い来院時間帯と予約時問帯は平日が夕方,土曜日が午前であった.<BR>4.耐えられる待ち時間,診療時間は,それぞれ15分から30分未満,30分から1時間未満が最も多かった.本学附属病院の来院曜日および来院時間は患者の希望に必ずしも即しているものではなかった.診療時間は一概に短縮するのではなく,患者の満足度に対応する必要があると示唆された.
著者
細矢 由美子 山邊 陽出代 井上 孝 後藤 讓治
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.631-641, 1999-06-25
参考文献数
28
被引用文献数
3

三姉妹のうちの長女と三女の2名が象牙質形成不全を伴うエナメル質形成不全症である症例について,12年間にわたる口腔管理を行った。初診時の年齢は,長女が7歳2か月,三女が2歳5か月であり,全身的には異常は認められなかった。長女は,初診時に〓〓〓が萌出しており,全体に黄色で,〓〓〓はC4であった。三女は,初診時に〓〓〓が萌出しており,全歯とも象牙質が露出し,黄褐色であり,象牙質面は滑沢であった。姉妹ともに永久歯のエナメル質は菲薄,粗〓であったが硬く,低形成の状態であった。全歯にわたり接触点は認められず歯間空隙が存在し,咬耗がみられた。乳歯および永久歯ともに,増齢に伴い歯髄腔が狭窄もしくは閉鎖した。病理組織所見として,姉妹ともに象牙細管の数が少なく,石灰化の不規則性が観察され,象牙質形成不全が認められた。治療は,萌出直後の全歯にグラスアイオノマー充填を行い,その後コンポジットレジン充填を行った。最終的には乳切歯はコンポジットレジン冠,乳犬歯と乳臼歯は既製金属冠,永久前歯はコンポジットレジン冠を経て硬質レジン被覆冠,永久臼歯は既製金属冠を経て全部鋳造冠で歯冠修復を行った。接着性歯冠修復材の歯質への接着性は低く,修復物の剥離や脱落が頻発した。父親が全歯にわたる重度の形成不全であったことより,本症例は常染色体優性遺伝の象牙質形成不全を伴うエナメル質形成不全症であると思われる。
著者
松本 弘紀 角田 初恵 夏堀 裕之 原田 利佳子 田中 光郎
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.405-411, 2007

少子化と齲蝕罹患者率の減少という社会状況において当小児歯科に求められている役割の現状を把握し,的確に対応する方策を検討するために,平成13年4月から平成17年年3月までの5年間に本学小児歯科外来を受診した全初診患児の初診時の問診表およびカルテをもとに実態調査を行い,以下の結果を得た.<BR>1.初診患児数は3歳から7歳が多かった.これは,歯科疾患実態調査の結果に比べて,一人平均齲蝕歯数が多い年齢層であり,また齲蝕を主訴として来院する比率も高かったことから,治療に対する協力性が乏しく,治療が困難であるために当科を受診した患児が多かったためと推測された.<BR>2.患児の居住地は盛岡市内と近郊で62.6%を占めていたが,その他の地域から来院する患児では50.8%と紹介率が高く,当科の北東北地区における二次・三次医療機関としての役割を示唆していた.<BR>3.当科への紹介患者は全初診患者の38.7%であり,平成13年度から平成17年度にかけて,21.6%増加した.開業医からの紹介と医学部からの紹介に増加傾向が認められ,この結果も当科の二次・三次医療機関としての位置づけが示されていた.<BR>4.初診時の主訴は齲蝕処置が40.6%で最も多く,次いで歯列咬合18.4%,診査希望13.0%,外傷10.6%の順であった.これは大学病院小児歯科にはいまも低年齢児や非協力児に対しての齲蝕処置が患者からも開業歯科医師からも求められているためと考えられた.<BR>5.年齢別一人平均齲蝕歯数(乳歯)は,平成17年歯科疾患実態調と比較して,殆どの年齢において実態調査の一人平均齲蝕歯数を上回っており,5歳以下ではその傾向がさらに明確に認められた.年齢別一人平均齲蝕歯数(永久歯)は,平成17年歯科疾患実態調査と比較して,10歳以上の年齢において実態調査の一人平均齲蝕歯数を上回っていた.また未処置歯分類(乳歯)ではC2,C3を持つ者の割合が多かった.
著者
徳倉 健 中野 崇 柴田 宗則 丹羽 英之 土屋 友幸
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-7, 2006-03-25
被引用文献数
5

今回著者らは,愛知学院大学歯学部附属病院小児歯科初診患者の全容および経年的推移を把握する目的で,小児歯科初診申込用紙をもとに,1993年度および2003年度に当科を受診した初診患者の動向について実態調査を行い,以下の結論を得た。<BR>1.総初診患者数:1993年度412人,2003年度562人であり,増加率は36.4%であった。両年度ともに初診時平均年齢は,6歳4か月であった。<BR>2.月別初診患者数:1993年度では学童期の長期休暇にあたる月で多く,それ以外の月では少ないのに対して,2003年度では年間を通しての変化は少なかった。<BR>3.曜日別初診患者数:1993年度では,木曜日を除き,各曜日ともほぼ同数を示していたのに対し,2003年度では月曜日と土曜日が多かった。<BR>4.主訴内訳:両年度ともに「齲蝕」と「口腔管理」が全体の50%以上を占めており,その他の主訴においても,この10年での顕著な差はみられなかった。<BR>5.初診患者の居住地域分布:両年度ともに市内が高い割合を示し,名古屋市近郊からの初診患者は,調査年度間において増加を示した。
著者
山本 益枝 宮崎 結花 三浦 一生 長坂 信夫
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.86-94, 1991
被引用文献数
7

我々はスポーツドリンクの脱灰能とそれに影響を及ぼす要因との関連を明らかにする目的で,スポーツドリンクの性状分析と,ハイドロキシアパタイトからのCa溶出量測定を行い,以下のような結果を得た.<BR>1)スポーツドリンクのpHは,2.91~4.07であった.<BR>2)スポーツドリンクの主糖質量は3.24~5.95%であり,糖質の種類は,Sucrose, Glucose, Fructoseが主となっているが,その割合は,各スポーツドリンクによって異なっていた.<BR>3)スポーツドリンクによるハイドロキシアパタイトからのCa溶出を経時的に観察し,スポーツドリンクの H, Ca濃度と, 溶出パターンの関係を検討すると, 攪拌時間1分及び5分では,スポーツドリンクのpHとCa溶出量との間に負の相関を,また,10分及び20分ではスポーツドリンクのCa濃度とCa溶出量との間に負の相関を認めた.<BR>4)スポーツドリンクに糖質を添加しても,ハイドロキシアパタイトからのCa溶出量に影響は認められなかった.<BR>従って,歯牙がスポーツドリンクに接する初期の段階においては,pHの低いものほど歯牙脱灰量は多く,また,歯牙が長時間同じスポーツドリンクに浸漬されているような場合には, そのCa濃度が低いものほど歯牙脱灰量は多いと考えられる.
著者
香西 克之 山木戸 隆子 鈴木 淳司 長坂 信夫
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.751-755, 1994

歯口清掃の重要性は,近年ますます大きくなっているが歯口清掃器具の管理については,十分な指導がなされていないように思われる.今回我々は,歯口清掃器具の使用後の汚染を細菌学的に調査する目的で,本学小児歯科に来院した3-12歳までの45名の小児に対して,歯口清掃後の歯ブラシを任意に洗浄してもらい,その歯ブラシに残存している付着細菌数を測定し,以下の結果を得た.<BR>1.洗浄後の付着細菌数は歯ブラシ1本当たり,最少で3.5×103コロニー,最多で3.7×106コロニー,平均4.8×105コロニーと非常に多くの付着細菌が検出された.<BR>2.歯ブラシの洗浄方法によって付着細菌数は大きな差を生じたが,流水中での歯ブラシ洗浄が有意に少なかった.<BR>3.さらに聞き取り調査も行った結果,家庭における歯口清掃器具の洗浄や管理には不十分な点が多く,これらについての指導の必要性が指摘された.
著者
福田 理 田中 泰司 柳瀬 博 小野 俊朗 河合 利方 黒須 一夫
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.29-35, 1995-03-25
被引用文献数
7

本学小児歯科外来を訪れた心身障害児のうち,通常のトレーニング実施後も歯科治療に対する協力性が充分得られなかった54名を対象とし,笑気吸入のためのトレーニングに加え,笑気吸入鎮静下で歯科治療に対する適応性を高めるためのトレーニングを実施後,笑気吸入鎮静法下で歯科治療を行い,その臨床効果と発達年齢との関連について検討し,以下の結果を得た.<BR>発達年齢が3歳以上の患児では,本法応用によりその約72%が笑気吸入下で協力的に歯科治療を受け入れることが可能となったのに対し,3歳未満の患児では本法応用によっても約29%が笑気吸入下の歯科治療に適応できるのみで,両者間に統計的な有意差が認められた.<BR>以上の結果より,通常の対応法で歯科治療が困難であった心身障害児のうち,発達年齢が3歳以上に達している患児では,本法を応用することにより,歯科治療を協力的に受け入れるよう行動変容できる可能性の高いことが明らかとなった.
著者
内藤 真理子 川原 玲子 井手口 博 上田 和茂 鶴田 靖 吉永 久秋 内藤 徹 木村 光孝
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.625-630, 1997

児童の食習慣を検討する目的で,北九州市内の公立小学校に通学する3年生から6年生までの児童,男児1,336名,女児1,248名,計2,584名を対象に,質問票による調査を実施した。<BR>「朝ごはんを食べない」と回答した児童は5%前後であり,平成4年度の調査結果と比較して著しい変化はなかった。「やわらかいものを食べる」あるいは「かたいものをあまり食べない」と回答した率は50%前後であり,全般に女児に高く認められる傾向にあった。「食べる速さがはやい」と回答した率は20%前後であり,男児の率が有意に高く認められた。「食べるときにあまりかまない」と回答した率は10%前後であり,男児に対して有意に高く認められた。「インスタント食品をよく食べる」と回答した率は15%前後であり,全般に男児に高く認められる傾向にあった。学年の上昇にともない,主食の中でごはんを「一番好き」と回答した率が上昇する傾向にあった。それぞれの設問における男女児間の回答の違いは,全般に6年生でその差が減少する傾向にあった。<BR>児童を取り巻く環境や状況の変化が食習慣に影響を及ぼすことが示唆されたことから,早期からの段階を追った「食育」の過程において,この時期に好ましい食習慣の確立をはかることが重要であると思われた。
著者
宮迫 隆典 一瀬 智生 市川 史子 吉田 かおり 山本 益枝 信家 弘士 長坂 信夫 川端 康司
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.970-978, 1992
被引用文献数
1

我々は,小児の健全な成長発育を把握し,地域の歯科医療の推進に貢献する目的で,広島県湯来町の保育所および幼稚園の協力を得て,昭和62年より毎年,幼児の歯科検診を実施し,幼児の口腔内の縦断的観察を行っている。今回,幼児の生活環境のアンケート調査を行い,以下の結果を得た。<BR>1)自分自身の齲蝕予防に心がけている親は41.9%であった。<BR>2)幼児の食生活では,果実,菓子類が好まれ,野菜類は好まれない傾向が認められた。おやつの回数は, 通園日1 日1 回および休園日1 日2 回が約80%を占めた。また, 6歳児の買い食いは, 4歳,5歳児の15~20%と比較して, 約40% と増加しており, 6 歳と他の年齢間に統計的有意差を認めた。<BR>3)幼児の歯磨きでは,朝食後と就寝前の歯磨きが70%以上を占め,就寝前以外の歯磨きでは,幼児自身が磨くことが多く,時間も短かったが,就寝前の歯磨きでは,過半数以上の親が手伝い,3分以上磨く者の割合が多かった。<BR>4) 親子関係では, 親自身が齲蝕予防に心がけている方が心がけていない方より, 朝食後,夕食後に子供の歯磨きをよく手伝い,おやつを与える回数も少なく,統計的有意差を認めた。
著者
広瀬 弥奈 松本 大輔 八幡 祥子 前山 善彦 青山 有子 島袋 鎮太郎 千秋 宜之 松下 標 倉重 多栄 福田 敦史 伊藤 綾子 野呂 大輔 齊藤 正人 丹下 貴司 五十嵐 清治
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.444-452, 2006-06-25
被引用文献数
4

改革した小児歯科学基礎実習の点検評価を,本学歯学部4年生の96名に対しアンケート方式にて実施した。アンケートの内容は,実習に対する理解度,満足度についてで,「全くできなかった,あまりできなかった,どちらでもない,できた,よくできた」の5段階による無記名回答方式で調査した。その結果,予習の段階で実習書の内容について理解できた者は,フッ化物応用法,ラバーダム防湿法,窩溝填塞法,乳歯の歯髄切断法,既製乳歯冠修復法,治療計画の立案(口腔疾患の予防)の各実習項目とも約80%を占め,多くの者がこれから行う内容についてある程度理解しながら実習を行っていると判断された。<BR>また,本実習を通して理解を深めることのできた者は,いずれの課題も80%以上を占め,本実習によりある程度体得できたものと思われた。テユートリアル実習においては80%以上の者が本実習に積極的に参加したと自己評価していたが,あまり参加できなかった者も16%認められ,再検討が必要であると思われた。マネキンを実患者と想定した施術時態度・技能の修得については,マネキンへの話しかけを有益でないと答えた者が約30%認められたことから,学生の意識改革を惹起するような対策・対応が必要と思われた。
著者
南 貴洋 奥野 麻也子 高橋 亜緒郁 瀧口 宮子 松村 美依子 祖父江 鎭雄
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.590-594, 1999-06-25
被引用文献数
4

5か所の小児歯科専門の診療所で定期的に口腔衛生管理を受けている小児349名を対象として,齲蝕多発傾向者の定義に基づいて齲蝕多発傾向を有する者とそうでない者に分類し,口腔衛生管理を開始した時期とその後の齲蝕罹患状況について経年的に調査を行った。その結果,口腔衛生管理開始時に齲蝕多発傾向を有すると判定されたものであっても,永久歯萌出前に口腔衛生管理を開始することにより,永久歯における齲蝕発生を抑制できることが明らかとなり,早期のカリエスコントロールの重要性があらためて示唆された。