著者
浅野 泰一 田部井 久男 伏貫 義十 正留 隆
出版者
八戸工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

警察白書によれば,覚醒剤事犯大きな社会問題の一つであり,現在は1950年代の第一次乱用,1980年代の第二次乱用に続き第三次乱用期とされ,早急に解決しなければならない社会問題とされている。この問題を解決するためには,捜査現場において様々な生体試料から,覚醒剤メチルアンフェタミンを簡便,迅速,正確に検出し,陽性であれば,被疑者を即現行犯逮捕することが最も効果的であり,この目的に沿った科学捜査用覚醒剤簡易計測器を開発することへの要望が高まっている。近年,新規な有機物計測法として注目を集めているSPRに基づく生体膜相互作用解析装置は,測定原理の多様性から科学捜査用のドラッグセンサ化が容易な最新のセンシング技術として有効であると考えられる。裁判化学用の機器に求められる条件は,得られた計測データが裁判における証拠にされるるので測定結果は2重,3重の確からしさに基づく信頼性の高い方法でなけれなならない。本研究では測定結果の信頼性を高めるために,まず試料からメチルアンフェタミンンを分離した後に免疫反応を行わせ,この際生じる表面プラズモン共鳴現象による入射光の角度変化を検出することによって,尿中に含まれる覚醒剤を簡便・迅速・選択的に計測するための基礎技術の検討を行った。その結果,覚醒剤の保持時間は,尿中に共存する可能性の高いカフェインやエフェドリンの保持時間と明らかに異なり,保持時間を計測項目に取り入れることにより,覚醒剤のSPR計測結果の信頼性が一層高り,測定値の信頼性の向上という観点から裁判化学用機器におけるSPRクロマトグラフィの有効性が明らかのなった。