著者
甲村 弘子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.658-665, 2014-07-01 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
2

女性のライフサイクルを通じて性ステロイドホルモンは重要な役割を果たし,月経という現象は女性の身体面と精神面に大きな影響を与えている.体重減少や過度の運動,ストレスなどにより視床下部性無月経が起こってくる.やせによる栄養不良や強いストレスの影響下では摂食促進因子の作用が高まって性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)分泌が抑制される.また,栄養不良によるレプチンの低下はGnRH分泌不全をもたらす.そして無排卵・無月経となる.このように摂食およびストレスと生殖機能は密接に関係している.月経困難症は女性の心身にさまざまな影響を与え,そのQOLを低下させている.器質的異常を認めない機能性(原発性)の月経困難症と,器質的疾患によって起こる器質性(続発性)月経困難症の2種に分類され,後者の代表は子宮内膜症である.月経周期の変動に伴って症状の現れる疾患は月経前症候群である.本症の症状は身体症状から精神症状まで多岐にわたる.その症状の発現には性ステロイドホルモンと中枢神経系の神経伝達物質(セロトニン系,GABA系)との関係が注目されている.
著者
甲村 弘子 コウムラ ヒロコ Hiroko KOUMURA
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.1, pp.223, 2011-01-31

月経前症候群(PMS)は月経周期の黄体期、すなわち月経前に起こる様々な身体的、精神的症状をあらわす疾患であり、軽度のものを含めると多くの女性が経験する。PMSは疾患として名前が広く知られているにもかかわらず、その原因はまだ明らかにされておらず、確立された判定基準はない。本症の頻度に関しては、諸外国では報告がなされているが本邦ではほとんど認めない。若い女性での報告もみられない。本研究では、日本における女子大学生のPMSとPMDD の頻度を、"The Premenstrual Symptoms Screening Tool (PSST)"を用いて明らかにしようとした。対象は18歳から22歳の554名である。身体症状は約80%にみられ、中等症から重症のPMS群は20.4%、PMDD群は4.0%であった。この頻度は諸外国の報告とほぼ一致する。少なからず存在する本疾患に対して適切な対応が行われ、女性の生活の質(QOL)の向上に貢献することが期待される。