著者
片山 訓博 甲藤 由美香 甲藤 史拡 大倉 三洋
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0675, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに】筋肥大を目的としたレジスタンストレーニング(以下,RT)の効果は,負荷量,頻度,期間に影響を受ける。RT効果をより短期間で得るために加圧トレーニングが用いられ,局所的な酸素不足を生じさせての筋負荷を増加が実施させている。本研究では,常圧低酸素環境を用い局所的な酸素不足ではなく,全身の酸素不足を生じさせた場合のRT効果を検討したので報告する。【方法】対象は,疾患健常で肘・肩関節に疾患を有さない男性12名,平均年齢20.3±0.5歳,平均身長171.4±6.5cm,平均体重66.5±6.8kgであった。RTの対象筋は上腕二頭筋とした。RT前に徒手筋力測定機器(アニマ社製 μ-TAS F-1)を用いて対象筋の最大筋力値(kgf)と肘関節屈曲位上腕最大周径をメジャーを用いて測定した。常圧低酸素環境は,酸素濃度14.5%(標高3,000m相当)に設定した。RTは,負荷量70%1RM,上肢自然下垂位から肘関節最大屈曲までの運動を10回,3日/週,3週間継続させた。尚,RTの前には低酸素環境順化を行った。各測定項目をトレーニング開始から1週間ごとに1週間後・2週間後・3週間後に再測定し,統計学的手法は,一元配置の分散分析法を用い有意基準は5%未満とし比較検討した。【結果】上腕二頭筋最大筋力の平均値は,開始時・1週間後・2週間後・3週間後の順にそれぞれ23.3±4.0kgf・27.8±6.1kgf・28.9±6.4kgf・30.0±6.2kgfであり,開始時に比べ3週間後は有意に高値を示した(P<0.05)。肘関節屈曲位上腕最大周径の平均値も同様にそれぞれ30.5±2.2cm・31.4±2cm・32.3±2.1cm・32.9±2.3cmであり,統計学的有意差は認めなかったが,開始時に比べRT後は大きくなっていた。【結論】常圧低酸素環境下で酸素濃度14.5%のRT結果は,3週間後の上腕二頭筋筋力において開始時より有意に筋力増強効果を認め,増加率は29%であった。Nishimuraらの常圧低酸素環境下で酸素濃度16.0%,70%1RM,2回/週のRT結果は,6週間後には上腕二頭筋筋力の61.6%の増加率を認め,通常酸素濃度下の38.9%に比べより有意であったことを報告している。本研究結果は,この先行研究の通常酸素下の結果と比べると3週間後ですでに6週間後の筋力増強率の74.6%を占めていた。これは,常圧低酸素環境では,筋内の低酸素ストレスは高く,活性酸素種の活性が上がり,一酸化窒素が有意に上昇した結果,一酸化窒素が筋の幹細胞である筋サテライト細胞の増殖・分化を促進したからと考える。また,本研究結果を先行研究の低酸素環境下の結果と比べると,3週間後ですでに6週間後の筋力増強率の48.7%を占めていた。Nishimuraらは3週目からより筋力増強を認めたとの報告する。酸素濃度の低い本条件は,すでに3週間で約半分の効果があり,酸素濃度がより低ければRT効果が高いことを示唆した。