著者
坂上 昇 大倉 三洋
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-7, 2001-03-31 (Released:2018-08-29)
参考文献数
9

ストレッチングはスポーツ活動後に疲労回復を促し,障害予防,パフォーマンスの維持・向上といった目的で実施されている.しかし,その実施状況は決して高率ではなく,その原因はストレッチングの効果が十分に理解されていないためと考えられる.そこで本研究は,健常成人男性4名(平均年齢20歳)を対象に,ストレッチングの筋疲労回復効果について検討した.自転車エルゴメーター(COMBI社製;POWERMAX-VⅡ)による30秒間全力駆動を主運動として,その後10分間の休息を取らせることを2セット行った.その休息時に安静臥位,軽運動,ストレッチングを実施した.検討指標として筋柔軟性,血中乳酸値,作業能力,アンケートを取り上げた.筋疲労による筋柔軟性低下の予防効果については軽運動が効果的であり,ストレッチングは大腿直筋においてはあまり効果がなく,ハムストリングスにおいても安静臥位とあまり差がない傾向を示した.血中乳酸値の回復については,ストレッチングは安静臥位と比較すると低い傾向にあるがその回復傾向には差が見られなかった.作業能力の回復については軽運動が比較的良く,ストレッチングが低い傾向を示した.このように,激運動後の筋疲労回復に対してストレッチングは全ての指標において安静臥位とあまり差がなく,効果的でない傾向を示した.今回の結果は,運動後の筋疲労の速やかな回復という観点では,一般的に認識されているストレッチングの効果を否定する結果となった.しかし,今回の結果は,ストレッチングが身体に与える影響を全て否定するものではない.
著者
坂上 昇 大倉 三洋
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-7, 2001-03-31

ストレッチングはスポーツ活動後に疲労回復を促し,障害予防,パフォーマンスの維持・向上といった目的で実施されている.しかし,その実施状況は決して高率ではなく,その原因はストレッチングの効果が十分に理解されていないためと考えられる.そこで本研究は,健常成人男性4名(平均年齢20歳)を対象に,ストレッチングの筋疲労回復効果について検討した.自転車エルゴメーターによる30秒間全力駆動を主運動として,その後10分間の休息を取らせることを2セット行った.その休息時に安静臥位,軽運動,ストレッチングを実施した.検討指標として筋柔軟性,血中乳酸値,作業能力,アンケートを取り上げた.筋疲労による筋柔軟性低下の予防効果については軽運動が効果的であり,ストレッチングは大腿直筋においてはあまり効果がなく,ハムストリングスにおいても安静臥位とあまり差がない傾向を示した.血中乳酸値の回復については,ストレッチングは安静臥位と比較すると低い傾向にあるがその回復傾向には差が見られなかった.作業能力の回復については軽運動が比較的良く,ストレッチングが低い傾向を示した.このように,激運動後の筋疲労回復に対してストレッチングは全ての指標において安静臥位とあまり差がなく,効果的でない傾向を示した.今回の結果は,運動後の筋疲労の速やかな回復という観点では,一般的に認識されているストレッチングの効果を否定する結果となった.しかし,今回の結果は,ストレッチングが身体に与える影響を全て否定するものではない.
著者
山﨑 裕司 片岡 千春 大倉 三洋 酒井 寿美 栗山 裕司 稲岡 忠勝 宮崎 登美子 柏 智之 中野 良哉
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.61-66, 2009-03-31 (Released:2018-11-06)
参考文献数
13
被引用文献数
2

固定用ベルトを併用したHand Held Dynamometer(以下,HHD)による新たな股関節外転筋力(以下,股外転筋力)測定方法を考案し,その再現性について検討した.<研究1:検者内再現性>健常者20名の両下肢40脚を対象とした.固定用ベルトを使用したHHDにはアニマ社製徒手筋力測定機器μTasMF-01を用いた.固定用ベルトを使用しないHHDには酒井医療社製徒手筋力センサEG-230及び220を使用した.股外転筋力値は1日目,2日目とも固定用ベルト不使用下(23.1kgf,23.0kgf)に比較し,固定用ベルト使用下(28.2kgf,28.7kgf)において有意に高値を示した(p<0.01).ベルト不使用下,使用下での級内相関係数(以下,ICC)は,それぞれ0.917,0.953であった.両測定方法間での筋力差とベルト使用下における筋力値の間には,有意な相関(r=0.783,p<0.01)を認め,筋力値が大きいほど測定方法間での差が大きくなった.<研究2: 検者間再現性>健常成人17名の両下肢34脚を対象とした.体格の異なる2名の検者によって,研究1と同じ固定用ベルトを使用したHHDを用いて股外転筋力の測定を実施した.筋力値は検者A,Bの順に31.1kgf,32.8kgfであり,検者間に有意差は認めなかった.検者間ICCは0.915であった.以上の結果から,今回の固定用ベルトを使用した股外転筋力測定方法は良好な検者内,検者間再現性を有することが明らかとなった.一方,固定用ベルトを使用しない方法は,筋力値の大きな対象群において測定値の妥当性に問題があるものと考えられた.
著者
片山 訓博 大倉 三洋 山崎 裕司 重島 晃史 藤本 哲也 藤原 孝之
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Eb1236, 2012

【はじめに】 標高1000~3000mに居住する高地住民には,冠心疾患や高血圧症などの発生率が低く,長寿者が多いことが知られている.また,高地トレーニングが脂質糖質代謝の改善に有効なことが指摘されている.しかし,高地トレーニングや低圧低酸素環境下でのトレーニングを実現することは物理的,経済的に極めて困難である.また,低酸素環境における高強度のトレーニングは,重度の低酸素血症を誘発する可能性が高い.心疾患や肺疾患を合併することが少なくない中高年者の生活習慣病予防を目的とした運動としてはリスクが高い.近年,比較的簡易な装置を用いて常圧環境下で低酸素環境を作り出すことが可能となっている.もし,常圧の低酸素環境によって運動時のエネルギー代謝に好影響が与えられるとすれば,効果的なトレーニング環境が容易に実現できる可能性がある.本研究では,常圧低酸素環境における低強度運動時のエネルギー代謝応答を測定し,運動療法施行時の環境としての有用性について検討した.【方法】 対象は健常成人男性13名で平均年齢21.2(20―22歳),平均身長168.8±4.7cm,平均体重62.6±5.1kg,平均体表面積1.72±0.08m2であった.被験者は前日の夕食以降絶食として翌日の午前中に測定を実施した.研究の条件は,研究の条件は,常圧下での低酸素濃度環境(以下,低酸素)(酸素濃度14.5%,0.7atm,高度3,000m相当)および通常酸素濃度環境(以下,通常酸素)(酸素濃度20.9%,1.0atm)とした.低酸素は,藤原らの特許を用いた塩化ビニール製テント(容積4.0m3)と膜分離方式の高・低酸素空気発生装置(分離膜:宇部興産製UBEN2セパレーター,コンプレッサー:アネスト岩田製SLP-22C)を用いて設定した.各条件での測定は,先ず通常酸素条件で行い,その後1週間の間隔を設けて低酸素条件で実施した.両条件とも30分間の安静椅子座位後,嫌気性代謝閾値(以下,ATポイン)の70%定量負荷による自転車エルゴメータ運動(回転数は55回/分)を30分実施した.呼気ガス分析は,エアロモニター(AE-300Sミナト医科学製)を用いた.各データは安静開始から終了まで1分間隔で測定し,5分間毎の平均値で比較検討した.NU(尿中窒素排出量/分)は0.008g/分で一定とした.LOR(mg)=1.689×(VO2-VCO2)-1.943×NU,GOR(mg)=4.571×VCO2-3.231×VO2-2.826×NUで得られたLOR,GORは体表面積で補正した.統計学的手法は,Willcoxonの符号付順位和検定を用い,有意水準は危険率5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には,研究の主旨・内容および注意事項について説明し,同意を得たのちに実験を開始した.【結果】 被検者のATポイント70%における自転車エルゴメータの負荷量は,47.5±5.3wattであった.LORは,すべてのstageにおいて低酸素条件より通常酸素条件が有意に高値を示した(p<0.05).GORは,運動時全てのstageにおいて低酸素条件が通常酸素条件より高値を示した(p<0.05).低酸素条件における運動時GORは通常酸素条件よりも平均で191.1mg/min/m2大きく,逆に運動時LORは,低酸素条件で平均37.5mg/min/m2小さかった.【考察】 低常圧低酸素環境への暴露後の運動が呼吸循環代謝応答に与える影響について分析した.GORは,stageにおいて低酸素条件が通常酸素条件より高値を示した.高地環境における低酸素血症では,ミトコンドリア内では有機的解糖が阻害されるため,ミトコンドリア脱共役タンパク質の減少で代償が図られる.それとともに,嫌気的解糖によるATP合成効率を増やしてATP不足を補う結果,グルコース利用が増加し,血糖値が低下する.結果として,インスリン分泌も低下し,インスリン感受性の改善がもたらされることが報告されている.今回の常圧低酸素環でも同様の効果によりグルコースが多く利用されたと考えられる.低酸素条件におけるGORは30分間の運動中平均は191.1mg/min/m2通常酸素条件よりも大きく,これは通常酸素条件のGORの27.5%に相当した.このことは今回の常圧低酸素設備でも,糖質利用が促進されることを示している.よって,常圧低酸素環は糖質代謝を促進する必要のある対象者にとって有益なトレーニング環境となる可能性がある.【理学療法学研究としての意義】 低圧低酸素環境では,安静時代謝の亢進および脂質代謝が改善され,より効果的な減量が可能であると報告されている.常圧低酸素環境においても同様の効果が生じる可能性が示唆され,生活習慣病や減量を目的とした理学療法を施行する時の環境として利用できると考える.
著者
片山 訓博 大倉 三洋 山﨑 裕司 重島 晃史 酒井 寿美 栗山 裕司 稲岡 忠勝 宮﨑 登美子 柏 智之 藤本 哲也 藤原 孝之
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.357-361, 2012 (Released:2012-09-07)
参考文献数
10
被引用文献数
1

〔目的〕常圧低酸素環境における低強度運動時の呼吸循環代謝応答を測定し,エネルギー代謝に与える影響について検討した.〔対象〕健常成人男性13名.〔方法〕通常酸素濃度条件(1.0 atm,酸素濃度20.9%)と常圧低酸素条件(1.0 atm,酸素濃度14.5%)を設定した.両条件下でATポイントの70%負荷による自転車エルゴメータ運動を行った.実験中,酸素飽和度,心拍数,呼気ガスデータを測定した.〔結果〕低酸素条件では,通常酸素条件に比べ,運動時心拍数,分時換気量が有意に高値を示した.低酸素条件は,通常酸素条件に比べ,脂肪酸化率は有意に低かった.逆に,ブドウ糖酸化率は有意に高く,エネルギー代謝は亢進していた.〔結語〕常圧低酸素環境下の運動によって,糖質利用が促進される可能性が示唆された.
著者
片山 訓博 大倉 三洋 中屋 久長
雑誌
理学療法 = Journal of physical therapy (ISSN:09100059)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.87-92, 2005-01-15
参考文献数
18
著者
片山 訓博 甲藤 由美香 甲藤 史拡 大倉 三洋
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0675, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに】筋肥大を目的としたレジスタンストレーニング(以下,RT)の効果は,負荷量,頻度,期間に影響を受ける。RT効果をより短期間で得るために加圧トレーニングが用いられ,局所的な酸素不足を生じさせての筋負荷を増加が実施させている。本研究では,常圧低酸素環境を用い局所的な酸素不足ではなく,全身の酸素不足を生じさせた場合のRT効果を検討したので報告する。【方法】対象は,疾患健常で肘・肩関節に疾患を有さない男性12名,平均年齢20.3±0.5歳,平均身長171.4±6.5cm,平均体重66.5±6.8kgであった。RTの対象筋は上腕二頭筋とした。RT前に徒手筋力測定機器(アニマ社製 μ-TAS F-1)を用いて対象筋の最大筋力値(kgf)と肘関節屈曲位上腕最大周径をメジャーを用いて測定した。常圧低酸素環境は,酸素濃度14.5%(標高3,000m相当)に設定した。RTは,負荷量70%1RM,上肢自然下垂位から肘関節最大屈曲までの運動を10回,3日/週,3週間継続させた。尚,RTの前には低酸素環境順化を行った。各測定項目をトレーニング開始から1週間ごとに1週間後・2週間後・3週間後に再測定し,統計学的手法は,一元配置の分散分析法を用い有意基準は5%未満とし比較検討した。【結果】上腕二頭筋最大筋力の平均値は,開始時・1週間後・2週間後・3週間後の順にそれぞれ23.3±4.0kgf・27.8±6.1kgf・28.9±6.4kgf・30.0±6.2kgfであり,開始時に比べ3週間後は有意に高値を示した(P<0.05)。肘関節屈曲位上腕最大周径の平均値も同様にそれぞれ30.5±2.2cm・31.4±2cm・32.3±2.1cm・32.9±2.3cmであり,統計学的有意差は認めなかったが,開始時に比べRT後は大きくなっていた。【結論】常圧低酸素環境下で酸素濃度14.5%のRT結果は,3週間後の上腕二頭筋筋力において開始時より有意に筋力増強効果を認め,増加率は29%であった。Nishimuraらの常圧低酸素環境下で酸素濃度16.0%,70%1RM,2回/週のRT結果は,6週間後には上腕二頭筋筋力の61.6%の増加率を認め,通常酸素濃度下の38.9%に比べより有意であったことを報告している。本研究結果は,この先行研究の通常酸素下の結果と比べると3週間後ですでに6週間後の筋力増強率の74.6%を占めていた。これは,常圧低酸素環境では,筋内の低酸素ストレスは高く,活性酸素種の活性が上がり,一酸化窒素が有意に上昇した結果,一酸化窒素が筋の幹細胞である筋サテライト細胞の増殖・分化を促進したからと考える。また,本研究結果を先行研究の低酸素環境下の結果と比べると,3週間後ですでに6週間後の筋力増強率の48.7%を占めていた。Nishimuraらは3週目からより筋力増強を認めたとの報告する。酸素濃度の低い本条件は,すでに3週間で約半分の効果があり,酸素濃度がより低ければRT効果が高いことを示唆した。
著者
坂上 昇 大倉 三洋
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 = Journal of Kochi Rehabilitation Institute (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-7, 2001-03-31

ストレッチングはスポーツ活動後に疲労回復を促し,障害予防,パフォーマンスの維持・向上といった目的で実施されている.しかし,その実施状況は決して高率ではなく,その原因はストレッチングの効果が十分に理解されていないためと考えられる.そこで本研究は,健常成人男性4名(平均年齢20歳)を対象に,ストレッチングの筋疲労回復効果について検討した.自転車エルゴメーターによる30秒間全力駆動を主運動として,その後10分間の休息を取らせることを2セット行った.その休息時に安静臥位,軽運動,ストレッチングを実施した.検討指標として筋柔軟性,血中乳酸値,作業能力,アンケートを取り上げた.筋疲労による筋柔軟性低下の予防効果については軽運動が効果的であり,ストレッチングは大腿直筋においてはあまり効果がなく,ハムストリングスにおいても安静臥位とあまり差がない傾向を示した.血中乳酸値の回復については,ストレッチングは安静臥位と比較すると低い傾向にあるがその回復傾向には差が見られなかった.作業能力の回復については軽運動が比較的良く,ストレッチングが低い傾向を示した.このように,激運動後の筋疲労回復に対してストレッチングは全ての指標において安静臥位とあまり差がなく,効果的でない傾向を示した.今回の結果は,運動後の筋疲労の速やかな回復という観点では,一般的に認識されているストレッチングの効果を否定する結果となった.しかし,今回の結果は,ストレッチングが身体に与える影響を全て否定するものではない.
著者
片山 訓博 大倉 三洋 山崎 裕司 重島 晃史 酒井 寿美 栗山 裕司 稲岡 忠勝 宮崎 登美子 柏 智之 藤本 哲也 藤原 孝之
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.365-369, 2011 (Released:2011-07-21)
参考文献数
11
被引用文献数
2

〔目的〕常圧下における低酸素および高酸素条件への急性暴露が,運動時の呼吸循環応答へ与える影響を検討した.〔対象〕健常成人男性7名.〔方法〕膜分離方式により常圧環境下において低,通常,高の3つの酸素濃度条件を設定した.各条件下で自転車エルゴメータによる多段階漸増運動負荷を行い,安静時から運動最終時までの呼吸循環応答を測定した.低酸素濃度と通常酸素濃度,通常酸素濃度と高酸素濃度の呼吸循環反応を比較検討した.〔結果〕低酸素濃度では,通常酸素濃度に比べ呼吸循環器系への負荷が有意に増大した.特に,嫌気性代謝閾値以上の負荷において呼吸器系への負荷が大きくなる傾向にあった.高酸素濃度では,通常酸素濃度と大きな差を認めなかった.〔結語〕急性暴露における常圧低酸素環境においても,順化させた低圧低酸素環境での呼吸循環負荷と同様の効果が示された.
著者
栗山 裕司 山崎 裕司 坂上 昇 酒井 寿美 大倉 三洋 山本 双一 中屋 久長
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-6, 2003-03-31
被引用文献数
1

固定用ベルトを装着したハンドヘルドダイナモメーター(HHD)による等尺性膝伸展筋力測定方法の座位姿勢間再現性について,健常者20名を対象に検討した.測定は,プラットホーム端座位,車椅子座位,介護用ベッド端座位,背もたれ付きパイプ椅子座位の4つの異なる座位にて実施した.異なる座位姿勢における等尺性膝伸展筋力測定値に関して,パイプ椅子座位は,プラットホーム端座位,介護用ベッド端座位および車椅子座位との比較において有意に低値を示した.また,各座位姿勢間の級内相関係数は,プラットホーム端座位と車椅子座位間およびプラットホーム端座位と介護用ベッド端座位間で高値を示し,良好な座位姿勢間再現性を示した.一方,パイプ椅子座位と他の座位姿勢間では,低値を示した.今回の結果から固定用ベルトを装着したHHDによる等尺性膝伸展筋力測定に際し,パイプ椅子座位での測定は避けるべきであるが,介護用ベッドや車椅子での測定が可能で,病棟や在宅など広い範囲での使用も可能なことが示唆された.
著者
重島 晃史 藤原 孝之 小駒 喜郎 大倉 三洋 中屋 久長
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 = The journal of Japan Academy of Health Sciences (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.25-30, 2009-06-25

本研究の目的は歩容の対称性に関してどのパラメータを観察・分析するべきかを検討し,観察による歩行分析の基礎データとすることである。本研究の対象者は健常成人女性9名であった。対象者は10m歩行路を快適速度で歩いた。両下肢の歩幅,立脚時間,遊脚時間の対称性を検討するため,三次元動作解析装置にてデータの収集及び解析を実施した。統計学的解析では,対応のあるt検定,ピアソンの積率相関係数,対称性指数を用い,対称性の程度を検討した。左右差の検討の結果,歩幅,立脚時間,遊脚時間には有意な左右差は認められず,各パラメータは両側に強い相関関係を認めた。また,対称性指数は各パラメータ間で一致せず,立脚時間,歩幅,遊脚時間の順に小さかった。健常な歩容において,これらのパラメータは対称性が優れており,特に歩幅及び立脚時間は歩容の対称性を観察・分析する上で有用であると考える。今後,観察による歩行分析を確立するためにも,さらなる歩容変数の検討が必要である。
著者
坂上 昇 栗山 裕司 山崎 裕司 大倉 三洋 酒井 寿美 中屋 久長 山本 双一
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.13-17, 2003-03-31
被引用文献数
1

本研究の目的は,固定用ベルト付きハンドヘルドダイナモメーター(以下,HHD)を用いた等尺性足背屈筋力の測定方法を考案し,その測定方法による検者間再現性と検者内再現性について検討することである.対象は,健常成人22名(男性11名,女性11名)である.被検者の肢位は背臥位とした.センサーを足背の中足骨部に付属のマジックテープで固定した.そして,センサーが装着された固定用ベルトを,被検者の足底方向に位置し片膝立ち位となった検者の大腿部に巻き付けて固定した.測定は,各下肢に対して2回実施し,最大値を測定値として採用した.検者間再現性を検討するために,検者Aと検者Bの2名の理学療法士が等尺性足背屈筋力の測定を行った。また,検者内再現性を検討するために,検者Aが1回目の測定の数日後に,同一被検者に対して同一の測定を2回目として実施した.等尺性足背屈筋力値は,検者Aが17.25±3.44kg,検者Bが17.35±2.87kgであって,検者間級内相関係数は0.903と極めて良好であった.検者Aによる等尺性足背屈筋力値の1回目の値は17.25±3.44kg,2回目の値は17.84±2.73kgであって,検者内級内相関係数は0.872と良好であった.固定用ベルト付きHHDを用いた我々が考案した足背屈筋力の測定方法は,センサーの固定性が得られ,足背屈程度の筋力であれば高い再現性のもとで測定できることが示唆された.これにより,等尺性足背屈筋力を定量的に測定することができ,症例に対して有用な情報を即時に提供できるものと考える.