著者
畑尾 直孝
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究は,屋内外環境での自由な行動の実現を目指すパーソナルモビリティロボットプラットホームの研究の一環として行われた.本研究は,将来のパーソナルモビリティの普及による高齢者に対する"バリア"のない社会に向けた歩みに貢献するものである.採用第1年度の研究により,パーソナルモビリティによる歩行者の存在する屋内環境における自律移動機能,ならびにレーザーレンジスキャナなどを用いて障害物を識別し,パーソナルモビリティが危険な領域に進入しないように制御する操縦アシスト機能を実現した.今年度は,歩行者,自転車,自動車などが行き来する屋外環境において,より安全な自律移動のために有効な意味情報を付加した「セマンティックマップ1の構築システム並びにそれを用いた屋外自律移動機能を実現した.これにより,搭乗者が前述の操縦アシスト機能を用いて屋外環境を移動すると,そのセンサのログデータからパーソナルモビリティがマップを構築し,その道のりを自律移動で辿ることができるシステムが完成した.本研究では,従来の"空き領域""障害物領域"といった単純な情報だけのマップでは,パーソナルモビリティが辿っている道路の向き,歩道・車道の区別,分岐点の位置といった地理的情報,周囲の移動体の速度や頻度などの交通流情報,道路標識や通行可能方向指示記号などの記号的情報を付加した「セマンティックマップ」をロボットが自動的に取得する.このシステムの実現のための要素技術として,上下にレーザーレンジスキャナをスイングすることで3次元地形情報を取得し,そのデータから大規模な屋外トポロジカルマップを構築する手法や,水平に固定したもう1台のレーザーレンジスキャナを用いた自動車,歩行者,自転車などの移動物体の検出,位置・速度推定,識別を行う手法などを開発した.