- 著者
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留守 卓也
中山 栄一
高山 直秀
- 出版者
- 日本小児耳鼻咽喉科学会
- 雑誌
- 小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
- 巻号頁・発行日
- vol.33, no.1, pp.42-47, 2012 (Released:2012-12-28)
- 参考文献数
- 14
- 被引用文献数
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UNAIDS(国連合同エイズ計画)によると2009年に新たに世界で発生した母子垂直感染例は37万人と推定されており,日本では現在累計51人となっている。今回我々は反復性中耳炎を契機に発見された HIV 母子垂直感染の 5 歳男児の症例を経験した。患児は小児の HIV 感染における CDC(米国疾病予防管理センター)分類にて A2 象限と認定され HAART(Highly Active Anti-Retroviral Therapy)導入の適応となった。HAART 導入に伴い,HIV–RNA 数は急激に減少し,それに伴い反復性中耳炎の罹患回数も減少した。 小児の中耳炎と HIV 感染についての文献的考察では,HIV 感染児においては高率で中耳炎の合併を認めるという報告や,HAART 導入によって中耳炎の発症が予防されたという報告を認める。今回の症例でも,HAART 導入後に明らかに反復性中耳炎の発症が抑制されており,これらの報告を裏付ける結果となった。 今回の経験から,難治性の小児反復性中耳炎に出会った場合は,HIV 母子垂直感染について考慮に入れるべきであると思われた。