著者
畠山 毅一郎
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会誌 (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.407-417, 1994

1980年に制定された, 有害物質による汚染 (主として土壌汚染) の浄化を規定する法律として世界で最も厳しいといわれる米国のスーパーファンド法は, 1986年の改正を経て現在に至っているが, 浄化にあたりその基金を使用する権限が1994年9月30日をもって切れる。<BR>同法は過去に汚染されたサイトの浄化を主たる目的としているため, 浄化責任分担に関する訴訟が多発し, 浄化関連費用の高騰の大きな一因となっている。さらには, 浄化プロセスが複雑であることや, 浄化基準が暖昧であることなどから, 莫大な費用が掛けられているにも関わらず, 同法の成果はほとんど挙がっていない。こうした状況を受けて, 1994年2月にクリントン政権がその改正法案を議会に提出した。<BR>本稿では, スーパーファンド法の概要を簡単に解説し, これまでの浄化実績などをもとに効率が上がらない背景を説明する。また, 同法の政府改正法案原案の概略を紹介する。<BR>*なお, 上記法案は, 本稿校正中の1994年10月8日の第103議会閉会をもって廃案となった。11月8日の米国中間選挙で共和党が勝ったことにより, スーパーファンド法改正の今後の動向が注目される。ただ, 現時点でスーパーファンド法改正に対する米国環境保護庁 (EPA) の基本的姿勢を知っておくことは重要であると考える。