- 著者
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畠山良己
- 出版者
- 日本水産工学会
- 雑誌
- 水産工学 (ISSN:09167617)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.2, pp.111-119, 1992-03
- 被引用文献数
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水中においては、光や電波に比べ音は減衰が少なく広範囲に到達するので、魚への刺激として音は有効な手段である。魚自身も水中音を発生し、敵を威嚇したり、同種の魚が相互認識しあったり、仲間に危険信号を送ったりすることが知られている。また、漁師達は科学的裏付けが無くても自分達で創意工夫を重ね、いろいろな方法で音を発生し、魚を誘致したり威嚇したりして効率良く漁獲している。最近では大分県や長崎県などでマダイを音響馴致し、放流後大きく育ったマダイの再補率を向上させる事業が大規模に行われている。世界的には30種位の魚の聴覚特性が測定されているが、日本の水産業にとって有用な魚種のデータは少ない。魚の生理や感覚に関する参考書には聴覚の記述があるが、どれも一般的な説明で参考文献も古く有用とは言えない。今回は魚の一般的な聴覚特性については簡単に触れるにとどめ、マスキング・方向認知能力・周波数弁別能力など特殊で重要な聴覚特性について詳しく述べ、それらの応用問題として海洋牧場における音の有効範囲を検討することにする。