著者
當舍 夕希子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.223, 2020-05-01 (Released:2020-05-01)

2020年5月号の特集は「個人情報とサイバーセキュリティ」です。我々がこの社会で活動するうえで,インターネット上に存在する情報は切っても切れない存在です。そして,その情報には様々な形で個人に関する情報が含まれています。我々はインフォプロとしての職務でも,プライベートで利用するSNS等のウェブサービスでも自他を問わず個人に関する情報に接し,日常会話においても「個人情報」という言葉を何気なく用いている場面には,それなりの頻度で出会うように思います。しかしながら実際のところ「個人情報」とは何なのでしょうか。漠然とした認識と不安を抱きながら,「個人情報」を語っていることが多いように感じます。本号では,個人情報とサイバーセキュリティをテーマに特集をお届けいたします。インターネット上の情報を扱ううえで問題となりうる個人情報とは何か,そしてその情報をどのように守っていけばよいのか,本特集を通じてご紹介できればと考えております。まず,慶應義塾大学の新保史生氏より,個人情報に関する法制度の変遷を概説いただきました。国内の今に至る法制度の整備の変遷に加えて,2018年にEU加盟国への適用が開始されたGDPR(一般データ保護規則)の内容や意義についても概説いただいております。次に,弁護士の数藤雅彦氏から,インターネット上の個人情報に係るトピックとして「肖像権」についてご執筆いただきました。気軽にインターネットに画像をアップロードできる現在,「肖像権」は誰にとっても身近なものとなっています。本特集では「肖像権」を考えるうえでの判断ポイント等について判例をもとに説明いただきました。続いて,内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター(所属は2020年3月時点)の蔦大輔氏からは,サイバーセキュリティの分野における情報共有の体制について,サイバーセキュリティ協議会及びその他の組織の活動をもとにご説明いただきました。情報通信研究機構サイバーセキュリティ研究室の井上大介氏からは,サイバー攻撃の動向として,近年のセキュリティ事案並びに,ダークネットの観測を行うNICTER及び,国内のIoT機器の調査と利用者への注意喚起を行うNOTICEについてご紹介いただきました。奈良先端科学技術大学院大学の油谷曉氏からは,大学という一つの組織におけるセキュリティの確保について具体的にご紹介頂きました。多岐にわたる本分野のうち取り上げられたトピックは少しではありますが,いずれも社会で活動するうえで多かれ少なかれ関わりのある,興味深い内容となっております。また,期せずしてでありますが現在国内外を騒がせている新型ウイルスを受けたインターネット利用の変化とも関連する特集となりました。本特集が皆さまにとって,より安心できる,自由なインターネットを使った活躍への一助となることを祈ります。(会誌編集担当委員:當舍夕希子(主査),大橋拓真,寺島久美子,久松薫子)
著者
當舍 夕希子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.225, 2019-06-01 (Released:2019-06-01)

2019年6月号の特集は「地理空間情報と地理情報システム(GIS)」です。地理空間情報とは,空間上の特定の地点・区域の位置を示す情報及び,それに関連付けられた情報のことであり,地理情報システム(Geographic Information Systems:GIS)は,この地理空間情報を電子的に処理する技術やシステムを指します。地理空間情報の集合ともいえる「地図」は,我々の生きるこの世界を的確に表現することのできる,とても便利なツールです。従来,紙として存在した地図は,近年その姿をデジタルへと変え,いつでも好きな時に確認できる身近な存在として,自分の現在位置から目的地までの道順を確認するような日常動作から,統計や歴史資料,災害記録等の多様なデータの可視化まで,活躍の場を広げています。弊誌においても,2009年に刊行した59巻11号の特集「歴史地理情報システムの活用」では,地理情報の歴史的分析についてご紹介しました。今号では,地理空間情報の収集・提供や,GISを使った様々なデータを“見せる”取り組みについて取り上げ,地理空間情報とGISの持つ可能性を考えたいと思います。まず総論として,瀬戸寿一氏(東京大学空間情報科学研究センター)に,地理空間情報とGISについての基本的な知識と,日本における位置づけや発展について概説いただきました。続いて,ウェブ地図の提供事例として,国土地理院 地理空間情報部 情報普及課より,国土地理院が提供する「地理院地図」の機能と特徴,活用事例についてご紹介いただきました。地理空間情報の収集共有事例としては,飯田哲氏(一般社団法人オープンストリートマップ・ファウンデーション・ジャパン)から,誰もが参加可能なウェブ地図を作る取り組みであるOpenStreetMapをご紹介いただきました。また,実際にGISを用いたウェブサービスとして,羽渕達志氏(一般財団法人日本統計協会)及び駒形仁美氏(独立行政法人統計センター)から,政府統計の総合窓口e-Statの一部である「地図で見る統計(jSTAT MAP)」を,鈴木比奈子氏(国立研究開発法人防災科学技術研究所)から,過去1600年分の災害事例を地図上で可視化する「災害年表マップ」をご紹介いただきました。今回ご紹介する事例は,いずれもインターネット環境さえあれば,誰でも容易に利用又は参加できる取り組みです。是非,お手元の端末からサービス画面をご覧いただき,実際に触ってみてください。内容や目的は多様ながら,いずれも地理空間情報とGISに関する興味深い取り組みであり,皆様とも何かしら関わりがあるのではないかと思います。本特集が皆様にとって地理空間情報やGISの活用への端緒となれば幸いです。(会誌編集担当委員:當舍夕希子(主査),久松薫子,古橋英枝,光森奈美子)