著者
力石 國男 登城 ゆかり
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.567-580, 2004-09-15 (Released:2010-02-05)
参考文献数
15

気象庁のアメダスによる1980~97年(85年と95年を除く)の厳寒期(1月・2月)の気象観測データ(3時間毎のデータに編集)を解析して,横手盆地の降雪特性および降雪機構を調べた.横手で3時間降水量が3mm以上の強い降雪がみられるのは,横手で無風の場合が約40%,北西寄りの季節風の場合が約35%である.無風の状態は季節風が弱くかつ陸風が弱い夜間に発生する.このとき日本海沿岸では2m/s前後の非常に弱い北西風であり,横手盆地周辺の谷間や山間部でも無風に近い状態となる.横手だけでなく秋田県南部の広い範囲で強い降雪が観測される.これは日本海からの弱い季節風が大気下層の冷気の上を上昇することにより雪雲を発生させるためであると考えられる.一方,比較的強い季節風が横手盆地方面に向けて収束し,風下の山脈を越えるときにも,横手で風が弱まり,強い降雪が観測される.この場合は,横手の風が弱まるほど盆地内の降水強度が増す傾向があり,発生時刻は昼夜を問わない.横手盆地の降雪特性を旭川・新庄・十日町の降雪特性と比較して,内陸盆地の降雪機構について考察した.