著者
力石 國男 蓬田 安弘
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.773-784, 2006-10-31
参考文献数
27
被引用文献数
2

アメダスデータと高層気象観測データ(期間:1992〜2001年)を解析して,北海道十勝平野の局地的強風である十勝風の特性と発生機構を考察した.十勝風の発生頻度は初冬の11・12月と初春の3・4月に最も高く,最大瞬間風速が15m/sを超える日は月に5〜7日である.総観場の気象条件を調べると,十勝風は北海道東方に低気圧があり札幌上空に強い北西風が吹き込むときに発生している.また札幌では09時段階で大気下層に混合層が発達している.平均的な十勝風には正午過ぎに最も強く夜間に収まるという日変化が見られる.風は北西方向にある狩勝峠方面から吹き,08時頃から急激に十勝平野全域で強まる.また,風速は風下に向かって次第に増加している.一方,帯広では風が強い日ほど日照時間が長く,下層大気が不安定になっている.これらのことから,十勝平野では日中日射による対流が発生し,熱対流が上空の強風を下層に運ぶために地表で強い北西風が吹くと推測される.
著者
力石 國男 松田 秀一 道上 宗巳
出版者
東京大学
雑誌
東京大学海洋研究所大槌臨海研究センター研究報告 (ISSN:13448420)
巻号頁・発行日
vol.27, 2002-03-29

平成13年度共同利用研究集会「北太平洋北西部とその縁辺海の水塊変動と循環」(2001年8月21日, 研究代表者:岩坂直人)講演要旨Variations of water masses and circulations in the northwestern North Pacific and its marginal seas(Abstracts of scientific symposia held at Otsuchi Marine Research Center in 2000)
著者
力石 國男 登城 ゆかり
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.567-580, 2004-09-15 (Released:2010-02-05)
参考文献数
15

気象庁のアメダスによる1980~97年(85年と95年を除く)の厳寒期(1月・2月)の気象観測データ(3時間毎のデータに編集)を解析して,横手盆地の降雪特性および降雪機構を調べた.横手で3時間降水量が3mm以上の強い降雪がみられるのは,横手で無風の場合が約40%,北西寄りの季節風の場合が約35%である.無風の状態は季節風が弱くかつ陸風が弱い夜間に発生する.このとき日本海沿岸では2m/s前後の非常に弱い北西風であり,横手盆地周辺の谷間や山間部でも無風に近い状態となる.横手だけでなく秋田県南部の広い範囲で強い降雪が観測される.これは日本海からの弱い季節風が大気下層の冷気の上を上昇することにより雪雲を発生させるためであると考えられる.一方,比較的強い季節風が横手盆地方面に向けて収束し,風下の山脈を越えるときにも,横手で風が弱まり,強い降雪が観測される.この場合は,横手の風が弱まるほど盆地内の降水強度が増す傾向があり,発生時刻は昼夜を問わない.横手盆地の降雪特性を旭川・新庄・十日町の降雪特性と比較して,内陸盆地の降雪機構について考察した.
著者
阿部 修 力石 國男 石田 祐宣 小杉 健二 上石 勲 平島 寛行
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.513-518, 2007-07-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
5

2007年2月14日午前11時過ぎに八甲田山系前岳の北東斜面で発生した表層雪崩について,現地調査および周辺の気象・積雪観測からその発生要因を考察した.その結果,この雪崩は強風により生じた吹きだまりの一部が崩落した可能性があることがわかった.また,今回雪崩があった沢は,典型的な雪崩地形であることがわかった.
著者
佐藤 篤司 和泉 薫 力石 國男 高橋 徹 林 春男 沼野 夏生
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2005

日本各地に甚大な被害をもたらした平成18年豪雪について、本研究では、大気大循環場と降雪特性、積雪特性の広域分布と雪崩災害、生活及び建築関連雪害、予測技術と軽減方策の四つの研究課題を設定し調査研究を実施した。大気大循環の調査からは、寒気の南下は38豪雪に次ぐ規模であり、特に12月は冬季モンスーン指標が過去50年で最大となったこと、それには熱帯域の影響も示唆されることなどの特徴が明らかになった。その結果、1月初旬に既に最深積雪に近い積雪を各地で記録した。この時点の広域での積雪分布を調査したところ、新潟県上中越から長野、群馬両県境にかけての山間部を始め、東北、中部、中国地方でも特に山間地域に多量の積雪が集中していたことがわかった。山間地での降積雪は必然的に雪崩を誘発し、数多くの乾雪表層雪崩の発生をみた。本研究では死者の出た秋田県乳頭温泉での雪崩を始め、多くの現地調査を行いその発生要因を調査した。また、広域の一斉断面観測により、早い時期からの積雪増加が高密度で硬い雪質をもたらしたことが観測され、それが生活関連雪害にも反映したことが推測された。生活関連雪害では、死者(交通事故を除く)の圧倒的多数(3/4)は雪処理中の事故によるものであった。その比率は56豪雪時(1/2)と比べて増加していること、多くは高齢者で全体の2/3をしめ、70歳代が群を抜き、高齢者が雪処理に従事せざるを得ない状況などが読み取れた。また、56豪雪と比べて家屋の倒壊による死者が多く、老朽家屋に高齢者が住んでいて被害に遭遇するという構造がうかがえた。さらに本研究では、積雪変質モデルを使った雪崩危険度予測を行い、実際の雪崩発生と比較検討するとともに雪崩の危険性によって長期間閉鎖された国道405号線に適用する試みや冬季のリスクマネジメントに関する調査等を実施し、雪氷災害の被害軽減に有効な手法についての研究も行った。
著者
力石 國男
出版者
東京大学
雑誌
東京大学海洋研究所大槌臨海研究センター研究報告 (ISSN:13448420)
巻号頁・発行日
vol.27, 2002-03-29

平成13年度共同利用研究集会「降水システムと降水変動」(2001年8月23日, 研究代表者:渡辺明)講演要旨Variation of precipitation and rainfall system(Abstracts of scientific symposia held at Otsuchi Marine Research Center in 2000))
著者
荒木 喬 今村 暁 力石 國男
出版者
東京大学
雑誌
東京大学海洋研究所大槌臨海研究センター研究報告 (ISSN:13448420)
巻号頁・発行日
vol.27, 2002-03-29

平成13年度共同利用研究集会「降水システムと降水変動」(2001年8月23日, 研究代表者:渡辺明)講演要旨Variation of precipitation and rainfall system(Abstracts of scientific symposia held at Otsuchi Marine Research Center in 2000))
著者
力石 國男 遊馬 芳雄 荒木 喬 佐藤 清一 道上 宗巳 児玉 安正
出版者
弘前大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1990

本研究では雪情報システム,各種気象観測機器,レ-ザ-等による降雪観測と併せて,既存のアメダスデ-タ,高層気象デ-タ,衛星画像などの解析を行った.このうち観測的研究については現在まだ実施中であるので,その他の解析によって得られた研究成果を以下に列挙する.(1)津軽地方の降雪と風向との密接な関係が明らかになった.例えば,鰺ケ沢の風向が南西の場合には津軽半島中部・北部に,西風の場合には五所川原,青森,野辺地を結ぶライン上に,北西風の場合には津軽平野中部・南部に多量の降雪が観測される.これらはいずれも局地的な風の収束帯を伴っている.(2)青森市内北西部の降雪は南部とかなり異なった降り方をしている.南部の降雪量は気温だけでなく気温の高度差(大気の不安定度の指標)と非常に良い相関があり,気温の高度差が降雪量予測のための重要なパラメ-タ-であることがわかった.(3)12時間前までの高層気象デ-タ(秋田及びウラジオスト-クの気温,等圧面高度,気温の高度差など)を用いて,青森市の日降雪量の予測式を導いた.事後予測の精度は±11cmである.(4)秋田の9時および21時の高層気象デ-タを用いて地吹雪指数の予測式を導き,地吹雪の予報が高い精度で可能であることを実証した.(5)日本列島における冬季の降水量のメソスケ-ルの特性を調べ,日本海小低気圧と降水量との関係などを明らかにした.(6)岩木山麓における長年の積雪断面観測デ-タを整理して山地での積雪特性を明らかにするとともに,札幌,新庄,長岡,富山での積雪との比較研究を行った.