著者
白井 英子 小川 貴代 吉田 礼維子 山本 愛子
出版者
天使大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、食行動上のプロセスに障害がある在宅独居高齢者の食行動と食満足との関連性を明らかにし、さらに集団的介入を試み、その効果を質的に分析した。その結果、以下の事項が明らかになった。1.在宅障害高齢者の食行動は、入手行動では「自分で買い物をする」「買ってきてもらう」「野菜づくり」「買い物に行けない理由」「食材入手の要因」、調理行動では「自分でつくる」「つくってもらう」「自分でつくる意欲」「調理できない理由」「調理サポートの受けとめ」、摂食行動では、「自分の手で食べたい」「食事環境」「食べる理由」から構成されていた。2.食満足は「おいしい」「食べたい」「食の伝承」から構成され、食満足に影響する食行動の要素は、「自分の手で」「好きなもの」「食の情報」「味へのこだわり(自分の味・昔の味)」であった。3.食満足に影響する調理・摂食行動の要素は、「温かいもの」「食べたいとき」「誰かと食べたい」「外で食べたい」であった。これらの要素を充足する方法としてグループで調理をして一緒に食べる集団的介入(食事会)を実施した。その結果、食事会では、「みんなでつくる」「みんなで食べる」という共同作業と場の共有から「楽しい」「おいしい」体験が得られ、それらが「つくる意欲」に関連しており有効であった。さらに、定期的な開催の要望があり、生活の意欲にも影響を及ぼしていることが明らかになった。4.本研究の対象は、都市環境で生活している独居高齢者で厚生労働省生活自立度(寝たきり度)判定のJとAランクにある比較的障害が軽度である者であった。今後、障害の程度が重度である高齢者に対する食満足を高めるための介入方法の検討、在宅障害高齢者を取り巻く地域環境の差を考慮した高齢者の食生活の質を高める援助策を検討する必要がある。