著者
白倉 幸男
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.57-70, 1986-11-20 (Released:2009-03-01)
参考文献数
36

数理社会学の古典としてのSimon-Homansモデルは、本質的部分は図形による質的推論を用いる。Simonの方法では、より一般的な定式化を進めると2つの難点に直面する。「(1)システムは、2つの内生変数のみ限られる.(2)測定単位の影響を被る。」この難点は、Simon=Homansモデルに一貫した解析性がないことに起因する。 Simonの方法では、調整速度の概念により、多変数システムを2変数システムへ帰着させ、位相図を用いる。かつては、これ以外に、質的な推論を行う方法がなかった。この桎梏からSimon=Homansモデルを解放し、新たな解析的展開の方法を提示する。このために、Jeffries(1974)の二色点法と質的比較静学が用いられる。二色点法は、サイクルテスト、彩色テスト、マッチングテストからなり、質的安定性を識別する。Simonの定式化は、Homansのいう内部体系を充分に把握しない。それゆえSimon=Homansモデルは、質的安定でない。Homansの下位モデルである南洋諸島の呪術と不安の相互連関は、飽和性の想定により集団の安定を保証する。Homansの小集団論の一般化の可能性をあわせて指摘する。
著者
白倉 幸男 与謝野 有紀
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.2_37-2_54, 1991-11-01 (Released:2009-03-31)
参考文献数
7
被引用文献数
1

本研究では、Fararoの公理をもとに、階層認知と階層帰属意識の問題について数学的な定式化を行ない、理論展開する。ここでは、次の点を明らかにする。(1) 階層イメージの形成において、各人は自己の属するイメージ階層をもっとも少数派だと認知する。そして、自己の属する階層から離れるほど多数派になっていくと認知する。(2) また、次元もしくはランク数が増加するにつれて、ますます自己を少数派だと認知する。(3) イメージ階層分布は対称で上に凸である。(4) 階層システムにおいて次元数が増加するほど、階層帰属意識はより中レベルに集中する。(5) Fararoの公理を拡張し、スキャニング過程を一般化することによって、イメージ階層および客観階層における順位の一般式を明らかにする。(6) イメージ階層の順序の非保持性を「逆転現象」としてとらえ、その数理的なメカニズムを明らかにする。(7) そして、客観階層と主観的なイメージの間の乖離から生じる差異化と同質化のパラドキシカルな関係を明らかにする。