著者
林 直保子 与謝野 有紀
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.27-41, 2005 (Released:2005-08-26)
参考文献数
31
被引用文献数
6 6

高信頼者は低信頼者に比べ他者の信頼性の欠如を示す情報に敏感に反応するという小杉・山岸(1998)の結果を4つの研究で検討した。調査1では,小杉・山岸(1998)で用いられた一般的信頼感の指標が,一般的信頼感のレベルと他者の信頼性情報への反応パターンの間の関係を検討するための適切な指標となっていなかった点を指摘した。調査1の結果に基づき,2つの実験とひとつの郵送調査では,一般的信頼感として異なるものを用いた。結果は,低信頼者が他者のポジティブ人格情報に敏感に反応し,対象となる人物を信頼するようになることを示していた。3つの研究から,高信頼者と低信頼者は対称な反応パターンを有しており,いずれも社会的な機会を拡大するという点で適応的であることが示唆された。
著者
林 直保子 与謝野 有紀
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.27-41, 2005
被引用文献数
6

高信頼者は低信頼者に比べ他者の信頼性の欠如を示す情報に敏感に反応するという小杉・山岸(1998)の結果を4つの研究で検討した。調査1では,小杉・山岸(1998)で用いられた一般的信頼感の指標が,一般的信頼感のレベルと他者の信頼性情報への反応パターンの間の関係を検討するための適切な指標となっていなかった点を指摘した。調査1の結果に基づき,2つの実験とひとつの郵送調査では,一般的信頼感として異なるものを用いた。結果は,低信頼者が他者のポジティブ人格情報に敏感に反応し,対象となる人物を信頼するようになることを示していた。3つの研究から,高信頼者と低信頼者は対称な反応パターンを有しており,いずれも社会的な機会を拡大するという点で適応的であることが示唆された。<br>
著者
与謝野 有紀 林 直保子
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.73-104, 2018-03-31

本稿では、絵画鑑賞のために美術館に行くという行為を大衆的な贅沢消費行為として位置づけ、美術鑑賞後の感想や一般的な美術鑑賞態度に関するデータから、美術鑑賞行為の類型の析出を試みた。ここで用いたものと同一のデータから、林・与謝野(2017)は、共分散構造分析をもちいて、美術館に行く人々がいくつかの類型に分けられる可能性を指摘しているが、その分析手法では類型を直接に識別することはできない。ここでは、クラスタ分析と潜在クラス分析という異なる分析視野をもった手法を並行で用い、計量社会学的にこの課題にアプローチした。クラスタ分析では、感想について2 つのクラスタが、態度については6つのクラスタが析出された。また、潜在クラス分析では、感想、態度ともに3つの潜在クラスが識別された。さらに、それぞれの類型に属する要因を、性別、年齢、美術館に行くきっかけ、他者に話す程度、メディアや権威への追従傾向を説明変数とするロジスティック回帰分析および回帰分析で検討した。これらの検討の結果、クラスタ分析と潜在クラス分析の両者で、「積極的評価型」と「消極的評価型」の二つの類型が共通に析出された。さらに、態度に関する潜在クラス分析の結果からも、感想と対応するような「能動的鑑賞型」と「受動的鑑賞型」の二つの類型が析出された。また、「積極的評価型」、「能動的鑑賞型」の類型の人々は、要因分析の結果、大衆的贅沢消費をしている人々と見做しうる特徴を示した。一方、「消極的評価型」、「受動的鑑賞型」の人々では、大衆的贅沢消費や誇示的消費概念だけでは理解することが難しく、その行為の背後にある意図の解明が今後の課題となっている。
著者
与謝野 有紀
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.24, pp.191-205, 1996-03

本研究の目的は、郵送調査の回収率をめぐるいくつかの問題に実証的な検討を加えることである。第一は、郵送調査において回収率を上昇させるといわれるテクニックの検討であり、ここでは特に、「返信用封筒への切手の貼付」および「督促ハガキの送付」の効果について検討した。第二は、調査票回収にみられるパターンの同定であり、大きく特徴の異なる二地域(都市一農村)における、回収パターンの類似性の有無を問題にした。第一の点に関しては、「切手貼付」が欧米の研究で示されている効果を持たないこと、その一方、督促ハガキ送付の効果が大きいことを示した。後者に関しては、特徴の異なる二地域においても、回収のハザード率には同型のパターンがあり、回収率の差はこのパターンの単純な比例関係の反映であることを明らかにした。ハザードおよびハザード問の関係の同定には、イベントヒストリー分析を援用した。
著者
西田 春彦 長谷川 計二 与謝野 有紀
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.23, pp.p227-245, 1995-03

北海道・青森県・福島県・香川県・愛媛県・佐賀県・長崎県・熊本県の1990年の農業集落の特性を計量的に明らかにすることが主目的である。すでに、1990年の全国標本(3%の無作為抽出標本4049集落)、近畿2府4県(京都府、大阪府、滋賀県、兵庫県、奈良県、和歌山県)、東北4県(岩手県、宮城県、秋田県、山形県)と新潟県の農業集落カードの分析を済ませているので、これらと今回の分析結果をくらべることで、北海道および上記諸県の農業集落の特性をより明らかにできると考えられる。
著者
鹿又 伸夫 与謝野 有紀 平田 暢 野宮 大志郎 織田 輝哉 稲葉 昭英 太郎丸 博 高瀬 武典
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

1.異なる分野の調査データに適用するという研究目的については、歴史社会学、社会運動論、組織社会学、社会心理、社会行動などにかかわるデータの分析を行った。具体的には、農民暴動、ボランティア団体、社会的属性と意識、援助行動、携帯電話への不快感、出産意向などの分析をおこない、ブール代数アプローチが多様な分野およびテーマに応用可能であることを示した。2.調査方法の異なるデータへ適用するという研究目的については、事例データのみでなく、歴史的資料データ、既存データのメタ分析、クロス表データ、ヴィネット調査データ、手紙データなど多様な調査データへの応用方法を提示し、ブール代数アプローチを様々な調査データへ応用可能にした。3.理論の定式化および理論比較への適用という研究目的については、演繹的に理論モデルを構築する手法によって、役割概念を理論的に再定式化する成果が得られた。そこでは、役割の階統性・可視性による役割構造分析という、役割理論にたいする新たな分析を提示した。4.数理モデルとして拡張するという研究目的については、論理演算の明示化、確率モデルとの比較、真理表データの2値化基準の検討などを行い、数理モデルとして拡張していくための基礎的検討を行った。これらでは、データの多様性の欠如や、矛盾のある行などの方法論的問題にたいする対処策を提示した。以上のように本研究では、方法論的な基礎的検討(上記4.)、発展的応用方法の開発(上記2.および3.)、そして実質的研究への応用(上記1.)を行った。とくに実質的研究へ応用にかんしては、意識や行動における主観的論理や主観的状況定義にブール代数分析が有効であることがわかった。
著者
与謝野 有紀 高瀬 武典 安田 雪 高坂 健次 草郷 孝好
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、自殺、犯罪率と社会関係資本、不安感の関係を解明するために、兵庫県下における1800名を対象とした面接調査を実施し、9区市町より1080票を回収した。この調査データと、自殺、犯罪率の公開されたデータとの地域比較から、以下が明らかになった。1)自殺は生活満足、サポートネットワーク、近隣への信頼と関係している。2)生活満足、サポートネットワーク、近隣への信頼の規定因は、人口によって大きく異なる。3)都市部では経済要因の影響が強く、人口規模が小さいほど近隣関係が強く影響し、因果関係は複雑化する。
著者
与謝野 有紀 林 直保子 都築 一治 三隅 一百 岩間 暁子 佐藤 嘉倫
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、経済資本、人的資本、文化資本に続く第4の資本としての社会関係資本の形成プロセスと機能について、社会的諸資源、近隣ネットワークや社会参加といったライフスタイルとの関連で理論的、実証的に明らかにしようとするものである。手法としては、質問紙調査、実験、コンピュータ・シミュレーション、フィールドワークをもちいた。また、2004年1月に面接調査法による調査を行い、ランダムにサンプル1000ケースに対して707ケースの回収をみた。日本での社会関係資本に関する本格的な面接調査は本調査が最初であり、日本の社会関係資本の状況を知る上での基礎データを提供するとともに、他の手法と補完しながら、以下の知見を最終的に得た。(1)社会関係資本の主要素として一般的信頼感に焦点を絞って解析した結果、信頼の生成メカニズムに関する現行の主要理論(「信頼の解き放ち理論」)のプロセスは、日本では一切確認されない(2)一般的信頼感の生成のためには、近隣ネットワーク、自主的な参加を前提とするクラブへの参加など、中間集団に対するコミットメント関係の形成が重要であり、これらの中間集団において醸成された個別的な信頼感は、他者一般に対する信頼感を形成する重要な基礎となる。また、この知見は共分散構造分析によるデータ解析とコンピュータ・シミュレーションによって同時に確認されており、頑健性が高い。(3)社会関係資本の形成のための投資と回収のプロセスを「社会関係基盤」概念を提出することで定式化し、さらに近畿調査データを用いて、この点を実証し、社会関係資本のセーフティーネットとしての機能と階層固定化機能の両者を確認した。(4)社会関係基盤については、フィールドワークからも投資、回収概念の高い適用可能性が確認された。これらの研究成果については、論文、著書のほか、日独先端科学技術会議(学術振興会・フンボルト財団共催)や本研究を中心に企画された第39回数理社会学会シンポジウムで報告されている。
著者
白倉 栄美 中井 美樹 与謝野 有紀 岩本 健良 米澤 彰純 岩間 暁子 持田 良和
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本年度は、中流階層を中心とした文化とライフスタイルの実態を解明するため、昨年度実施した川崎市における「ライフスタイルと文化に関する意識調査」(郵送質問紙調査)を中心に研究活動を推進した。研究経緯は、データ収集の最終調整を行い、データコーディング作業、データ入力を経てデータセットを作成、さらにデータクリーニング作業、コンピュータでのデータの統計解析、研究報告および検討会議を経て研究成果報告書を作成した。本研究の特徴および成果は、わが国で肥大化したといわれる中流階層〜上層の文化状況とライフスタイルとの関連を明らかにしたこと、また、中流階層の文化消費やライフスタイルの差異を個人的要因に求めるだけでなく、マクロな社会的要因である「場」の効果を測定したことにある。ライフスタイルと文化的諸実践に及ぼす社会階層の効果、家庭文化のの効果、学校効果、企業などの勤務先集団の効果等について検討した結果、主な知見として以下の点が明らかになった。1.諸文化活動を分析すると、学歴や職業などの社会的地位変数によって正統文化嗜好と大衆文化嗜好に差異がみられる。同じ社会階層であっても、出身家庭の文化資本および教育は正統文化活動を促進するよう作用する。2.正統文化と大衆文化の両方に関与する文化的オムニボア(cultural omnivore)が若い年齢層ほど増加し、社会全体としてみると文化的寛容性が高まる方向にある。3.男性と女性で文化消費に差があり、男性は大衆文化嗜好が強く、女性は正統文化嗜好が強い。4.女性の大衆文化化は、配偶者の文化消費傾向からの影響で始まる割合が多い。5.社会関係において文化的境界を用いる人は高学歴層に多く、文化資本と強い関連を示す。6.学校効果と企業効果が顕在化しやすい文化側面が存在する。
著者
与謝野 有紀
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.47-60, 1997-07-31 (Released:2016-08-26)
参考文献数
5

本研究の目的は、いわゆるOstrogorskiパラドックスの成立条件とこのパラドックスが生起する確率を求めることである。Ostrogorskiパラドックスは代議制に関わる投票のパラドックスであり、既存研究の中でこのパラドックス状況が生起する条件が検討されてきた。Rae and Daudtの定理はそのような研究によって得られた条件の一例であるが、この条件は現実的な場面でパラドックスが発生する可能性の有無を検討するには不十分なものであり、また、その識別力も必ずしも強いとはいえない。ここでは、投票結果に関する情報が得られている場合について、より識別力の強い条件を明らかにするとともに、どの程度このようなパラドックスが生じるのかについての確率を求めた。これらの分析から、主に以下の2点が明らかになった。第一は、ある党が100%の得票率で選ばれたとしても、Osrtogorskiパラドックスが生じる可能性を棄却できないことであり、また、第2は、パラドックスが生じる可能性が予想以上に高いことである。この点からも、住民投票の意義は簡単には否定できない。
著者
高瀬 武典 大西 正曹 与謝野 有紀 伊東 理 廣田 俊郎 森田 雅也 林 直保子
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

1.地域活性化モデルの精密化と汎用性の検討廣田は、上場企業を対象に「サービス価値向上のための戦略・組織、システムに関する質問票調査」を実施し、サービス業が地域社会・経済システムの活性化に対して果たす役割について「経済的貢献・自社へのフィードバック・問題状況への対応・社会的貢献」の類型化を行った。2.経済活性化の日英比較伊東は英国訪問調査により、1990年代以降英国における都市活性化の成功例である、各都市における小売業の「タウン・シティセンター」の動向実態と成功要因を研究し、大阪における小売業活性化に向けて、(1)地域都市圏全体での検討(2)きめ細かい土地利用計画(3)意思決定の仕方の再検討(4)計画・戦略の連携・調整の重要性などを指摘した。3.事業所統計調査結果の時系列比較高瀬は、過去の事業所組織と雇用関係の統計分析をすすめて、組織からの個人への束縛作用が、官僚制的な束縛と終身雇用的関係からの束縛という両方の点から見て軽減の傾向にあり、組織活性化を促進する背景的状況が生まれていることを明らかにした。4.経済活性化のための社会的基盤の検討与謝野と林は、全国の20歳以上を対象にした「信頼感」に関する調査結果をもとに、「信頼の解き放ち理論」の前提となる事実認識が支持を得られないものであることを示した。このことは、個人間競争を通じた経済活性化という、よく見受けられる政策的提案の妥当性に疑問を抱かせるものである。5.経済活性化の事例研究大西は、東大阪市の工場組織に関する実態調査をもとに活性化に向けた方策として中小企業の独立化、企業グループの形成、企業間ならびに官民連携による設備活用を提案した。6.活性化につながる人的資源の形成に関する研究森田は日米欧におけるエンプロイヤビリティの展開を比較し、人事制度に組み込むための条件について考察した。
著者
与謝野 有紀 大西 正曹 高瀬 武典 林 直保子
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、商店街等における信頼生成過程の詳細な聞き取りによって、組織に対する信頼感の人工的生成は困難であり、組織は信頼生成の必要条件としかならないことを明らかにした。また、地域メッシュ統計をもちいた全国の不平等分布の検討から、不平等が社会の正当性の承認を破壊し、一般的信頼の阻害要因となることを明らかにした。また、動画を用いた信頼性見極め調査システムの開発し、その過程で、特定の他者との関係が築かれると一般的他者への信頼性が上昇することを明証した。
著者
与謝野 有紀 熊野 建 高瀬 武典 林 直保子 吉岡 至
出版者
関西大学
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.293-317, 2006-03-30
被引用文献数
1

全国の地域通貨運営団体を対象に、目的・運営形態・効果・問題点等に関する郵送調査を実施した。調査対象によってさらに他の新しい対象を紹介してもらうスノーボール式サンプリングを行い、最終的に107の地域通貨からの回答を得た。単純集計結果をもとにすると、(1)地域経済の活性化を第一の目標にするものは全体の1割にみたず、コミュニティの再生などを目標においているものがほとんどである。(2)問題点としては、使用が一回かぎりの場合が多く流通しにくいことや、活動が広がらないことをあげているものが多いことがわかった。
著者
白倉 幸男 与謝野 有紀
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.2_37-2_54, 1991-11-01 (Released:2009-03-31)
参考文献数
7
被引用文献数
1

本研究では、Fararoの公理をもとに、階層認知と階層帰属意識の問題について数学的な定式化を行ない、理論展開する。ここでは、次の点を明らかにする。(1) 階層イメージの形成において、各人は自己の属するイメージ階層をもっとも少数派だと認知する。そして、自己の属する階層から離れるほど多数派になっていくと認知する。(2) また、次元もしくはランク数が増加するにつれて、ますます自己を少数派だと認知する。(3) イメージ階層分布は対称で上に凸である。(4) 階層システムにおいて次元数が増加するほど、階層帰属意識はより中レベルに集中する。(5) Fararoの公理を拡張し、スキャニング過程を一般化することによって、イメージ階層および客観階層における順位の一般式を明らかにする。(6) イメージ階層の順序の非保持性を「逆転現象」としてとらえ、その数理的なメカニズムを明らかにする。(7) そして、客観階層と主観的なイメージの間の乖離から生じる差異化と同質化のパラドキシカルな関係を明らかにする。