著者
湯浅 資之 白山 芳久
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.146-152, 2014 (Released:2015-01-13)
参考文献数
2

目的:人々の健康は経済・社会・政治・環境など様々な社会的決定要因(Social Determinants of Health)に影響を受けることから,健康問題の解決や健康格差の解消には保健医療以外の分野との幅広い協働が必要とされる.IUHPE世界大会2013において社会的決定要因について発表された演題を紹介し,研究の最新動向を紹介することを目的とする.方法:同大会において配布された演題抄録集から,「社会的決定要因(Social Determinants)」を主題に含む27の演題を分析の対象とし,英文抄録をもとにその研究内容を紹介した.結果:演題はエリア別で見るとアジア5ヵ国(17題),北中南米3ヵ国(5題),欧州4ヵ国(4題),そしてオーストラリア1題と計13ヵ国から報告があった.例えば,タイでは,社会的決定要因に対処するために,病院・行政・コミュニティから成る組織を形成し取り組んだ.カナダでは公衆衛生関係者,医師,疫学者,研究者らを全国から集めワークショップを積み重ね,対処の方法を模索した.フランスやオランダの事例では,公共政策を健康の社会的決定要因に配慮した政策へと転換するために,行政への継続的な働きかけや代替オプションの具体的提示が重要だと報告された.結論:健康の社会的決定要因介入の具体策として,立場が異なる人々による話し合いの積み重ねや,行政への継続的な働きかけ,エビデンスの蓄積の必要性が強調された.