著者
郷田 紀子 野間 翠 白山 裕子 岩見 加奈子 尾㟢 慎治 土井 美帆子
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.98-103, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
13

Cowden症候群/PTEN過誤腫症候群(Cowden syndrome/PTEN hamartoma tumor syndrome;CS/PHTS)は若年発症の悪性腫瘍と関連するPTEN病的バリアントに起因する希少疾患である.症例は24歳女性,血性乳汁分泌で乳腺外科を受診した.右乳癌と同時に両側乳腺多発腫瘤,左卵巣成熟奇形腫,および子宮内膜肥厚も診断された.BRCA1/2遺伝学的検査は陰性.乳癌術後にmulti gene panel testing(MGPT)を行いPTEN病的バリアント(p.Gly132Asp)が判明した.本診断を機に生来からの顔面の皮疹や精神発達の状態が随伴症状として注目された.以後,子宮内膜肥厚に対して積極的な生検を行い乳癌術後11カ月に異型増殖症を認め,子宮全摘術により子宮内膜癌IA期と診断した.有意な家族歴や臨床症状を満たさない潜在的かつ孤発性のCS/PHTSの患者にとってMGPTは診断の大きな助けとなり,多角的なサーベイランスにつながり得る.
著者
友野 勝幸 小島 淳美 香川 昭博 佐伯 健二 大亀 真一 白山 裕子 寺本 典弘 野河 孝充
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.104-108, 2014 (Released:2014-05-26)
参考文献数
15

背景 : 子宮頸部 “胃型” 粘液性腺癌は内子宮口付近で内向性に発育するため細胞採取が難しく, 高分化型が多いこと, HPV が陰性であることから, 早期発見の難しい腫瘍として認識されつつある.症例 : 59 歳, 3 経妊 3 経産, 無症状. 集団検診を定期受診しており, 今回子宮頸部腺癌細胞が検出されたため紹介受診した. 液状化検体の導入に伴い, 細胞採取器具は, 綿棒からサーベックスブラシに変更されていた. 当院での細胞診も腺癌であったが, コルポスコピーは不適例, 頸管内掻爬では微量検体のみ採取可能で, 異型腺管は認めるも浸潤腺癌の確定診断は困難であった. 経腟超音波断層法では, 内子宮口付近に約 1 cm の結節影が不明瞭に描出され, MRI/PET-CT においても再現性を認めた. インフォームド・コンセントのうえ, 円錐切除術を省略し, 神経温存広汎子宮全摘術を施行した. 摘出組織では肉眼的に明らかな腫瘤や潰瘍の形成を認めず, 顕微鏡的に頸部内子宮口側を主座とする胃型腺癌が確認された (pT1b2pN0cM0). 術後化学療法を追加し, 24 ヵ月無病生存している.結論 : 本例の異型腺管は被蓋上皮下で浸潤性に進展し, 綿棒による異型細胞の採取は難しいと考えられた. 細胞採取器具の変更が, 異型細胞検出につながった可能性がある.