著者
中野 嘉子
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.124-130, 2020-12-30 (Released:2020-12-30)
参考文献数
51

DICER1症候群は,乳幼児から若年成人を中心に様々な稀少がんを発症し得る遺伝性腫瘍である.2009年にDICER1の病的バリアントが家族性胸膜肺芽腫の原因であることが報告されて以来,卵巣性索間質性腫瘍,嚢胞性腎腫,子宮頸部の胎児型横紋筋肉腫などとの関連が報告されてきた.本稿では,DICER1症候群について,バリアントの特徴,関連する腫瘍を中心に,遺伝学的検査やサーベイランスの話題も含めて概説する.
著者
井本 逸勢
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.9-12, 2020 (Released:2020-08-24)
参考文献数
12

次世代シーケンサーによるゲノム解析技術の進歩により大規模ながんゲノム解析の知見が網羅的にカタログ化された結果,個々のがんで生じる遺伝子バリアントを網羅的に解析しその結果に基づいて治療選択を行うクリニカルシーケンスが,がんゲノム医療を牽引する力となっている.しかし,現在のクリニカルシーケンスは,治療薬にたどり着ける可能性の少ない発展途上の診断ツールである.次世代のがんの個別化治療には,様々なオミクス情報を基盤に,がんの分子分類や時間的・空間的不均一性,がん化の分子機序などの理解を深めることで,新たなバイオマーカー,治療薬,治療抵抗性や再発への対応法などの開発を進める必要がある.また,その普及には,低侵襲でリアルタイムな情報提供ツールであるLiquid biopsyの導入や検査コスト削減,治療選択の均てん化に有用な人工知能技術の活用も欠かせない.
著者
岩本 奈織子 鈴木 瑞佳 高木 康伸 堀口 慎一郎 有賀 智之
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.114-118, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
22

BRCA1/2遺伝学的検査は,PARP(Poly ADP-ribose polymerase)阻害薬のコンパニオン診断から遺伝性乳癌卵巣癌(hereditary breast and ovarian cancer;HBOC)の診断まで広く晋及しつつある.今後,BRCA1/2遺伝学的検査数の増加と,それに伴いBRCA1/2病的バリアント保持者の増加が見込まれる.BRCA1/2病的バリアント保持者では,年に1回の乳房造影MRI検査でのサーベイランスが推奨されている.MRIでのみ描出される病変に対しては,MRIガイド下生検(MRI-guided vaccuum-assist biopsy;MRI-VAB)が必要となるため,MRIを行う際にはMRI-VABが可能な施設との連携が望ましいとされている.しかしながら,実際に保険診療でMRI-VABを行っている施設は少ない.当院では2022年6月からMRI-VABを開始し,2023年5月までの期間においてMRI-VABを6例に施行した.患者の年齢は30~60代であり,半数は悪性であった.1例は,BRCA2病的バリアント保持者で非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ;DCIS)と診断されたHBOC症例であった.今回,われわれはMRI-VABの導入時に必要であった準備と過程を報告する.
著者
山本 阿紀子 河野 真 稲垣 夏子
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.109-113, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
20

2012年に提唱されたgastric adenocarcinoma and proximal polyposis of the stomach(GAPPS)は,家族性に胃底腺ポリポーシスを生じ,胃底腺を発生母地として胃癌を発症する.今回,GAPPSと診断した1 例を経験したので報告する.44歳女性.母親は30代に胃ポリポーシスを指摘されたが自然消失した.73歳で胃癌を発症した後,多発する胃底腺ポリープが出現した.家族歴を考慮し上部消化管内視鏡検査を施行すると,密生する胃底腺ポリポーシスと,ポリープとは異なる白色調隆起を認め,組織学的に腺癌と診断された.遺伝学的検査ではAPC遺伝子のプロモーター1B領域に病的バリアントを確認し,GAPPSと診断した.GAPPSの本邦からの報告は少なく予防的胃全摘術やサーベイランスの明確な基準はないため,今後も慎重な経過観察と継続した遺伝カウンセリングが必要である.
著者
國宗 勇希 岡山 直子 児玉 雅季 森重 彰博 中原 由紀子 深野 玲司 岩永 隆太 前田 訓子 岡田 真希 木村 相泰 福田 進太郎 末廣 寛 伊藤 浩史
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.104-108, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
11

Li-Fraumeni症候群(Li-Fraumeni syndrome;LFS)は,TP53の生殖細胞系列の病的バリアントによって発症する遺伝性疾患である.症例は3人の子の母親で,第1子はこれまでに5度悪性腫瘍に罹患し,第2子も骨肉腫に罹患している.母親は第3子(未発症)の出産9カ月後に肝臓の絨毛癌のため40歳で死亡している.第1子はTP53の生殖細胞系列病的バリアントが確認され,父親は当時未発症であったが,同じ病的バリアントの保因者であり,その後前立腺癌のため亡くなった.今回,第2子の結婚に伴う遺伝カウンセリングの過程で,LFS病的バリアント保持者の配偶者に妊娠を契機に絨毛癌が発生するとの報告を知り,20年前に亡くなった母親の組織標本から遺伝子検査を試みた.TaqMan Probe法で同じ病的バリアントを検出し,本症例もLFS病的バリアント保持者(父親)から,妊娠を契機に病的バリアントが胎児,胎盤を通じて何らかの機序で配偶者(母親)へ移行し,まれな肝臓の絨毛癌を発症し亡くなられたと推察した.
著者
郷田 紀子 野間 翠 白山 裕子 岩見 加奈子 尾㟢 慎治 土井 美帆子
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.98-103, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
13

Cowden症候群/PTEN過誤腫症候群(Cowden syndrome/PTEN hamartoma tumor syndrome;CS/PHTS)は若年発症の悪性腫瘍と関連するPTEN病的バリアントに起因する希少疾患である.症例は24歳女性,血性乳汁分泌で乳腺外科を受診した.右乳癌と同時に両側乳腺多発腫瘤,左卵巣成熟奇形腫,および子宮内膜肥厚も診断された.BRCA1/2遺伝学的検査は陰性.乳癌術後にmulti gene panel testing(MGPT)を行いPTEN病的バリアント(p.Gly132Asp)が判明した.本診断を機に生来からの顔面の皮疹や精神発達の状態が随伴症状として注目された.以後,子宮内膜肥厚に対して積極的な生検を行い乳癌術後11カ月に異型増殖症を認め,子宮全摘術により子宮内膜癌IA期と診断した.有意な家族歴や臨床症状を満たさない潜在的かつ孤発性のCS/PHTSの患者にとってMGPTは診断の大きな助けとなり,多角的なサーベイランスにつながり得る.
著者
木村 香里 平岡 弓枝 内藤 陽一 平田 真 吉田 輝彦 桑田 健
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.94-97, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
18

消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor;GIST)は希少がんであり,その一部ではSDHBに生殖細胞系列病的バリアントを認める.SDHBは,遺伝性パラガングリオーマ・ 褐色細胞腫症候群(hereditary paraganglioma/pheochromocytoma syndrome;HPPS)の原因遺伝子の一つとして知られている.今回の症例は30代男性で,胃GISTと診断され,手術検体の免疫染色にて,SDHB蛋白質消失を認めた.HPPS鑑別のため遺伝学的検査を実施し,SDHB病的バリアントを認めた.診療科横断的にHPPSサーベイランス体制を整え,GISTに対する通常診療に加え褐色細胞腫・パラガングリオーマ(pheochromocytoma/paraganglioma;PPGL)のサーベイランスを開始した.また,遺伝性であることの心理的負担があったため,フォローアップ遺伝カウンセリングを行った.若年発症GISTで免疫染色にてSDHB蛋白質消失の所見がある場合,HPPSの可能性を考え遺伝学的検査を検討することが有用である.また,サーベイランスの有用性に関するエビデンスの蓄積と継続した心理社会的支援が求められる.
著者
大髙 理生 中島 健 吉田 晶子 鳥嶋 雅子 川崎 秀徳 山田 崇弘 和田 敬仁 小杉 眞司
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.84-93, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
22

遺伝性腫瘍診療では,診断後発端者に血縁者への情報共有を推奨するが,困難な場合がある.欧米では受診勧奨の研究があるが,本邦の実態は不明である.2020年より遺伝性乳癌卵巣癌(hereditary breast and ovarian cancer;HBOC)は遺伝学的検査が保険収載され,血縁者への対応も求められる.本研究はHBOC患者血縁者への情報共有と受診勧奨の施設での課題抽出を目的とし,乳房悪性腫瘍の治療実績国内上位100施設を対象に質問紙調査を行った.初回調査で回答を得た44施設(44%)のうち5例以上のHBOC診断数の31施設を対象とし29施設(94%)から二次調査回答を得た.26施設(90%)で血縁者のリスク説明は実施だが,発端者家系に特化した資料配布は17施設(59%)で未実施であった.課題は,「未発症血縁者のサーベイランスが保険適用外」「血縁者と疎遠な関係性」であった.受診勧奨支援は施設間差を認め,その解決には多角的な検討が必要と考えられた.
著者
櫻井 彩乃 菅原 ますみ 後藤 景子 渡辺 基子 岡村 仁 北村 裕梨 中井 克也 飯島 耕太郎 岡崎 みさと 魚森 俊喬 崔 賢美 村上 郁 櫻井 晃洋 齊藤 光江 新井 正美
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.74-83, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
20

BRCA1/2遺伝子検査が保険収載後に,本検査受検を考慮した乳癌患者の実態調査を行った.順天堂大学医学部附属順天堂医院乳腺センターにて,保険適用でのBRCA1/2遺伝子検査を提案された外来通院中の乳癌患者31名(受検者29名,非受検者2名)を対象に,検査時と結果開示後に調査を実施した.BRCA1/2遺伝子検査の保険収載は受検を明らかに促進していた.同胞や子どもを心配し受検をした対象者がもっとも多く,受検者の90%以上が血縁者への情報伝達を予定していた.血縁者への情報提供やキャリア診断の遺伝カウンセリング体制も整備する必要性が示された.また病的バリアントが検出されなかった約半数の対象者でネガティブな情緒の変化である「総合的気分状態」の上昇がみられた.乳癌診療や遺伝カウンセリングにおいては,病的バリアント非保持者でも心理支援を考慮すべき対象者がいることが示された.
著者
古屋 充子 蓮見 壽史 矢尾 正祐
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-6, 2021-05-10 (Released:2021-05-13)
参考文献数
36

遺伝性平滑筋腫症腎細胞癌(hereditary leiomyomatosis and renal cell cancer; HLRCC)は皮膚平滑筋腫,子宮筋腫,腎細胞癌を三主徴とする遺伝性疾患である.20世紀前半から家族性発症の皮膚平滑筋腫に関する症例報告はあったが,1973年にReedらが常染色体優性遺伝性に皮膚平滑筋腫や子宮平滑筋腫(または子宮平滑筋肉腫)を発症する2家系を報告したことにちなんで ‘Reed症候群’と呼ばれた.2001年にはReed症候群家系における腎細胞癌発症が報告され,HLRCCの概念が形成されるようになり,2002年には責任遺伝子がクエン酸回路酵素のフマル酸ヒドラターゼ(fumarate hydratase; FH)であることが判明した.HLRCC患者における腎細胞癌は高悪性度で転移しやすく,AYA世代や未成年にも発症するため,集学的治療や家族ケアが必要となる.
著者
高山 哲治 五十嵐 正広 大住 省三 岡 志郎 角田 文彦 久保 宜明 熊谷 秀規 佐々木 美香 菅井 有 菅野 康吉 武田 祐子 土山 寿志 阪埜 浩司 深堀 優 古川 洋一 堀松 高博 六車 直樹 石川 秀樹 岩間 毅夫 岡﨑 康司 斎藤 豊 松浦 成昭 武藤 倫弘 冨田 尚裕 秋山 卓士 山本 敏樹 石田 秀行 中山 佳子
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.93-114, 2020 (Released:2020-09-25)
参考文献数
62

Cowden症候群/PTEN過誤腫症候群は,PTEN遺伝子の生殖細胞系列の病的バリアントを原因とする常染色体優性遺伝性の希少疾患である.消化管,皮膚,粘膜,乳房,甲状腺,子宮内膜,脳などに過誤腫性病変の多発を特徴とする.巨頭症および20歳代後半までに多発性皮膚粘膜病変を発症することが多い.ときに小児期に多発する消化管病変,自閉スペクトラム症,知的障害が診断の契機となる.また,がん遺伝子パネル検査によって診断される可能性がある.乳癌,甲状腺癌,子宮内膜癌,大腸癌,腎細胞癌などの悪性腫瘍を合併するリスクが高く,適切なサーベイランスが必要である. 本診療ガイドラインでは,小児から成人にかけてシームレスに,正確な診断と適切な治療・サーベイランスが行われるよう,基本的事項を解説し,4個のクリニカルクエスチョンと推奨を作成した.
著者
松本 主之 新井 正美 岩間 達 樫田 博史 工藤 孝広 小泉 浩一 佐藤 康史 関根 茂樹 田中 信治 田中屋 宏爾 田村 和朗 平田 敬治 深堀 優 江﨑 幹宏 石川 秀樹 岩間 毅夫 岡﨑 康司 斎藤 豊 松浦 成昭 武藤 倫弘 冨田 尚裕 秋山 卓士 山本 敏樹 石田 秀行 中山 佳子
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.79-92, 2020 (Released:2020-09-25)
参考文献数
52

若年性ポリポーシス症候群は全消化管に過誤腫性ポリープである若年性ポリープが多発する,希少疾患である.SMAD4あるいはBMPR1A遺伝子の生殖細胞系列バリアントが原因として報告されている.約75%は常染色体優性遺伝形式を示すが,約25%は家族歴のない孤発例である.また,がん遺伝子パネル検査によって診断される可能性がある. ポリープの発生部位により全消化管型,大腸限局型,胃限局型に分けられ,胃限局型ではSMAD4の病的バリアントを原因とすることが多く,胃癌のリスクが高い.また,SMAD4の病的バリアントを有する症例では,遺伝性出血性毛細血管拡張症を高率に合併し,心大血管病変の定期検査も考慮する. 本診療ガイドラインでは,小児から成人にかけてシームレスに,正確な診断と適切な治療・サーベイランスが行われるよう, 基本的事項を解説し,3個のクリニカルクエスチョンと推奨を作成した.
著者
山本 博徳 阿部 孝 石黒 信吾 内田 恵一 川崎 優子 熊谷 秀規 斉田 芳久 佐野 寧 竹内 洋司 田近 正洋 中島 健 阪埜 浩司 船坂 陽子 堀 伸一郎 山口 達郎 吉田 輝彦 坂本 博次 石川 秀樹 岩間 毅夫 岡﨑 康司 斎藤 豊 松浦 成昭 武藤 倫弘 冨田 尚裕 秋山 卓士 山本 敏樹 石田 秀行 中山 佳子
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.59-78, 2020 (Released:2020-09-25)
参考文献数
88

Peutz-Jeghers症候群は,食道を除く全消化管の過誤腫性ポリポーシスと皮膚・粘膜の色素斑を特徴とする希少疾患である.STK11遺伝子の生殖細胞系列の病的バリアントを原因とし,常染色体優性遺伝形式をとる.また,がん遺伝子パネル検査によって診断される可能性がある. 本症候群でみられる過誤腫性ポリープは小腸に好発し,ポリープが大きくなると出血,腸閉塞,腸重積の原因となる.初回の消化管サーベイランスは症状がなくても8歳頃を目安に行い,10〜15mm以上の小腸ポリープは内視鏡的ポリープ切除術を行う.消化管,乳房,膵,子宮,卵巣,肺,精巣などに悪性腫瘍の発生が認められ,適切なサーベイランスが必要である. 本診療ガイドラインでは,小児から成人にかけてシームレスに,正確な診断と適切な治療・サーベイランスが行われるよう, 基本的事項を解説し,4個のクリニカルクエスチョンと推奨を作成した.
著者
小峰 啓吾 石岡 千加史
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.13-17, 2020 (Released:2020-08-24)
参考文献数
7

進行がんの治療は免疫チェックポイント阻害薬などの新しいがん分子標的治療薬の開発により確実に進歩しているが,最近がんゲノム医療が臨床に導入され,いよいよ個別化治療の時代を迎えつつある.臨床研究中核拠点病院である東北大学病院は2017年に個別化医療センターを設置し,がん,生活習慣病や希少疾患のゲノム医療の開発・普及を推進している.また、本院と東北メディカル・メガバンク機構が協力して東北大学に指定国立大学の重点研究プロジェクトとして同年に設置された未来型医療創成センターの運営を開始し,ゲノム医療を含めた次世代医療開発へ取り組みを本格的に開始した.本院は2019年6月がんゲノム医療中核拠点病院に指定され,国内でのがんゲノム医療を中心的に牽引してくこととなった.臨床での運用については治療へのアクセスや二次的所見への対応など様々課題があるが,それらは少しずつ克服されている.