著者
吉国 好道 田上 八朗 白浜 茂穂 佐野 勉 井上 邦雄 山田 瑞穂
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.491, 1983 (Released:2014-08-20)
被引用文献数
2

正常人における夏冬の皮表角層の水分含有状態の変化を,身体22か所において, 3.5MHz 高周波伝導度測定装置を用いて測定した.夏季では,顔面と前胸部がもっとも高値を示し,また,そ径部も比較的高値であった.躯幹,四肢の値も決して低くはなかった.しかし,冬季には,顔面の数か所を除き,各部位の角層水分量は著明に減少し,躯幹,四肢ではより著明で,そのなかでも下腿外側での減少率がもっとも大であった.あわせて測定した角層の水分吸収能1)と水分保持能1)も,冬季には低下していたが,角層水分量の減少ほどに著明ではなく,冬季の角層水分量が減少する原因は,水分吸収能や水分保持能であらわされるような単なる角層機能の低下によるものではなかった.また,皮表脂質量の測定では,夏冬の季節的変化はほとんど認められず,正常人における冬季の角層水分量の減少に対する皮表脂質の関与は少ないと考えた.一方,冬季において water loss by evaporation (WLEv:発汗と,汗管を経ずに経表皮的に失なわれる水分をあわせて皮表に蒸散される水分21)と角層水分量との間に,正の相関関係を認めたことと,冬季の角層水分量は,躯幹,四肢の被覆部よりも露出部である顔面(多汗部)が高値であることより,大気中の水分の影響に加えて,生体側の要因 -WLEv ,すなわち発汗が角層の水分に大きく関与していると推論した.