著者
甄 雅賢 工藤 和浩 末武 茂樹 田上 八朗
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.649-652, 1994-07-01

正常角層は扁平な角層細胞が細胞間脂質を介してサンドイッチのように何層も積み重なってできた膜状物である.身体各部位における角層層数の違いを調べるために,皮膚疾患患者から得た正常部皮膚の凍結切片を用い1%サフラニン液で染色した後,2%KOH水溶液により角層を膨潤させ層数を数えた.角層が最も薄いのは男子の陰茎部で約6層,次いで眼瞼の約8層で,逆に最も厚いのは手掌と足蹠で40層以上であった.十分な標本数が得られた部位で年齢と角層層数の関係を検討したところ,頬部と眼瞼では年齢によって角層層数に違いはなかったが,下肢伸側では加齢に伴って角層層数の増加がみられた.腹部では逆に高年齢層のほうが角層層数が少なかった.また増殖細胞のマーカーであるPCNAに対するモノクローナル抗体を用いて表皮の増殖の程度を評価し,角層層数との関係を検討したが両者の問に相関は認められなかった.
著者
田上 八朗
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.445-450, 2005-05-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
32
被引用文献数
11

乾燥した地上に暮らす動物では, 生体組織に必須の水分が失われ乾燥により生命活動ができなくなることを防ぐため, 身体の表面に水も通しにくい防御構造, すなわちバリアの存在が必要である. 実際には生きた皮膚組織にも約70%の水分がなくてはならず, その表面を厚さわずか10〜20μのポリエチレンのラップのような薄い膜状構造物のバリア, すなわち角層(stratum corneum)がくまなく覆うことで, 環境への水分喪失が防がれている. 角層は皮膚の表皮を構成するケラチノサイト(keratinocyte)が少なくとも2週間かけて, ゆっくりと分化して, 無構造な1μ程の厚さしかない平たい角層細胞(corneocyte)に変わり, 緊密に積み重なってできあがったバリア機能の十分備わった構造をしている. 表皮, 真皮, 皮下組織からなる皮膚の組織の中では, 一般的には動物の皮膚から剥いで造られた革製品を見慣れているため「皮膚は生体を防御する革袋」, すなわち, 身体内部の筋肉, 骨, 内臓を包む一方, 環境からの機械的外力への防御をするという点で, コラーゲン繊維主体の結合組織である真皮がもっとも重要であるかのように思われやすいが, 生命保持という生存への根本的な必須条件からは, 皮膚表面のバリア機能の優れた角層を造る, 薄くて脆い表皮こそが, 最重要な組織である1).
著者
笹井 収 大越 賢一郎 田上 八朗
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.460-463, 2000

敏感肌用化粧品として開発されたスキンケア製品3種について, その安全性を確認するために, 乾皮症患者, 接触皮膚炎の既往をもつ者, アトピ-性皮膚炎患者, 光線過敏症患者の計67例を対象としたパッチテストを施行した。<BR>試験試料は, 美白美容液 (ノブホワイトニングエッセンスN), 保湿美容液 (ノブモイスチュアコンセントレイトN), 保湿パック (ノブモイスチュアパックN) の計3製品で, すべてasisにて, また対照として白色ワセリンおよび蒸留水を用いた。本邦基準に基づいて判定し, 須貝らの方法によって皮膚刺激指数を算出した結果, それぞれ, 8.2, 8.2, 3.7, 0.7, 2.2という値であり, 化粧品として本試験試料の安全性が確認された。
著者
工藤 和浩 吉村 達雄 田上 八朗
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.566-571, 1995-06-01 (Released:2011-07-20)
参考文献数
17
被引用文献数
2 2

2%ケトコナゾールクリームで脂漏性皮膚炎を長期治療したときの有効性, 安全性および有用性を検討した。外用方法は適量を被験部位に1日2回単純塗擦することとした。治験を実施した全7症例の最終全般改善度は, 治癒4例, 著明改善1例, 改善1例, 不変1例であり高い改善率(6/7, 86%)を示した。治療期間中, 副作用の発現や臨床検査値の異常変動は認められず, 本剤の安全性の高さを確認した。今回の報告症例は大学病院という施設の関係上少数ではあるが, 2%ケトコナゾールクリームは脂漏性皮膚炎の治療に有用な薬剤になり得るとの印象を得た。
著者
吉国 好道 田上 八朗 白浜 茂穂 佐野 勉 井上 邦雄 山田 瑞穂
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.491, 1983 (Released:2014-08-20)
被引用文献数
2

正常人における夏冬の皮表角層の水分含有状態の変化を,身体22か所において, 3.5MHz 高周波伝導度測定装置を用いて測定した.夏季では,顔面と前胸部がもっとも高値を示し,また,そ径部も比較的高値であった.躯幹,四肢の値も決して低くはなかった.しかし,冬季には,顔面の数か所を除き,各部位の角層水分量は著明に減少し,躯幹,四肢ではより著明で,そのなかでも下腿外側での減少率がもっとも大であった.あわせて測定した角層の水分吸収能1)と水分保持能1)も,冬季には低下していたが,角層水分量の減少ほどに著明ではなく,冬季の角層水分量が減少する原因は,水分吸収能や水分保持能であらわされるような単なる角層機能の低下によるものではなかった.また,皮表脂質量の測定では,夏冬の季節的変化はほとんど認められず,正常人における冬季の角層水分量の減少に対する皮表脂質の関与は少ないと考えた.一方,冬季において water loss by evaporation (WLEv:発汗と,汗管を経ずに経表皮的に失なわれる水分をあわせて皮表に蒸散される水分21)と角層水分量との間に,正の相関関係を認めたことと,冬季の角層水分量は,躯幹,四肢の被覆部よりも露出部である顔面(多汗部)が高値であることより,大気中の水分の影響に加えて,生体側の要因 -WLEv ,すなわち発汗が角層の水分に大きく関与していると推論した.
著者
小幡 正明 加藤 浩子 田上 八朗 原 捷之 福武 勝彦
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.1236-1240, 1985 (Released:2010-06-04)
参考文献数
6
被引用文献数
3

ニュートロジーナハンドクリーム (持田製薬株式会社) および市販ハンドクリーム3種の皮膚保湿能を評価する目的で, 3.5MHz高周波電導度測定装置を用いて, クリーム塗布前後の角層水分含有量, 水分吸収能, 水分保持能について試験検討を行った。その結果, ニュートロジーナハンドクリームは下記のような優れた保湿効果を示した。(1) ニュートロジーナハンドクリームは対照 (未塗布部位) と比較し, 約2倍の電導度の増加をもたらし, それは他のクリームと比較しても有意に高いものであった。(2) 水負荷試験において, ニュートロジーナハンドクリームは水分吸収をほとんど妨げず一方その水分を高いレベルで保持した。ニュートロジーナハンドクリームはハンドクリームとして望ましい保湿パターンを示し, 他の機会に私達が経験した外用剤も含め, 最も優れたものの1つであった。
著者
吉国 好道 田上 八朗 松本 吉郎 井上 邦雄 山田 瑞穂 佐野 勉
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.289-295, 1985 (Released:2010-06-04)
参考文献数
5

角層へ水分をいかに効果的に補うかを目的として, 種々の外用剤が開発されている。私たちは基剤の性質によって角層の水分含有量はどのように影響されるか, それはどのような機序によって水分含有量を増しているかについて検討した。単純に角層へ水分を与えることを目的とした場合, 白色ワセリンのような皮表に油膜を作る基剤が下方へ水分を貯留せしめることにより最も優れていること,/W型乳剤性軟膏の場合, 時によっては逆に皮表角層の乾燥を生じる可能性があることを示したO 。ストリッピングにより角層の水分含有量を立体的に解析したが, これは角層水負荷試験とともに, 外用剤の評価や病的角層の分析に役立つものと考えた。
著者
小澤 麻紀 田上 八朗
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.1, no.6, pp.418-423, 2002

アトピー性皮膚炎の患者20例を対象に, 黄色ブドウ球菌属等に対する抗菌作用を有するb-ツヤプリン (ヒノキチオール) 配合保湿クリーム (ヒノキAPクリーム) の有用性と安全性を検討した。ほとんどの症例で乾燥症状の改善を認めた。協力が得られた11症例についてはヒノキAPクリームと基剤のみの塗り分け試験を行い, 使用前後の角層機能と黄色ブドウ球菌数を測定した。角層機能は, どちらの側とも使用後に回復した。黄色ブドウ球菌数はヒノキAPクリーム使用側で減少する傾向がみられた。本試験品に起因する副作用は認められなかった。以上より, ヒノキAPクリームは保湿効果が高く安全性に優れ, 黄色ブドウ球菌が増悪因子のひとつであるとされるアトピー性皮膚炎の治療補助剤として有用であると考える。(皮膚の科学, 1: 418-423, 2002)
著者
小澤 麻紀 田上 八朗
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.1, no.6, pp.418-423, 2002 (Released:2010-08-25)
参考文献数
10

アトピー性皮膚炎の患者20例を対象に, 黄色ブドウ球菌属等に対する抗菌作用を有するb-ツヤプリン (ヒノキチオール) 配合保湿クリーム (ヒノキAPクリーム) の有用性と安全性を検討した。ほとんどの症例で乾燥症状の改善を認めた。協力が得られた11症例についてはヒノキAPクリームと基剤のみの塗り分け試験を行い, 使用前後の角層機能と黄色ブドウ球菌数を測定した。角層機能は, どちらの側とも使用後に回復した。黄色ブドウ球菌数はヒノキAPクリーム使用側で減少する傾向がみられた。本試験品に起因する副作用は認められなかった。以上より, ヒノキAPクリームは保湿効果が高く安全性に優れ, 黄色ブドウ球菌が増悪因子のひとつであるとされるアトピー性皮膚炎の治療補助剤として有用であると考える。(皮膚の科学, 1: 418-423, 2002)
著者
田上 八朗
出版者
日本香粧品学会
雑誌
日本香粧品学会誌 (ISSN:18802532)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.15-21, 2014-03-31 (Released:2015-04-18)
参考文献数
30
被引用文献数
1

The skin is covered by an extremely thin, soft but highly efficient barrier memberane, the stratum corneym (SC), which protects the underlying wet living cutaneous tissues from water loss but also from the penetration of injurious agents into the skin from the environment. Moreover, the SC can bind water efficiently to make our skin surface soft and smooth. However, recent improvement of our house-warming system has inevitably begun to induce a decrease in indoor humidity, facilitating the development of pruritic dry skin, xerosis, in those elderly individuals whose SC water holding capacity is poor, leading to the development of cracking in such dry SC and inducing an inevitable scratching behavior, which may allow even the penetration of large environmental protein antigens into the skin, and leading to the development of nummular eczema in a fashion similar to that observed in infants with ichthyosis vulgaris caused by filaggrin gene defect who tend to develop pruritic atopic dermatitis to such environmental protein antigens. Moreover, those with renal insufficiency or with diabetes mellitus also tend to develop severe xerosis. These pruritic xerotic changes are caused by the deficiency of so-called low molecular, natural moisturizing factor (NMF) composed of the amino acids derived from the proteolysis of filaggrin and sweat-derived lactic acid and urea. NMF plays an important role in the water-binding capacity of the SC, together with the intercellular lipids that are indispensable for the stratum corneum barrier function and hyaluronan secreted by keratinocytes. Because the deficiency of any of these substances in the SC tends to lead to the development of such pruritic dry skin, it is important to conduct daily skin care by using effective moisturizing agents whose efficiency is well proven scientifically with the in vivo high frequency instrumental measurements, as well as by clinical observation.