- 著者
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白石 学
由利 康一
根本 一成
山口 敦司
安達 秀雄
- 出版者
- 特定非営利活動法人 日本血管外科学会
- 雑誌
- 日本血管外科学会雑誌 (ISSN:09186778)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, no.1, pp.47-51, 2011-02-25 (Released:2011-03-29)
- 参考文献数
- 8
症例は84歳,男性.胸部CTで65 mm大の弓部下行大動脈瘤と診断された.手術ハイリスク症例であったために経過観察の方針となったが,翌年のCTで瘤径が70 mmと拡大し,ステントグラフト(SG)治療の適応と診断され,手術目的に入院となった.SGは左鎖骨下動脈起始部から第10胸椎レベルまで左鎖骨下動脈を閉塞するかたちで留置を施行.手術同日の夜間から左下肢の脱力が出現.脊髄虚血による麻痺を疑い緊急で脳脊髄液ドレナージ(CSF-D)およびメチルプレドニゾロン大量静注,その後メチルプレドニゾロン,ナロキソン持続静脈内投与を開始した.術後2日目頃より徐々に改善がみられ,術後6日目にはつかまり立ちで立位保持が可能となった.術後20日目には杖を必要とするも自力で歩行ができるまで改善した.術後CTでエンドリークはなく,左鎖骨下動脈の閉塞も確認された.SG術後の脊髄虚血に対しては早期にCSF-D,メチルプレドニゾロンおよびナロキソン投与が有効であることが示唆された.