著者
松井 藍子 大河内 彩子 田髙 悦子 有本 梓 白谷 佳恵
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.75-81, 2016

<p><b>目的:</b>発達障害児の母親が子育てにおいて肯定的感情を獲得する過程を明らかにし,母親への育児支援の示唆を得る.</p><p><b>方法:</b>A県で発達障害児をもつ親の会に所属している母親7人を対象に半構造化面接を個室で実施し,得られた逐語録から母親の子育てに対する思いに関する部分を抜き出し,カテゴリーを作成した.</p><p><b>結果と考察:</b>発達障害児をもつ母親は子どもの特性に気づき戸惑っており,受け入れにくさや不安を感じていたが,子どもについての模索や子育て仲間の獲得を経て納得や理解が始まり,子育て方法を見いだしたり子どもに期待したりすることへつながり,子育てを振り返り,気持ちの揺れを感じつつ,他の発達障害児やその母親にも目を向けることができていた.母親は子育てを模索することにより,子どもの特性の理解へとつながっていたため,母親に対して専門職からの今後を見通せるようなアドバイスの必要性が示唆された.また,母親は親同士の仲間とのつき合いを通してロールモデルに出会い,支え合うことで,自身がロールモデルとなる母親へと成長したと考えられるため,子育ての体験を共有できるコミュニティへつなぐための支援の必要性が示唆された.さらに母親は子どもを理解しつつも気持ちは揺れ動いており,子どもの発達や母親・家族の変化に応じた継続的な支援の必要性が示唆された.</p>
著者
有本 梓 伊藤 絵梨子 白谷 佳恵 田髙 悦子
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.21-32, 2020 (Released:2020-08-20)
参考文献数
43

目的:地区組織基盤の世代間交流プログラムを開発し,1年後の高齢者の健康ならびにソーシャルキャピタル(SC)への評価を行い,今後の地域づくりにおける示唆を得る.方法:2015年2月~2018年3月にA市2地区で高齢者ボランティア(参加群)を対象に,園芸活動を中心とする世代間交流プログラムを実施した.世代間交流の不足,フレイルの地域の問題解決のために,住民・地区組織・自治体・大学などがアクションリサーチを展開した.定量的評価として,基本属性,健康指標(握力等),SC(地域コミットメント等)についてベースラインと1年後に測定し,地域在住高齢者(非参加群)と比較した.定性的評価として,フォーカスグループディスカッション(FGD)を実施し質的に分析した.結果:参加群(n=36)は72.6±5.6歳,非参加群(n=36)は74.7±4.6歳,両群ともに男性23人(63.9%)であった.参加群は非参加群に比べ,握力の改善傾向がみられた.非参加群では地域コミットメントが有意に低下したのに対し,参加群では維持されていた(p<0.05).FGDでは,【子どもたちと関わり合える喜び】【経験の伝承による子どもの育成】【内省による人生の価値づけ】【地域の人とのつながりの拡大】等が抽出された.考察:地区組織基盤の世代間交流プログラムにより,高齢者の健康およびSCに効果がもたらされる可能性が示唆された.
著者
齋木 千尋 伊藤 絵梨子 田髙 悦子 有本 梓 大河内 彩子 白谷 佳恵 臺 有桂
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.56-64, 2015

目的:本研究では,訪問看護師のとらえる臨死期にある在宅終末期がん療養者の家族介護者の体験と支援を明らかにすることを目的とした.方法:対象は,関東圏A市内に所在する2か所の訪問看護ステーションに勤務する訪問看護師である.管理者より熟練訪問看護師として推薦され,かつ在宅終末期がん療養者と家族介護者に対する支援の実務経験が3年以上,おおむね10事例を有する者5人である.臨死期にある在宅終末期がん療養者の家族介護者の体験と支援について半構成的面接を行い,質的帰納的に分析した.結果:臨死期の家族介護者の体験について分析した結果,【在宅での看取りの決意とジレンマ】【家族の死の接近に対する知覚と混乱】【家族間の意思や感情の衝突と再結集】【家族の最期の瞬間の立ち会いと看取り】【家族の死の体験の振り返りと意味づけ】の5つのカテゴリーが抽出された.また支援については【臨死に揺れ動く家族の繊細な思いに対する見守りと対処】【在宅での看取りに必要な家族の資源力の引き出し】【看取りに求められる家族の心身の健康と日常生活の保障】の3つのカテゴリーが抽出された.考察:臨死期における在宅終末期がん療養者の家族介護者への支援においては,臨死期の家族が看取りの過程におけるさまざまな体験を乗り越えるとともに,家族がその後の人生も主体的に生きていけるよう,成長のプロセスを支えることが重要である.