著者
皆川 宜久 鵜川 始陽 八杉 昌宏 湯淺 太一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.71-71, 2005-08-15

継続とは,計算のある時点の残りの計算である.Scheme では,これをファーストクラスのオブジェクトとして扱え,コルーチンやマルチスレッドなどの機能を実現するのに有用である.ML 言語において一級継続の機能を搭載した処理系としては,Standard ML of New Jersey がある.この処理系はスタックを用いず関数フレームをすべてヒープ領域に割り付けているため,定数オーダの時間で継続の生成を実現している.しかし,一般に関数フレーム生成時にスタックを用いた方が,高速であり,メモリ効率も良い.本研究では,スタックを用いているML 処理系に対し,一級継続の実装を行った.この場合,継続の生成時にスタックの内容をヒープにコピーするスタック法が一般的である.実際,スタックを用いたScheme 処理系で多く採用されている.この方法は動作が単純で実装しやすいなどの利点がある.一方,継続生成のたびにスタックのコピーが行われるので,生成時間,メモリ効率の点などで効率が悪いことがある.そこで本研究では,その効率化手法である遅延スタックコピー法を採用した.この手法は,継続を使用したプログラムの効率を高める一方,オブジェクトの生成時や代入時にオーバヘッドが存在するという欠点がある.そこで,コンパイル時にML の型情報を利用して,そのオーバヘッドを軽減する手法を提案し,実装,評価を行った.A continuation is the remaining task at a point in a computation. In Scheme, a continuation can be captured as a first-class object. This is useful for implementing coroutines and multi-threading. Standard ML of New Jersey is an implemenation of ML with first-class continuations. This system allocates all activation records into the heap, and this feature allows capturing continuations in constant order time. In general, however, a stack is more efficent in terms of execution time and memory space to allocate activation records. We implemented first-class continuations in a stack-based ML system. In order to implement first-class continuations, we adapted the stack strategy which is used in many stack-based implementations of Scheme. With this strategy, the entire stack contents are copied into the heap whenever a continuation is captured. This strategy is simple and easy to implement, but capturing continuations requires a lot of time and memory space. Thus, we employed the lazy stack copying strategy, which is based on the stack strategy but more efficent. While this strategy is useful when creating continuations, there is an overhead when creating and modifying objects. We propose a technique to reduce this overhead by using the type information of ML at compile time, and we applied this techinique to the ML system and evaluated it.
著者
鵜川 始陽 皆川 宜久 小宮 常康 八杉 昌宏 湯淺 太一
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.44, no.SIG13(PRO18), pp.72-83, 2003-10-15

実行にスタックを利用している処理系でファーストクラスの継続を生成する場合,スタックの内容をヒープにコピーするのが一般的である.スタックの内容をヒープにコピーする戦略には様々なものが提案されているが,実際の処理系の多くはスタック法を採用している.スタック法では継続の生成のたびに処理系のスタック全体の内容をヒープにコピーする.このように,スタック法は動作が単純なので簡単に実装でき,また他言語呼び出しをサポートした処理系でも利用できるという長所がある.しかし,継続の生成に時間がかかり,また,メモリ効率が悪いという欠点があり,利用の妨げとなる場合もある.本発表では,スタック法による継続の生成に対する効率化手法として,スタックのコピーの遅延を提案する.継続の生成によりコピーされるスタックの内容は,継続を生成した関数からリターンするまでスタック上にも残っている.したがって,スタックのコピーを継続を生成した関数からリターンするまで遅らせてもよい.もし,生成した継続が,スタックをコピーする前にごみになれば,スタックのコピーを省略できる.本発表では,さらに,スタックコピーの遅延により可能となる,継続オブジェクトの部分的共有も提案する.これらの効率化手法をScheme処理系に組み込んで性能を評価したところ,継続を使ったプログラムの実行効率が改善された.
著者
鵜川 始陽 皆川 宜久 小宮 常康 八杉 昌宏 湯淺 太一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.44, no.13, pp.72-83, 2003-10-15

実行にスタックを利用している処理系でファーストクラスの継続を生成する場合,スタックの内容をヒープにコピーするのが一般的である.スタックの内容をヒープにコピーする戦略には様々なものが提案されているが,実際の処理系の多くはスタック法を採用している.スタック法では継続の生成のたびに処理系のスタック全体の内容をヒープにコピーする.このように,スタック法は動作が単純なので簡単に実装でき,また他言語呼び出しをサポートした処理系でも利用できるという長所がある.しかし,継続の生成に時間がかかり,また,メモリ効率が悪いという欠点があり,利用の妨げとなる場合もある.本発表では,スタック法による継続の生成に対する効率化手法として,スタックのコピーの遅延を提案する.継続の生成によりコピーされるスタックの内容は,継続を生成した関数からリターンするまでスタック上にも残っている.したがって,スタックのコピーを継続を生成した関数からリターンするまで遅らせてもよい.もし,生成した継続が,スタックをコピーする前にごみになれば,スタックのコピーを省略できる.本発表では,さらに,スタックコピーの遅延により可能となる,継続オブジェクトの部分的共有も提案する.これらの効率化手法をScheme処理系に組み込んで性能を評価したところ,継続を使ったプログラムの実行効率が改善された.In order to capture first-class continuations, most stack-based implementations copy contents of the stack to the heap. While various implementation strategies for copying are proposed, most implementations employ the stack strategy. With this strategy, the entire stack contents are copied to the heap whenever a continuation is captured. This simple strategy is easy to implement and can be used for implementations with foreign language interface. However, continuations with this strategy spend a lot of time and memory for their creations and invocations, and this week point often discourages programmers from using first-class continuations. We propose a lazy stack copying technique. The contents of the stack to copy will be preserved on the stack until returning from the function that is capturing the continuation. So we delay stack copying for a continuation until the function returns. We can avoid stack copying if it is detected that the continuation became a garbage before the function returs. In addition, we propose another technique, partial sharing of the copied stack, which is realized by using the lazy stack copying technique. We applied these techniques to Scheme interpreters and found that the proposed techniques improve runtime and memory efficiency of programs that use continuations.