著者
益子 貴行 小沼 憲祥 麦島 秀雄 松本 太郎
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.197-202, 2011-08-01 (Released:2013-10-20)
参考文献数
14

ハブ毒は強力な蛋白融解活性を有することが知られている.今回,ハブ毒静脈内投与による腸管絨毛傷害モデルマウスの作成を試みるとともに,このモデルを用いて腸管上皮再生における骨髄由来細胞の関与を検討した.各種濃度のハブ毒を C57BL/6 マウス尾静脈より投与し,用量―反応試験を行った結果,2.1 mg/kg ハブ毒投与によって,可逆性の腸管絨毛傷害を再現性よく惹起できることが明らかになった.次に GFP マウス骨髄細胞を移植したマウスに対し,ハブ毒を投与して腸管傷害を惹起し,再生絨毛上皮に存在する GFP 陽性細胞を組織学的に検討した.その結果, 再生上皮に存在する GFP 陽性細胞はハブ毒投与 3, 7 日後に有意な増加を認めた.骨髄由来で上皮細胞に分化したと考えられる (GFP 陽性CD45 陰性) 細胞もハブ毒投与後に一過性増加が認められたが,上皮細胞に占める割合は 1%以下であった.以上の結果より骨髄由来細胞は腸管絨毛傷害時の上皮再生過程に一部寄与する可能性が示唆された.