著者
宮本 昭彦 渡辺 重行
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.11-18, 2013-02-01 (Released:2014-11-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1 or 0

2007 年に,宮本は,咽頭後壁を丹念に視診する事により,インフルエンザ濾胞を発見し,インフルエンザを早期に診断する事が可能である事を示した19).2009-2010 年の A/H1N1 2009 死亡者は,米国で約12,500 人に対して,日本では 198 例のみで (死亡率:約1/25),世界各国の中でも,日本での死亡率が非常に低かった.本邦の例では,発症後 12 時間以内に 3 割,24時間以内に 7 割,48 時間以内に 9 割がノイラミニダーゼ阻害薬を開始していたが,他国では 48 時間以内の同薬剤投与は 1 割である.早期診断と適切な治療の開始が生死を分けていると言える.Miyamoto らは,2009 年 8-10月の A/H1N1 2009 の 23 例について,観察者間のデータ信頼性 (κ) を示し,「インフルエンザ濾胞」 が従来の迅速検査に比べ感度・特異性も高い事を示した (第一期) 4).本稿では 2009 年 11 月から 2010 年 1 月 (第二期) のインフルエンザ患者 87 例について (第一期と第二期を合わせ110 例) 検討した.2 歳~82 歳 (17.7 ± 13.1 歳,中央値 14 歳) の患者が (発熱から受診までの時間が 1~48 時間,11.8 ± 8.4,中央値 12 時間),超急性期の 3 時間以内が16 例含まれる中で,インフルエンザの診断が可能であった.87 例中,初診日迅速検査陰性が 10 例,この内 8 例は初診から 2 日目に迅速検査が陽性となり,2 例は 3 日目に陽性となった.87 例中,初診日にインフルエンザ濾胞を認めない患者が 1 例あった.第二期の症例の中で,発熱から 3 時間以内という超早期の患者を診察するようになった結果,従来の Definitive influenza follicles よりも更に小さい微小な濾胞が観察された.インフルエンザ濾胞は,迅速検査が陰性の超急性期であってもインフルエンザの診断が可能であった. 理学的所見は,臨床検査・機器の進歩の中においても不変的に重要である.
著者
高世 秀仁 桑名 斉 岡安 大仁
出版者
NIHON UNIVERSITY MEDICAL ASSOCIATION
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.320-325, 2013

介護療養病床における終末期高齢者に対する皮下輸液の効果を静脈輸液と比較して検討した.対象は2007 年から 2010 年に介護療養病床で終末期に輸液治療をおこない死亡退院した 92 例. 基礎疾患は脳血管疾患 48 例 (52.2%),認知症 11 例 (12.0%),悪性腫瘍 5 例 (5.4%).皮下輸液 (HDC) 群と静脈輸液 (IV) 群で終末期の輸液期間,輸液量,臨床経過を後ろ向きに検討した.HDC 群24 例,年齢の中央値 85 歳,IV 群 68 例,年齢 84 歳.HDC 群で基礎疾患に認知症が多かったが,死因は有意差を認めなかった.輸液期間は HDC 群 36.5 (5-107) 日,IV 群 34.5 (3-158) 日で有意差なく,輸液量は HDC 群 500 (250-700) ml /日,IV 群 750 (500-1200) ml /日でHDC 群が有意に少なかった.下肢,背部等の浮腫はHDC 群の 9 例 (7.5%),IV 群の 39 例 (57.4%) に認めたが有意差はなかった.両群とも穿刺部の腫脹,発赤,疼痛,感染などの有害事象はなく,IV 例 10 例で静脈確保が困難で皮下輸液に変更した.介護療養病床における終末期高齢者に対する皮下輸液は静脈輸液と同等の延命効果と安全性を認めた.
著者
亀井 聡
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.103-105, 2014-04-01 (Released:2015-05-22)
参考文献数
15

2004 年に本症の存在を我々は初めて提唱した.その後,2007 年にDalmau により卵巣奇形腫に関連する脳炎として確立した.本症は,若年成人女性で精神症状にて発症し,急性期に精神症状で発症し,意識障害・痙攣,中枢性低換気から人工呼吸器を装着するなど,急性期に重篤な病像を呈し,かつ遷延経過を示すも,長期予後は良好であり,特異な臨床像を示す.今回は本症の独立性を提唱させていただいた立場から,抗NMDA 受容体脳炎の動向を述べる.診断は,このような脳炎の症候を呈し髄液または血清中に抗体を検出することによる.治療は,迅速に腫瘍を検索し,確認されたら早期切除をおこない,併せ第一段階として副腎皮質ステロイド薬のパルス療法・血漿交換療法・ガンマグロブリン大量静注療法を投与する.しかし,軽快しない場合には,積極的なサクロホスファマイドやリツキシマブによる免疫抑制剤の使用が第二段階として薦められている.本症は,早期の適切な治療が必要なNeurological Emergencyの疾患であり,神経内科のみならず関連各科の理解と迅速な対応が重要といえる.
著者
尾野 大気 三松 謙司 川崎 篤史 加納 久雄 久保井久 洋一 荒牧 修 大井田 尚継
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.226-229, 2008-08-01 (Released:2011-11-28)
参考文献数
26
被引用文献数
4 or 0

平成 13 年 10 月から平成 19 年 9 月までの 6 年間に,当院で経験した経肛門的直腸異物症例 5 例と過去10 年間の本邦報告 27 例を対象とし,臨床的特徴と摘出方法について検討した.40 代から 50 代男性の性的倒錯によるものが多く,主訴は異物摘出困難が多かった.診断には単純腹部 XP と骨盤 CT が有効であった.当院症例における摘出方法は,経肛門的摘出が 3 例,開腹手術が 1 例,開腹下経肛門的摘出が 1 例で,麻酔法は腰椎麻酔のみが 1 例,全身麻酔のみが 2 例,腰椎麻酔・全身麻酔併用 1 例,無麻酔 1 例であった.異物が大きいほど肛門括約筋を弛緩させるために麻酔を必要とした.経肛門的直腸異物は,腹部単純 XP や骨盤 CT にて異物の大きさ,種類,挿入位置を正確に把握し,麻酔の有無や開腹の適応を決定する必要があると考えられた.
著者
宮本 昭彦
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.164-166, 2013-06-01 (Released:2014-12-20)
著者
川田 望 高橋 悟
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.142-145, 2013-06-01 (Released:2014-12-20)
参考文献数
19

The objective this review is to present an overview of current practice in the management of erectile dysfunction and discuss the evidence supporting the clinical effectiveness of these pharmacological treatments. Since sildenafil was introduced more than 10 years ago, highly selective phosphodiesterase type 5 inhibitors (PDE5i) have changed the medical management of erectile dysfunction (ED). Effective treatment of ED may restore quality of life and allow patients to return to the sex life they had before. Current therapeutic management includes oral therapies. Oral administration of PDE5i is considered the first-line treatment for ED. PDE5i can elevate the levels of cGMP in the corpus cavernosum and effectively improve ED of various causes and degrees. Three types of PDE5i are currently available, sildenafil, vardenafil and tadalafil. All of them are effective, with similar efficacy and safety profiles. The use of sildenafil citrate (Viagra®) resulted in a 76% successful intercourse rate with treatment, compared with 22% in a control group. Patients receiving 5, 10 or 20 mg vardenafil (Levitra®) experienced significantly improved erections, with 85% of 20mg vardenafil cases reporting improved erectile function, compared with 28% of placebo cases. The characteristics of this treatment are well known for their immediate effect. On the other hand, management of ED with Tadalafil (Chalis®) is characterized by long-term efficacy and easy acceptance by patients and their partners. Tadalafil is also efficacious in the improvement of male lower urinary tract symptoms, and has been licensed for such symptoms in Europe.
著者
伊崎 聡志 葉山 惟大 照井 正
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.156-160, 2016-08-01 (Released:2016-09-16)
参考文献数
18

Malignant melanomas easily metastasize and are often resistant to conventional classical therapies, i.e., surgery, chemotherapy and radiotherapy, in patients with advanced/metastatic malignant melanoma. In recent years, rapid advances have been made in the immunotherapy of malignant melanoma. New medicines, which have been approved by Federal Drug Administration (FDA), have dramatically improved the clinical outcomes for patients with advanced/metastatic melanoma. Nivolumab is an immune checkpoint inhibitor that targets programmed cell death-1 (PD-1) receptors. PD-1 is expressed on many immune cells, including T cells, B cells and natural killer cells. Engagement of PD-1 with its ligands (PD-L1 and PD-L2) induces functional exhaustion of the cytotoxic immune response. Nivolumab inhibits the PD-1 pathway, and thus activates the cytotoxic immune response. Although the immune checkpoint inhibitor tends to take a few months until it exhibits efficacy, once established, the efficacy often lasts for a long time. However, immune checkpoint inhibitors can have many adverse effects, including autoimmune-related inflammation. In particular, relevant severe adverse effects include interstitial pneumonia, colitis, liver dysfunction, thyroid disorders, and infusion reaction. Other affected organs include the skin, eyes, kidneys and nerves. Furthermore, several cases of fulminant type 1 diabetes mellitus have been reported in 2015 and 2016. Because we cannot predict what kinds of adverse effects will occur or when they will occur, we must observe patients carefully in order to detect any adverse events early on, and initiate appropriate treatments. The development of a number of new therapies will provide benefits for patients with malignant melanoma. Dermatologists must use these new drugs appropriately after determining the correct diagnostic information and providing supporting evidence.
著者
内山 真 鈴木 博之
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.155-161, 2011-06-01 (Released:2012-03-28)
参考文献数
32

Origin of night dream has been an enigma through whole history of human race. Descriptions in the Bible have shown that the ancients regarded dream experiences as a consequence of the supernatural power outside. Since the early twentieth century, progresses of psychology have proposed that night dream comes from the unconscious mind inside. Finally in 1953, Aserinsky and Kleiteman discovered human REM sleep and demonstrated that dream reports were obtained most frequently when subjects were awakened from REM sleep. Thereafter, many scientists conducted studies on dream and REM sleep, and found a robust association between electrophysiologic phenomena and subjective experiences during REM sleep. Here we reviewed articles on psychophysiological aspects of dream and REM sleep. To document mnemonic functions of REM sleep was of our particular interest. The authors expect that studying dream and REM sleep gives clues to an understanding on the mind-body relationship.
著者
藤田 英樹
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.31-35, 2017-02-01 (Released:2017-03-21)
参考文献数
32

乾癬はT 細胞性免疫に基づく慢性炎症性皮膚疾患である.これまで乾癬における免疫制御療法にT細胞機能を広汎に抑制するシクロスポリンが使用されてきた.近年,免疫反応に関係するサイトカインをターゲットとした生物学的製剤が多数登場し,すでに臨床の場で使用されているとともに新規薬剤の開発も進んでいる.TNF-α 阻害薬はそのような生物学的製剤としての成功例であるが,より最近の生物学的製剤は乾癬の免疫反応の中心をなすIL-23/Th17 の経路をターゲットとしている.IL-12/23p40 阻害薬のウステキヌマブやIL-17 阻害薬のセクキヌマブ・イキセキツマブ・ブロダルマブは乾癬に対して優れた効果が証明され,本邦でもすでに乾癬に対して承認済みである.本稿では乾癬の免疫制御療法の発展を,その病態理解の進歩とともに解説する.
著者
鈴木 周平 櫻井 健一 安達 慶太 増尾 有紀 長島 沙樹 原 由起子 榎本 克久 天野 定雄 野田 博子
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.304-307, 2015-12-01 (Released:2016-01-25)
参考文献数
9

症例は95 歳女性.50 年前にパラフィン注入法による豊胸術が施行されていた.左乳房腫瘤を自覚して来院した.左乳房AC 領域に直径7 cm の腫瘤を触知した.針生検の結果,浸潤性乳管癌と診断された.閉塞性換気障害のため全身麻酔は危険と判断され,局所麻酔下乳房切除術を施行した.豊胸術後の乳癌は異物注入により多様な臨床像を呈すため発見が困難であり進行例が多い.患者が高齢であれば手術方法も制限される可能性もあり,豊胸術後の定期的な検査が必要であると考えられた.
著者
八田 善弘
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.8-10, 2017-02-01 (Released:2017-03-21)
参考文献数
6

免疫チェックポイントは本来は,過剰な免疫応答を起こさないようにするnegative feedback 機構である.しかし,一部の癌腫はこの機構を利用して免疫逃避を行っている.この機序に関与するT 細胞上のCTLA-4,PD-1,および腫瘍細胞に発現しているPD-1 のリガンドであるPD-L1 に対する抗体が開発され一部は臨床応用が始まっている.これらの免疫チェックポイント阻害薬はがん治療の方向性を大きく変えつつあるが,今後はどのような症例に効果が現れるのかを見極め,適切に使用していくことが求められる.
著者
齋藤 修
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.122-127, 2015-06-01 (Released:2016-01-25)
参考文献数
4

2013 年,日本人の平均寿命は女性が86.6 歳と2 年連続世界一,男性は80.2 歳と初めて80 歳を超え世界4 位に上昇した.65 歳以上の人口が8-10% を占めると高齢化社会と言われるが,日本ではこの超高齢化に伴い2010 年には65 歳以上の人口が23% を占めるようになった.また何らかの介護を享受する人口は2009 年には470 万人に増加している.介護を要する原因疾患は2010 年の統計では,脳血管疾患が21.5%,認知症15.3%,老衰13.7%,転倒・骨折10.9%,関節疾患10.2% と整形外科疾患が21.1% を占めているのが現状である.2007 年日本整形外科学会(JOA; The Japanese Orthopaedic Association) は“locomotive syndrome”(ロコモティブシンドローム)の概念を提唱した.ロコモティブシンドロームは略称でロコモ,和名で運動器症候群と言われ,JOA はその診断,予防対策を推進してきた.日本国民のロコモティブシンドロームに関する認知度は未だに低いが,我々整形外科医が認知度の向上,診断,予防対策に貢献しなければならない.

1 0 0 0 OA 軽度認知障害

著者
鈴木 裕
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.385-389, 2012-12-01 (Released:2013-11-07)
参考文献数
12

軽度認知障害 (mild cognitive impairment: MCI)は,Petersen により提唱された疾患である. 1. 認知機能は正常とはいえないが,認知症の診断基準も満たさない.2. 本人または情報提供者から認知機能低下の訴えがある.3. 複雑な日常生活動作の障害は最低限にとどまり,基本的な日常生活機能は正常である,という状態である.罹患率は 65 歳以上の 10-20%で,Alzheimer´s disease (AD) の約 1.5-2 倍である.MCI は記憶障害の有無で amnestic MCI (健忘性 MCI) と non-amnestic MCI (非健忘性 MCI) に分類される.さらに認知機能障害が単一か複数かで single domain か multiple domain に分類される.脳血管障害,認知機能に影響を及ぼす神経系の疾患,精神疾患,全身的な内科疾患,薬物中毒などが原因疾患となる.MCI 全体では約 70%が認知症に進行する.特に健忘性 MCI の多くは進行し,無治療であれば 4 年後には 50%,最終的には 90%以上が AD に進展する.診断の確実度として,アミロイド b (Ab) 蓄積 (アミロイド PET 陽性または脳脊髄液の Ab 42 の低下) と神経細胞障害 (脳脊髄液 tau /リン酸化 tau 増加または FDG-PET で側頭・頭頂葉の糖代謝の低下または MRI による側頭・頭頂葉の萎縮) が示されている.これらのバイオマーカ ーは AD への進展因子でもある.健忘性 MCI の段階ですでに Ab が脳内に蓄積していると考えられている.Abを標的とした薬剤が開発中であるが,順調とはいえない.現時点では MCI から AD への進行を予防する根治的治療法はない.適度な運動とビタミンを多く含むバランスのとれた食事の摂取が,ある程度効果があるといわれている.
著者
寺本 紘子 相澤(小峯) 志保子 真島 洋子 泉 泰之 芝田 克敏 黒田 和道 早川 智
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.16-20, 2009 (Released:2009-12-15)
参考文献数
11

漢方薬には,感冒様症状に対する多くの方剤があり,臨床の場面で処方されることも多い.本研究では,感冒様症状に対し処方される代表的な 4 方剤 (葛根湯,麻黄湯,小青竜湯,桂枝湯) に関して,ヒト末梢血単核細胞 (PBMC) のインフルエンザ HA 抗原特異的 Interferon-gamma (IFN-γ) 産生に対する漢方薬の影響,ならびにインフルエンザウイルス複製に及ぼす影響をELISPOT法とHA法で検討した.その結果,葛根湯,麻黄湯, 小青竜湯, 桂枝湯はいずれも 1-1000μg の範囲で,インフルエンザワクチン接種を受けた 6 名の健常者の PBMC のインフルエンザ HA 抗原特異的 IFN-g 産生を抑制した.小青竜湯は単独で PBMC の viability を低下させた.他の 3 方剤においても,インフルエンザ HA 抗原刺激下では抗原単独刺激に比較してPBMC の viability を低下させた.葛根湯,麻黄湯,小青竜湯,桂枝湯はいずれもインフルエンザウイルスの複製・増殖を抑制しなかった. 以上の結果より,葛根湯,麻黄湯,小青竜湯,桂枝湯のインフルエンザ感染に対する臨床症状の改善効果は,特異的免疫応答の増強ではなく,炎症反応の抑制によるものである可能性が示唆された.
著者
徳橋 泰明
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.59-62, 2011-02-01 (Released:2011-11-30)
参考文献数
18
著者
早川 智
出版者
NIHON UNIVERSITY MEDICAL ASSOCIATION
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.43-48, 2008

昆虫など大部分の無脊椎動物は短命であるが,タラバガニやダイオウイカなどは獲得免疫系を有しないにも関らず,30 年を超える寿命がある.興味深いことに自然界で採集される無脊椎動物には悪性腫瘍の報告が殆ど見られず,有顎魚類以上で初めて悪性腫瘍がしばしば見られるようになる.子宮内で胎児・胎盤を育てる真胎生は大部分の哺乳類で見られるが,哺乳類特有のものではなく,他の脊椎動物門のみならず無脊椎動物にも見られることがある.特異免疫系は軟骨魚類のレベルで進化したシステムであるが,真胎生を行う脊椎動物は父親由来の抗原を有する胎児に対して免疫学的拒絶を来たす可能性があり,その制御が重要な課題となる.近年,胎児胎盤が母体の免疫学的拒絶を免れるシステムが明らかにされるに至った.興味深いことにその多くは悪性腫瘍が拒絶を免れるために使用するメカニズムと一致している.悪性腫瘍の立場からすると,新たな免疫回避機構を発明するよりは,胎児胎盤が母体の拒絶を免れるシステムを用いたほうが手っ取り早いということになる.この事実から,脊椎動物における悪性腫瘍の出現は胎児胎盤の生着を許すような抑制性免疫システムの進化に依存する,言い換えれば進化の上でのトレードオフになっているのではないかという仮説を導くことができる1).
著者
伊藤 玲子 小林 朋子 古川 典子 関山 忠孝 大木 隆史 平沼 久人 山口 賢二 服部 知洋 林 伸一 橋本 修
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.58-61, 2010-02-01 (Released:2010-06-14)
参考文献数
11

71 歳,関節リウマチ (RA) にて加療中の男性が発熱,呼吸困難のため入院となった.患者は infliximab (IFX) (260 mg) を毎月 1 回,約 1 年間投与されていた.胸部 X 線にて,両側性の浸潤影を認め, 入院時より重症の低酸素血症のため人工換気を要した.血清中 β -D グルカン値上昇と胸部 CT における全肺野に及ぶ地図状のすりガラス陰影の出現により,Pneumocystis pneumonia (PCP) と診断した.ST 合剤投与により速やかに臨床症状の改善を認めた.MTX, IFX 治療を行い免疫抑制状態となった患者にしばしば感染性肺炎や薬剤性肺炎による急性肺障害が発症する.長期に免疫抑制治療を行っている高リスク患者においては,鑑別診断として PCP を念頭に置く必要がある.また,発症予防としての ST 合剤の投与も検討すべきである.
著者
榛澤 文恵 渕上 達夫 吉野 弥生 羽生 政子 今井 由生 齋藤 勝也 阿部 修 橋本 光司 稲毛 康司 葛谷 光隆
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.304-308, 2008-10-01 (Released:2011-11-28)
参考文献数
16

ロタウイルス感染症に伴い第 3 病日に意識障害を認めた 5 歳の男児例を経験した.便中ロタウイルス抗原が陽性で,髄液細胞数は正常だが,頭部 CT で脳浮腫を,脳波では全般性高振幅徐波を認め,ロタウイルス感染に関連する急性脳症と考えた.ロタウイルス関連脳症の頻度は少なく,その病態生理は明らかではない.ロタウイルス関連脳炎・脳症の発症には本例のようにけいれんを伴わないことがあり,診断には注意を要すると考えた.
著者
小船 雅義 渡辺 一郎 芦野 園子 奥村 恭男 小船 達也 大久保 公恵 中井 俊子 國本 聡 平山 篤志
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.290-296, 2009-10-01 (Released:2010-04-20)
参考文献数
36

要旨 背景:致死的な心室性不整脈は Brugada 症候群の特徴であるが,その不整脈発生基盤は心室のみにとどまらず,心房においても同様の変化がみられ,上室性不整脈の基盤を形成していると考えられている.しかしながら,上室性不整脈の電気生理学的背景はあまり知られていない.そこで我々は Brugada 症候群と対照群での心房筋の脱分極と再分極の電気生理学的指標について比較検討した.対象:全例 pilsicainide 負荷試験陽性であったBrugada 症候群 18 症例で,心房細動 (AF) の既往は認めなかった.対照群として,房室結節回帰性頻拍,WPW症候群,右室流出路起源心室頻拍にて心臓電気生理学的検査,カテーテルアブレーションを施行した 11 症例で比較検討した.方法:右心耳よりプログラム刺激を基本刺激周期 600 ms および 400 ms で 2 連早期刺激まで施行した.次に単相性活動電位 (MAP) を高位右房側壁より記録した.心房内伝導時間 (IACT) は刺激スパイクから遠位冠静脈洞内電位で計測した. 結果:対照群では全例 AF は誘発されず,Brugada 症候群では全例 AF が誘発された.対照群と Brugada 症候群間で,基本刺激時における MAP 持続時間 (MAPD) および IACT に有意差はなく,また右房有効不応期にも有意差は認めなかった.最短拡張期における MAPD は,Brugada 症候群で短縮しており,IACT 延長率は Brugada 症候群で有意に延長していた.Brugada 症候群間で MAPD の回復曲線における最大スロープは有意に大きかった.結語:我々の検討では,BS において,最短拡張期における MAPD の短縮,MAPD の回復曲線の最大スロープの増大および,IACTの延長が AF の易誘発性に関与していると考えられた.