著者
益満 大志 溝上 陽子
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3+, pp.26, 2018-05-01 (Released:2018-07-17)
参考文献数
2

本研究では,画像の鮮やかさの知覚が,彩度変調画像および彩度・明度コントラスト変調画像への順応によって影響を受けるか検証した.自然画像において彩度の上昇(低下)と同時に輝度コントラストを上昇(低下)させると,彩度のみを上昇(低下)させた場合より自然に見える範囲が広がるとされ,この知覚される自然さの違いが彩度の順応効果に影響を与える可能性がある.実験では,同じ変調係数にて変調した彩度・明度コントラストを有する複数の画像に順応後,彩度のみを変調したテスト画像を呈示し,その彩度知覚を測定した.結果,彩度のみを変調した画像と,彩度・明度コントラストを同時に変調した画像に順応した条件では,順応効果に有意な違いは現れなかった.しかし,彩度の上昇(低下)と同時に明度コントラストを低下(上昇)させ,明らかに不自然と感じられる画像に順応した条件では,順応効果がそれらと比べて極めて小さくなった.この変調方向においては,被験者の自然に見える範囲も他の変調方向と比べて狭いという結果となった.したがって,この知覚される画像の自然さの違いにより,彩度順応効果に違いが表れると考えられる.