著者
目黒 紀夫
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本年度はケニアにおいて約3ヶ月の現地調査を行い、それと前後して3件の学会発表と2本の研究成果を発表した。現地調査では、利害関係者間の合意形成のあり方を集中的に調査した。第一に、新たに野生動物保護区を建設しようとする国際NGOと地域住民が結成する土地所有者グループのあいだの集会の様子を参与観察した。国際NGOは保護区がもたらす便益について曖昧さを残した説明を続けながら住民とのあいだに建設の契約を取り交わすことに成功したが、その後に契約内容を正確に理解していない住民とのあいだに軋轢を持つようになった。住民は土地所有権が契約によってどのように制限されるかを理解しておらず、相互に不信感を持つ住民と外部者のあいだでいかに協働体制を構築するかは大きな課題であることが判明した。また、共有地上に建設された野生動物サンクチュアリを経営する観光会社の契約更改が近づき、新しく契約する会社をどこにするかをめぐり地域コミュニティのリーダー間で対立が生じた。結果として、好条件を提示していた会社との契約が不可能となっていた。これまでリーダー表立って相互に敵対することはなく、土地の私有化にともないコミュニティ内の紐帯に変化が生じており、それがコミュニティ全体の利益を阻害する可能性があることが確認できた。地域コミュニティを主体とした野生生物保全の可能性を、これまで外部者が持ち込むプロジェクトの成果から検討してきたが、本年度の調査からはプロジェクトが一定の成果を上げたとしてもコミュニティ内および地域内外の人間関係が良好でない時には、保全に向けたイニシアチブが地域において生まれにくいことが明らかとなった。