- 著者
-
相内 眞子
相内 俊一
- 出版者
- 浅井学園大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2004
本研究の目的は、女性議員の選出に作用するアクターや条件を、日本、アメリカ合衆国、スコットランドの比較を通して検証することにある。議会選挙と議員の選出には、候補者の選考方法、政党の関与と支援、有権者の候補者選好傾向、さらに政治文化や選挙制度など、多様な要因が複合的に作用し結果に大きな影響を与える。本研究は、(1)アメリカにおける候補者選出過程に関する先行研究の紹介、(2)2006年のアメリカ中間選挙の分析、(3)2005年の衆議院選挙の分析、(4)2007年のスコットランド議会選挙の分析(5)ジェンダークオータの有効性分析などを中心に、主に国会レベルの議会への女性の選出につながる要因を抽出しようとするものである。女性の議会への選出については、その促進/阻害要因として、これまでは政治文化や有権者の候補者選好傾向がとりあげられてきたが、本研究はより制度的な側面に焦点を絞り、女性議員の選出に有効な選挙制度に着目した。その一つが、アメリカで議論され、近年採用州も増加しつつある「議員任期制=タームリミット」であり、もう一つが、世界に拡がりつつある「ジェンダークオータ制度」である。アメリカにおけるタームリミットは、『現時点では連邦議会にその効力は及んでいないが、女性の選出に必ずしも積極的な効果を与えていないことが統計上明らかになっている。また、ジェンダークオータ制度については、女性の選出を助けるものとしてその効果が評価される一方、自由主義的立場からは、有権者の選択権を制限するものだとする批判や、平等主義的立揚からは、不公平、逆差別等の批判があり、更にジェンダー論的立場からも賛否を巡る論争が続いている。本研究は、以上の共通の分析視点から3力国における女性の選出プロセスを検証したものであり、日本における政治学、選挙学研究においてまだ十分とはいえない分野に焦点を当てたという意味で、その重要性を主張できよう。