著者
相内 眞子 幅崎 麻紀子
出版者
北翔大学
雑誌
人間福祉研究 (ISSN:13440039)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-15, 2011

小論は、ネパールを事例に、内戦を、既存のジェンダー構造を転換し、女性の政治参画を生み出す転換点として捉え、これまで政治と遠い世界に生きてきた女性たちを政治運動に駆り立てた要因について、その理由を女性議員のライフヒストリーをもとに探るものである。ネパールは、内戦を経て王政を廃止し、民主制の共和国として再建された。クォータ制を採用した選挙制度の下、国会における女性議員比率はアジア諸国で最も高い。女性の政治的地位の大きな変化はどのようにもたらされたものなのか、あるいは「ジェンダー平等」は遂行されたといえるのか。本研究は、ネパールの政治史を概観し、次に内戦後の政憲議会議員として選出された女性に密着し、政治活動を展開するに至った経緯、政治活動を可能にした資源、政治活動による生活の変化、そして、女性たちにとっての内戦と政治活動の結びつき等について聞き取り調査を実施し、その結果を論述したものである。女性たちは、内戦やローカル社会での様々な活動を経て、現在、国会議員に上り詰めたこと、政治活動を行う現在においてもなお、ジェンダーに基づく差別の存在を感じていること、そして、それを改善するために、政党の壁を越えた女性政治家のグループを構築していることがわかった。本研究は、平成22年度科学研究費補助金・基盤研究(C)による共同研究であり、2010年8月に開催されたAPSA/JAWS研究会(アメリカ・ワシントン市)にて報告された論文を改訂したものである。
著者
相内 眞子 幅崎 麻紀子
出版者
北翔大学
雑誌
人間福祉研究 = Human welfare studies (ISSN:13440039)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-15, 2011

小論は、ネパールを事例に、内戦を、既存のジェンダー構造を転換し、女性の政治参画を生み出す転換点として捉え、これまで政治と遠い世界に生きてきた女性たちを政治運動に駆り立てた要因について、その理由を女性議員のライフヒストリーをもとに探るものである。ネパールは、内戦を経て王政を廃止し、民主制の共和国として再建された。クォータ制を採用した選挙制度の下、国会における女性議員比率はアジア諸国で最も高い。女性の政治的地位の大きな変化はどのようにもたらされたものなのか、あるいは「ジェンダー平等」は遂行されたといえるのか。本研究は、ネパールの政治史を概観し、次に内戦後の政憲議会議員として選出された女性に密着し、政治活動を展開するに至った経緯、政治活動を可能にした資源、政治活動による生活の変化、そして、女性たちにとっての内戦と政治活動の結びつき等について聞き取り調査を実施し、その結果を論述したものである。女性たちは、内戦やローカル社会での様々な活動を経て、現在、国会議員に上り詰めたこと、政治活動を行う現在においてもなお、ジェンダーに基づく差別の存在を感じていること、そして、それを改善するために、政党の壁を越えた女性政治家のグループを構築していることがわかった。本研究は、平成22年度科学研究費補助金・基盤研究(C)による共同研究であり、2010年8月に開催されたAPSA/JAWS研究会(アメリカ・ワシントン市)にて報告された論文を改訂したものである。
著者
相内 眞子
出版者
北翔大学
雑誌
人間福祉研究 (ISSN:13440039)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-12, 2008

アメリカにおいては,教育レベルや職業領域における性の平等が進み,高度な情報や技術をもつ専門職女性が増加し,政治家予備軍の一部になりつつあることから,女性の政治的進出にとって性差別的な文化や,社会経済上の障壁は克服されたとされてきた。しかし一方で,連邦議会の女性比率が上下両院とも2割に満たないことから,克服されたはずの「文化的障壁」の再評価に研究者の関心が向けられることになった。女性の出馬の決断には,育児を含む家庭責任を中心にした伝統的性役割規範が依然大きな影響力をもつことが明らかになり,また,列国議会同盟の調査では,女性政治家の多くが議会進出の障壁を「女性の政治参加に対する敵対的態度」としていることから,女性の政治的進出と文化との関係が再び注目されることになった。小論は,東北大学COEプログラム「男女共同参画社会の法と政策」が実施した意識調査のうち,「女性政治家に対する有権者の態度」に焦点を絞り,日本社会における有権者間のジェンダー・バイアスの有無やその強度を探り,文化によって醸成された価値観と女性政治家に対する態度との関連を考察し,女性政治家を支持する有権者像を明らかにしようとしたものである。結果的には,回答者の多数が性差別主義者でないことが明らかになったものの,女性政治家を支持し投票する有権者像をクリアに描き出すことはできなかった。興味深いのは,女性政治家に対する受容度が高いグループでは,2005年の「郵政民営化選挙」における「女性刺客」戦術に対する評価が一定に高く,女性政治家の増加に対するプラグマティックなアプローチを肯定する態度が見られたことである。他方,受容度が低いグループには,女性政治家の活動分野を,福祉や教育などに限定する志向が見られ,男性政治家以上に高い倫理感を求めるなど,必ずしも性中立的とはいえない傾向が見られた。
著者
相内 眞子 相内 俊一
出版者
浅井学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、女性議員の選出に作用するアクターや条件を、日本、アメリカ合衆国、スコットランドの比較を通して検証することにある。議会選挙と議員の選出には、候補者の選考方法、政党の関与と支援、有権者の候補者選好傾向、さらに政治文化や選挙制度など、多様な要因が複合的に作用し結果に大きな影響を与える。本研究は、(1)アメリカにおける候補者選出過程に関する先行研究の紹介、(2)2006年のアメリカ中間選挙の分析、(3)2005年の衆議院選挙の分析、(4)2007年のスコットランド議会選挙の分析(5)ジェンダークオータの有効性分析などを中心に、主に国会レベルの議会への女性の選出につながる要因を抽出しようとするものである。女性の議会への選出については、その促進/阻害要因として、これまでは政治文化や有権者の候補者選好傾向がとりあげられてきたが、本研究はより制度的な側面に焦点を絞り、女性議員の選出に有効な選挙制度に着目した。その一つが、アメリカで議論され、近年採用州も増加しつつある「議員任期制=タームリミット」であり、もう一つが、世界に拡がりつつある「ジェンダークオータ制度」である。アメリカにおけるタームリミットは、『現時点では連邦議会にその効力は及んでいないが、女性の選出に必ずしも積極的な効果を与えていないことが統計上明らかになっている。また、ジェンダークオータ制度については、女性の選出を助けるものとしてその効果が評価される一方、自由主義的立場からは、有権者の選択権を制限するものだとする批判や、平等主義的立揚からは、不公平、逆差別等の批判があり、更にジェンダー論的立場からも賛否を巡る論争が続いている。本研究は、以上の共通の分析視点から3力国における女性の選出プロセスを検証したものであり、日本における政治学、選挙学研究においてまだ十分とはいえない分野に焦点を当てたという意味で、その重要性を主張できよう。