著者
相原 剣
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

全体的に申請時より深化した研究課題を文献学的な精緻さをもって遂行していく為、広範な調査と整理・分析を進めていった。特に、ヴァイマル期及びナチ時代の同性愛シーン・関連状況について、ベルリンのノレンドルフ地区、パンコウ地区など解放運動の拠点の実態分析、当時の旅行ガイドの精査を、広範な資料を基に進めていった。焦点化した作詞家ブルーノ・バルツについては、ベルリンのブルーノ・バルツ・アーカイブとの連携を保ち乍ら、その作品・思想・人脈等に関して更なる掘り下げを行った。マグヌス・ヒルシュフェルトやフリードリッヒ・ラッヅワイト、アドルフ・ブラント等の個人史にとどまらず、都市文化としてベルリンの同性愛解放運動全体を俯瞰的に捉え直すべく研究を遂行した。ラッズワイトによって1924年に発行された世界初のレズビアン雑誌Die Freundinに関して、ベルリンのゲイ博物館の研究員との意見交換を行い乍ら、ヴァルドフ等の女性同性愛シュラーガー分析を行った。同性愛文化研究叢書であるBibliothek rosa Winkelの成果を土台としながら、マイノリティの領域からメジャーな領域へと移行する文化動態のなかに現れるホモフォビア(同性愛嫌悪)の表象に焦点をあてた文献調査も広範に行い、当時の同性愛に関する禁忌の実態とポップ・カルチャーへの表出をデータ化し整理していく作業を進めた。また、収容所で作成された歌集に着目し、そこでの改作・替え歌を分析し、強制収容所に於ける娯楽音楽の有り様を明らかにする作業を行った。収容所環境下でのポップ・カルチャーの実態を解き明かす作業に関しては、ウィーンのQWIEN(ゲイ/レズビアン文化歴史研究センター)との相互的な協力関係を基に調査・研究を進めた。