著者
新堀 敏基 相川 百合 福井 敬一 橋本 明弘 清野 直子 山里 平
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.13-29, 2010 (Released:2010-12-28)
参考文献数
60
被引用文献数
6 10 1

気象庁では、火山現象予報の一つとして、2008年3月31日から降灰予報の業務を開始した。この論文では、降灰予報を高度化するために気象庁・気象研究所で開発している降灰予測システムを用いて、降灰量の量的予測を行う方法について論じる。降灰予測の方法は、まず初期値となる噴煙柱モデルを、仮想質量をもつ火山灰トレーサーで構成する。次に、トレーサーの時間発展を移流拡散モデルにより計算する。火山灰移流拡散モデルは、気象場に気象庁メソ数値予報モデル(MSM)を用いたラグランジュ記述のモデルであり、移流・拡散・降下・沈着の各過程を考慮している。そして沈着したトレーサーの仮想質量から、単位面積あたりの重量(面密度)として降灰量を算出する。噴煙柱モデルに気象レーダーで観測された噴煙エコー頂高度を用い、降灰量の算出にMSMより細かい水平格子間隔を用いて、本方法を2009年2月2日浅間山噴火の事例に適用した。観測値と比較して、降灰域の定性的な特徴は概ね予測でき、分布主軸上の降灰量も同じオーダーで予測可能であることが示された。